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第4章 冬の雑巾
父が死んでから祖母は変わった
家の中から笑う声が減った
毎朝5時に起こされ、学校に行く前に玄関から家じゅうの掃除をした
冬の雑巾は冷たかった
私は祖母の機嫌を見ながら生活していた
部屋を開ける音、台所で皿を置く音でその日の空気を考えた
機嫌が悪そうな日はなるべく音をたてないよう・・
家の中であまり気配を出さないようになったのも、その頃だったと思う
何か欲しいと言うのも怖かった
誕生日におもちゃが欲しいと強請ったときは鍋で叩かれた
「躾だから」
祖母は言った
私は欲しいとは言えなくなった
ちゃんとしてれば怒られない気がしていた。だから掃除もしたし弟の面倒もみた
中学に入ってようやくお小遣いをもらえるようになった
中1で月500円
中2で月600円
中3で月700円
けれど好きに使っていいお金ではなかった
部活帰り、みんながジュースを飲んでいても私はダメだった
一度買い食いした時、祖母にすりこぎで叩かれた
小遣いとはなんだろう・・・そのときそう思った
祖父は時々父の歳を数えた
「みっちゃん、生きてりゃ今年32だな」
「34だな」
死んだ人だけが家の中で歳をとっていった




