彼方からの年賀状 「明けましておめでとう、皆元気だぞ」
「主任、地球方面からレーザー通信を受信していたようです」
「発信場所は特定可能か?通信は解析できるか?」
「自動保存のデータログを解析しますので、暫くお待ちください」
「解った、今後は地球方面を重点的に監視してくれ」
「了解しました」
ここは扶桑国、地球から遠く離れたラグランジュ5ポイントに浮かぶ、巨大スペースコロニーの中枢、管制センター。
地球歴の21世紀末から約100年をかけて、月と小惑星帯から運んだ鉱物資源で実験的に造られ、やっと完成したスペースコロニーだ。
人の住む居住ブロックは連結されており、回転させることで、地球上とほぼ同じ1Gの人工重力を発生させている。
第4次世界大戦は、宇宙空間の覇権争いでもあったため、大国同士の軍事衝突で大量発生したスペースデブリの危険性から、最後には地上から宇宙に出る、宇宙から地上に戻ることすら出来なくなった。
大量のスペースデブリを除去する方法が生み出されない限り、もう地球にはこの先数百年は戻ることは出来ないだろう。
既に宇宙移民していた人々は第4次世界大戦によって宇宙に取り残され、地球からも一切補給物資が届かなくなり、苦難の連続だった。
今でこそ食料生産プラント等が稼働を開始しているが、スペースコロニー開発当初は補給物資が届くことを前提に開発をしていたのだから、仕方がない。
扶桑国以外にも、ラグランジュ1・2・4にスペースコロニーは存在するが、第4次世界大戦時の敵国も存在することから、生き抜くための食料融通以外、交流は必要最小限だ。
「主任、AI解析によると発信場所は日本の〇〇島、日本語で『明けましておめでとう、そちらは皆元気か』ですね」
「解った、受信した時刻に地球へ、〇〇島に届くよう返信してくれるか」
「返信内容はいかが致しますか」
「では『こちら扶桑国、明けましておめでとう、皆元気だぞ』って、日本語で発信してくれ」
「了解」
ここは〇〇島の老人介護施設の一室、寝たきり状態の老婆のベッドに若い介護職員が訪れていた。
「ばぁ~ちゃ~ん、聴いてみな~、『こちら扶桑国、明けましておめでとう、皆元気だぞ』って返事が来たぞ~、聴こえたな~、良かったな~、スペースコロニーに住んでいる息子さん夫婦やお孫さんたち、みんな元気に生きてるかもしれないぞ~」
老婆はスピーカーから聴こえてくる『こちら扶桑国、明けましておめでとう、皆元気だぞ』の声を聴きながら、静かに涙を流した・・・
ほんの一時ですが、ランクイン履歴をチェックしたら、
1 位 [日間]宇宙〔SF〕 - 短編 となっていました。
本当に嬉しい限りです。




