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壱 


 ――「いやだッ! たすけてっ、誰か助けてーッ!」――

 随分と幼いころの記憶だ。十歳上の従兄弟のもとに、うつせみが現れたときの。

 従兄弟はうつせみを殺した。幼い頃の自分と瓜二つの姿をした、当時の僕と同じ歳くらいのうつせみを、丁度近くにあった金槌で殴り殺した。畳に地図を描くようにひろがってゆく真新しい血。やがてうつせみの死骸は空気中に融けるように消えていったが、畳に染み込んだ血はどす黒いしみとなり、いつまでも無くなることはなかった。



 ある日突然現れる、頭のどこかに美しい花が咲いた、幼いころの自分と瓜二つの姿をしたなにか。それがうつせみだ。

 この地に住む僕を含んだ村人たちは、自身のもとにあらわれたうつせみを殺すことによってさだめから逃れることができる。異形と化し、やがては化け物として醜く死に逝く、その呪われたさだめから。

 しかし。



 ――「ぼくも、ぼくに殺されるの……?」――


 あの夜、僕はうつせみを殺すことができなかった。




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