第4話 ペット?
第4話 ペット?
心地よいまどろみの中、誰かが体を撫でている。
意識がふわふわと浮かんでいる中で、どこからか話し声が聞こえる。
「では、処遇が決定したのですか?」
「あぁ、後の小細かい事を詰めて国民に公示するそうだ。私は先に説明に来たのだが、まだ起きられないようだな・・・・」
「そうですね、気持ち良さそうに・・・・・」
(うん?誰か話している。そういえばタキオンが…異世界だっけ・・?)
ルカが現状を思い出し目を覚ますと、4つのグリーンの目が自分を見つめていた。
視線を気にせずに周りを見渡すと、どこかの部屋のソファーに横になっている。頭はフィリップの膝に乗っており、フィリップが体を撫ぜていたようだ。
寝転がって居るのも失礼だな、と思い体を起してソファーの上にお座りの形で落ち着く。
フィリップは知っているが、もう一人のグリーンの目をした人物は誰だろうかと視線を向ける。
彼は、こちらの動きをずっと見ていたようで視線が合い話しかけてきた。
「起きられましたかルカ殿。私は皇太子のアレクシオンと申します。神の愛し子たるルカ殿にお会いできとても嬉しく存じます。」
ルカも挨拶をしようとしたが、喉がらは「グルル」としか出なかった。
(この姿では話せないのか)
残念に思ったが、生来無口なのでそれほど不便には感じずに、まあいっかで済ませた。
ペコリと頭を下げて挨拶をした。余り細かい事は気にしない性格をしているのだ。
挨拶を返されたアレクシオンは、嬉しそうに笑みを浮かべた。
もともと整った精巧に形作られた彫刻のような顔、美形だが美人と形容されるような顔である。笑顔を浮かべると破壊力抜群。男女問わずもてそうだ。うっとうしいほど色々寄ってきそう。
ちなみにフィリップも美形。男性的な男らしい美形だが、まだ若い所為か少しやんちゃな感じがする。
2人の美形に囲まれていてもさすがルカ。特に反応を見せない。
ルカにとって姿形、美醜はどうでもいいのだ。外見には価値を見出さない。ただ綺麗だな、と思うだけである。
「ルカ殿、言葉が分かりますか?分かったら右前脚を上げていただけますか?」
アレクシオンに言われたルカは素直に手(前足)を上げた。
「ありがとうございます。良かった。言葉は通じる様ですね。」
ホッとして息を吐くと、ルカのこれからの立場を説明しだした。
要約するとこうである。
・タキオン神の愛し子たるルカを神獣とし保護する。
・生活は王宮で。
後宮にある青緑の間にて(後宮とは王族の居住区)警備しやすいため。
・行動は自由だが、護衛の人間がつく。
・食事などは用意する。
・食事は王族と。
・城の人間は襲わないで欲しい。
など、色々言っていた。ルカはこれって王族のペットかしら?など思ったが、スルースキルで流した。
「このような形で良いでしょうか? 後は、コミュニケーションの取り方を考えないといけませんね。言葉は発っせられないようですし。」
「兄上、紙に文字を書いて指して頂いたら?」
フィリップはそう言って、紙を用意してさらさらと文字を書いていく。
書かれていく文字は知らない形をしているが、読む事が出来た。表音文字の様だ。
「文字は分かりますか?ではルカ殿、指してみてください。」
そういってフィリップは紙の端を押さえ、興味津津にルカを見た。アレクシオンも好奇心で目を輝かせながらルカを見ている。見詰められたルカは、ソロソロと手を出していく。しかし、手よりも文字の方が小さいので猫手でどの文字を指したのか分からなくなる。
ちょっと考えたルカは、爪で指す事にした。ピンっと1本の爪を立てる。
爪の長さは6センチぐらいあるので、それなら手が邪魔になる事無く文字が見えるだろうと。
紙に迫っていく爪。2人が見守る中、ルカの爪が一つの文字を刺した。
そう、刺した。見事に爪は文字を突き刺し、テーブルにまで刺さった。それも根元まで。
紙を押さえていた、フィリップの手のすぐ横だった。
どうやらルカの爪はかなり鋭利なようだ。
顔を青くした2人が見守る中。ルカはソロソロと爪を引き抜き、ソファーから降りて部屋の隅に行き壁に向かって項垂れた。その背中は暗く、誰がどう見ても反省しているように見えた。
ルカの頭の中にはタキオンの「自分の身は自分で守るんだよ」、と言っていた言葉がぐるぐる回っていた。