コザコザイナイ! ~素材節約系Vチューバー、スカートのめくり上げはモーションが複雑怪奇になって手間がかかる割に上手く表現されないと判断し、唐突な画像への移行とそれっぽい解説で誤魔化す策に出た~
3Dモデルとイラストを併用。
あなたは動画を視聴している。
画面に映るのは、女性Vチューバーと思わしき存在だ。
画質が若干荒めで表現されし彼女は、十代半ばの少女に見える。
上下続きの水着を着用している。
肩ひもの幅は広めであり、下半身の部分は短パン型になっている。
総じて、肌の露出は少ない。
彼女の水着の色は、黒髪と同じである。この中が現実ならば、例え同色でも髪と生地とでは質感が異なっていただろう。
「私が着ている水着は、現代のような色鮮やかで華やかなものではありません。そういった見栄え重視のデザインが取り入れられる以前の、古風な水着です」
正面を向いて中央に立つ彼女が、あなたに語りかけている。
彼女はおとなしそうな容姿を持っている。
背景は、小さな雲がいくつか浮かぶ青空と、澄んだ海と、広がりを見せる白の砂浜だ。
「体にぴったりとくっついた形状は、スクール水着にも似ていますよね。ですが、そうではなく、スク水が登場する半世紀も前にあったこの古い水着の形が、スク水に継承されたのです」
ゆらゆらと三次元の胴体を動かしながら、彼女は語った。
彼女の黒髪は後ろで一つに結んであり、若干、首の後ろの髪が見え隠れする。胸部には、動きが付与されていないもようだった。
ここで彼女の黒い水着部分が拡大し、画面の中心になる。顔と足は映らなくなる。
「胸元と両手両足ぐらいしか露出していない、実にお色気要素のないこの水着ですが、ある方法でそれを覆せます」
急に画面全体が真っ白になった後、今度は画面いっぱいにイラストが表示された。
「はい。お着替え終わりましたぁ」
全体像が斜めに描かれた彼女は、白いワンピース姿だった。青い背景は、海にも空にも見える。
「それでは……ご覧下さい」
彼女の恥ずかしがる声とともに、画像の一部が変化した。
イラストの彼女は、頬を赤くする。
彼女の両手が移動している。
「ワンピースのスカート部分の裾をつかみ、大胆に持ち上げてみました」
描かれたイラストに対し、説明口調で彼女は言った。しかし、開かれた口は一切動いていない。
たくし上げられたスカートの中には、短パン型の古い水着がある。先ほどの古い時代の水着の上に着衣したのは、一目瞭然だ。
白いスカートの繊細さ、白くて力強い太もも、そして黒さが強調された水着との対比。
それらが最大限に生かされた芸術から、あなたは目を離せない。
「このように、下に穿いているのがかわいい下着じゃなくても、スカートを持ち上げる仕草は、そそるものにしてくれるのです」
彼女は大きな両目を細めた。
笑顔になっても、たくし上げは維持する。つまり、イラスト内の目だけが変化したに過ぎない。はやり、彼女の解説する声が聞こえてきても、口は一切動いていなかった。
あなたが画面を眺めていると、また三次元像に戻った。水着部分が拡大されたままだ。
彼女は素早く両手で体を隠す。
「きゃああああっ! いきなり脱がさないでぇっ! たくし上げしてあげてたのにぃっ!」
悲鳴を上げられてあなたは動揺した。
「――なーんて、冗談です。ふふふふっ」
彼女にそう言われて、あなたは救われた。肉食動物からの捕食を回避出来た草食動物の気分だった。
またも画面はイラストに変わる。
白いワンピースを持ち上げて黒い水着を晒す姿は従来と同じだが、表情がひどく挑発的なものに変化している。
「最後は、いわゆるメスガキさんみたいなお顔でお別れです。――ざぁこ! ざぁーこ! ……またご視聴下さい」
良き表情で、たくし上げを見られた。今までに反した生意気な言葉遣いも、いと味わい深い。
あなたはおのずと感謝をした。
(了)
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
もし良かったら、別作品もよろしくお願いします。