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インタビューズのお題

作者: 斑鳩じゅん

三題噺「妹」「クロスワード」「生クリーム」

 今日は、最悪な一日になる、そう未来視してしまった。

 そうなった原因というのも不肖我が妹のせいなのでは、あるがそれを止める意思も術も行動力も無い身としては、起こることを往々にして受け止めるしかない。

 それは、今朝の事である、毎朝の習慣であるテレビ番組を朝の合図とばかりに報せてくれる、それを聞き各自自分のペースでリビングに集まる、それが我が家の習慣でもあった。いつもは、その合図も聞かずに布団の中にうずくまり登校の五分程前になって慌てて布団から飛び起きて来る今年で高二になる妹が今朝は、珍しく朝の七時半には、リビングで優雅にも食パンをかじりながら紅茶を啜っていた。


 起きてこなければよかったのに、今ではつくづくそう思う。


 妹は、紅茶を飲みながらバラエティー色のある朝のニュース番組を見ていた。興味もなくただ見ているだけのように見ていたが、突然妹の目の色が変わった。明らかに眠いような胡乱な半目から目が覚めたように炯々とした表情で釘付けとなっていた。

 そのような妹に変化に驚いて俺も倣いテレビの方を見てやる、番組は、スイーツ特集をやっていて、誰がやるのかと思うようなレシピやら簡単な作り方なんてものを人気女子アナウンサーが紹介していた。興味深々な妹を横目に、お前は料理なんて出来ないだろうと心の中で呟くとガバッと妹がこちらを振り向いた。

 まさか、感づかれたか、妹はエスパーだったのかとか中二病的な思考で言い訳を考慮していると、

「お兄ちゃん、これ作ってみたい」

 とかのたまった。

「岬は、料理なんて出来ないだろう?」

「うん!」

 何故、自信満々なんだ?

「だから学校が終わったら一緒に買い物へ行こうよ、それから家で作ろう」

 いやだ、絶対に嫌だ

「ねえお願いお兄ちゃん」

 俺は、意味もなく天井を眺め許諾の是非を考える。無論断る方向でだ。

「お兄ちゃんの好きな作家の新刊出たんだよね? 奢るからさ」

 む、揺らぎそうだ。

「お願い!」

「しょうがないな、今回だけな」

「やったー有難うお兄ちゃん」

 別に本に釣られたわけじゃない、釣られたわけじゃないんだと心の中で誰かに向かって言い訳をする。


 そういう今朝の遣り取りがあり俺は、放課後の教室に至るわけだ。

 ここからが一大任務だ、岬に見つかることなく帰途につかなければならない、バレればそこで即、買い物へ連れられてそして家に帰ればスイーツを作らせられてしまう、先ほども言ったが岬は、料理が作れない、要するに買い物さえ免れれば岬は、スイーツを作ることを諦めるしかなくなるのだ。


 俺は、慎重に慎重に教室から横断歩道を渡るように廊下へ首だけを出して右へ左へ念入りにに往復掛けて妹が来ていない事を確認すると慎重に廊下に出ようとしたが、おかしな事に足は一歩廊下に出ているというのに身体がついて来てくれない、おかしいなと思い、足をひっこめてもう片方の足を廊下に出してみるがやはり身体は、ついて来てくれない、首の後ろを掻きながら振り返ってみると、そこにクラス委員の青葉由喜枝が制服の裾をむんずと掴んでいた。


「青葉! お前何してるの?」

「岬に頼まれた」

 と満面の笑みで答えられた、満面すぎて無表情に感じたが多分。気のせいだと思いたい。

「あーそれは、悪かったな、もういいぞ俺は帰るから――」

 そう言おうとしたが話半分も聞かずに青葉は

「スイーツ作るのよね? 私も食べたい!」

 げ!

「いやーそうだったかなー」

 と目を逸らしながら言い訳を考えようとしていると、更に

とおるが料理が上手いのはこのクラスの誰もが知っている既知の事実よ、暢にかかれば穴埋め問題みたいに簡単に作っちゃうんだろうなー」

 トリップしてしまっていた。

 しかし青葉が学校のテスト問題をどのように考えているのかが判ったコイツにかかれば穴埋め問題なんて朝飯前らしい、クロスワードパズルじゃねえんだからそんな簡単に料理は出来ねえよ。

