5,デザート
クッションが固くて死ぬかと思った。佐々木にニトリを紹介してやらなきゃいけない。暗い路地裏に汚らしいゴキブリ共と小便塗れの溝鼠が這っている。まぁ、構わないさ。やる事が出来て、少しだけでもその気になれた。目標を立てることはいい事だ。水が何滴か水面に落ちる。なんだか昔に戻ったみたいだ。表の通りには僕を捜す人達が沢山いる。これが厄介だ、こいつらは善に非ず。銀貨三十枚で働く商人だ。僕がこれまで、どれだけ善に尽くして来たか。きっと誰も分からないだろう。
悲しい気持ちになるけれど、僕らが会うことはもう無いかもしれない。今日の貴方の言葉の所為だ。燃え上がらされた僕の水色の炎は、貴方の目にはもう留まらないだろう。結局、何一つ敵わなかった。気持ちも、志も、努力も、信念も、世間の偽善に敵わない。ゴミの中にある安っぽい陶器を踏み潰す。それは灰に戻って、風に飛んでいく。僕の体は脚から砕ける。その破片は灰になって、そのまま風に乗る。やらなきゃ行けないことは多い。けれど今は、少し休みたい。ちょうど良い出っ張りに腰をかけた。遠くの空でカラスの声が響く。
臀の下に在る空調は耳障りな音を立て、生暖かい空気を吐き出した。当たりが緩やかに熱を帯びていることに気付く。瞼の裏を見れば、幾分も不快感を消すことが出来た。