奴隷②
二人の男がリーダー達に気づき、慌てて立ち上がった。
「あァ? おい、あんた……何者だ」
痩せた方が訝しげに目を細める。
リーダーは口角を上げ、今朝までの顔が嘘だったように、
いやらしく下卑た笑みを浮かべ、顎を突き出して唇を舌で湿らせた。
「通りすがりの、しがない“神官”……ですよ」
門番の視線が険しくなり、武器へ手を添えたまま、
リーダー達を取り囲むように位置をずらす。
「そうか、わかった。だが、そこから動くな!」
「わかりました。でも、少しだけ話を聞いてもらえませんか?」
「なんの用だ?」
「さっき、いいモノを森で拾いまして……」
怪しい態度の男に、二人の殺気が膨れ上がっていく。
「この辺にお客様がいると聞いていまして、出来れば、その……」
そう言いながら、男は腰の縄をぐいっと引き。
二人の身体が前のめりに引き出され、
手枷がじゃらりと鳴り、嫌そうな二人の顔に合わせて首輪が光った。
門番達が露骨に目を見開く。
「お、おお……」
筋肉質の方が、思わず口笛を鳴らした。
「なんだこりゃ。人族の女に、エルフのメスかよ。
しかも上玉じゃねえか。……おい、あんた、本当に神官か?」
「見りゃ分かるだろ? 神に仕えたってカネが好きなのは変わらんよ」
「おっ……だが、どこでこんな女を拾った?」
「そこは“神の導き”ってやつさ。
ほら――見ただけで、いい女だと分かるだろ?」
リーダーは肩をすくめて面白そうに笑い、外套の下で贅肉が揺れ。
多少は安心したらしく、門番達の手が武器から二人の身体に伸び、
リーダーは、さりげなく身体で遮った。
だが、二人に向けられた欲望まみれの視線は、そのまま這い回る。
ミアの浅黒い肌、豊かな胸、引き締まった腰から続く臀部。
リアの白い首筋、整った顔立ち、細く長い手脚。
そして、首輪と手枷。それに、拒絶や抵抗さえ出せない猿轡。
「……首輪は、奴隷のか?」
「ああ。お客様へ納品できる証さ」
リーダーは一段と嬉しそうに身体を揺らす。
「黙ってりゃ、そこらの女なんざ相手にならねえ程の見た目だ。
多少強いらしいが、首輪と枷がありゃあ……別ってもんだろ?」
門番が顔を見合わせる。
「……ここで立ち話もなんだ。で、いくらだ?」
片目の男が声をひそめて切り出した。
リーダーは薄く笑うが、その目は油断なく光っている。
「そりゃあ、話が早くて助かる。お買い上げのお客様ですね?」
目だけで笑う商人のような顔をして、縄をぐいっと引き寄せた。
ミアは猿轡越しに低く息を吐き、
瞳の奥には怒りと困惑が入り混じっている。
リアは冷静を装いながらも、疑う色を隠しきれていない。
「そうだな~。まとめて、金貨百五十」
「……はっ?……はあァ!? ざっけんな!」
痩せた男が即座に怒鳴る。ミアとリアも驚きを隠せない。
「人族の女とエルフ女だぞ。
しかも見ての通りの顔と身体だ。文句言う客はいねえんだよ」
リーダーは値を吊り上げる商人口上のまま、厚い唇を歪めて笑った。
「それに――アイツには手を付けてねえ……価値が落ちるからな。
生きたエルフ……後は、言わなくても……わかんっだろぉ?」
その一言で、門番たちの目が一瞬だけ鋭くなる。
「初物のエルフ、ねぇ……」
「わりいが、アイツは楽しんだ。いい声で鳴くんだぜっ」
片目の男がじろりと、もう一人はじっくりと、
ミアの胸や腰の線、リアの整った顔と白い脚へ視線を走らせた。
「……こいつら、本当に抵抗できねえんか?」
ミアは、今にも飛びかかりそうな顔で睨みつけ。
リアは、身体を誇示するように挑発的な態度を見せる。
「ああ。試してみるか? 二人とも、いい女なのがわかるぜっ」
リーダーはニヤついたまま、ほんの少しだけ縄を緩めた。
門番の手が嬉しそうに近づいていく。
「……だが! 一度でも試したら返品は受けねえ」
リーダーは途中で紐を強く引き、露骨な態度でやめさせた。
「試した後の値引きもなしだ。ああ……お試しの後は、倍なっ!」
二人の顔が曇り、明らかに睨むが、男は嬉しそうに笑う。
「チッ……。とりあえず上に会わせてやる。話は、それからだ」
門番は何度も武器をチラつかせてきたが、
動じない男の顔に負けて、あからさまな舌打ちをした。
「ありがとよ。そりゃあ。色々と助かるよ」
リーダーは勝ち誇ったように口元を歪め。
縄につながれたままの二人は、
呆然とした顔のまま、猿轡越しに背中を見つめていた。
奴隷②