 恐るべし中間テスト学年首位、才媛めが。


 そんな事をやっていると教室の扉がガラガラと音を立てて開かれた、岬が授業を終えて迎えに来たらしいが、岬としては、俺や青葉が教室の目の前に居るとは思ってもいなかったらしく、扉を開くや否や突然に俺が現れたので、スイーツを作ることで頭がいっぱいだった岬は、勢い込んで教室に飛び込んできたのでその衝撃を殺すことなく俺に激突し雪崩るようにして依然として制服を掴んでいた青葉もろとも床に倒れこむ事となった、俺は、青葉と岬にサンドイッチにされるという嬉しいような嬉しくないようそんな事となっていた。女子二人の胸に挟まれるというのは、やっぱり幸せかもしれない。

「わわわっお兄ちゃん青葉先輩! ごめんなさい!」

 慌てて岬が飛び退くが、俺がそのまま青葉の胸を枕にして倒れたままでいると

「お兄ちゃん! 早く退きなさい!」

 と言って思いっきり手を引っ張り無理やりに立たされてしまった。

「青葉先輩ごめんね!」

 と先ほどとは違う意味を込めた謝罪をしていた。別にいいじゃないか手で触ったわけじゃないんだから

 岬が、チラっとこちらに睨みを利かせた

 やはり、岬はエスパーなんじゃなかろうか、きっと心が読めるんだよ。

「いいよ、いいよ別に、胸ぐらい、暢のスイーツが食べられるんだからこれぐらい全然」

「そうか」

 俺は、胸を揉むジェスチャーをしながら青葉に近づこうと一歩踏み出すと岬に背中からしがみつかれた。

「ダメに決まっているでしょう! お兄ちゃんのえっち」

 岬としては、俺を抑止しようとしたらしいが、妹と言えど岬は、それなりに発育のいい方なので背中には女性の感触を感じることが出来た。

 仕方ないのでこれで我慢しておこう、個人的には大満足だけど。

「軽い冗談だろ、それより買い物行くんだろう」

「お兄ちゃんのは、冗談に見えないんだよ、警察に捕まっても迎えに行ってあげないからね、そうなったらもう家族じゃないから」

 それこそ冗談に聞こえませんが岬サン


 スーパーに到着するなり岬が、生クリームを三本程持って戻ってきた。

「そんなにいらん! 二本返してきなさい」

「いつか使うかも――」

「絶対に使わん!」

 シュンとしながら行き威勢の良さが嘘のようにトボトボと二本の生クリームを返却しに踵を返す。

 悲壮感漂ってるなー。

「フフフ、岬は本当にわかりやすい性格してるよね」

「ただのバカだろ」

「確かに少し能天気な所はあるけど、それはどうだろう」

 青葉は、下唇に人差し指を当てると、思い出しように

「そういえばこないだ部活の合宿で何年ぶりかに岬一緒にお風呂に入ったのだけどねあの子、成長してたわよーこの分だと抜かれちゃいそう」

 そう言って見せびらかすようにして自分の胸を下から持ち上げる。

 何の話だ、というか誇示すんな、ただでさえデカイのに。

 話に出たが二人は、同じ部活の部員だ、県内じゃ強豪のうちに入る吹奏楽部だ、夏と冬の二回毎年恒例のように合宿で山篭りをしている。

 冬に山で楽器を吹いて雪崩は起きないのだろうかというのが俺の素朴な疑問だ、今度それとなく岬に聞いてみるとしよう。

「嘘じゃないんだからね」

 と青葉は、ムッとした表情で腕を絡ませてきた、そうなると自然と胸が腕に当たるそれもあるが、ここは学校じゃくスーパーの食料品売り場だ、学校帰りのこの時間だと他校の生徒やら面識のある主婦の人達とも遭遇するのだ、

 人目が気になる!

 そんな事をしていると岬が戻ってきた。

 いつもならば最悪の現場であるが、今に限っては、女神に見える。

「岬助k――」

 やはり話を最後まで聞くこともなく

「今日何回目だと思ってるのよ! お兄ちゃんのエッチー」

 とスーパーで学校と同じ声量同じテンションで怒鳴り散らされて、結果的に注目を浴びる事となった。

 こうなると俺だけでなく三人とも注目を浴びる事となってしまうので俺たちは、急いでスイーツに使う食料を籠に選別もせずに放り込むとそそくさとスーパーを後にした。


 それから、帰り道の道すがらやっとのことで誤解を解くとひたすら岬は、俺たちに主に青葉にペコペコと頭を下げていた。

 青葉のは、確信犯だと思うけどなー、理不尽だ。

 家に到着する頃には、夕方の五時を回っており俺は、俺はひとり、急ぎスイーツを二人前作るハメとなった。

 作り終えたスイーツをリビングへ持っていくと二人はソファーでお互いにもたれ合うようにしてスースーと寝息を立てて眠っていた。

 俺は、二人分のスイーツを冷蔵庫へ仕舞うと毛布をかけて部屋へ辞去した。


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