潜入②
男たちがスマホの画面を確認し、
美咲の言葉が真実だと知ると、彼らの表情が次第に変わり始める。
最初は冷淡で計算高い印象を与えていた男も、喜んでいた彼らも、
美咲の物としての価値を目の当たりにすると、
驚きと興奮が入り混じった表情に変わり、
当初感じていた危険性や計算を忘れ、次第に彼女に引き込まれていった。
その瞬間、美咲は自分の提案が予想以上に、
彼らの興味を引いていることに気づき、冷や汗が額を伝った。
「こんなに?本当に、こんな物に価値があるの?」
美咲にとって、それは何をするのにも邪魔でしかなかった物なのに、
彼等にとっては高い価値だったと気づく。
その事に彼女は戸惑うが、これから何が起こるのか、
自分の想像を超えた生活が待ち受けているのかもしれないと焦り始めた。
だが、すぐに冷静さを取り戻し、必死に表情を整えてから、
「面接は合格ですか?」と声を出し、震える心を無理やり押し殺した。
もちろん、不安や葛藤は心の奥底で渦巻いていたが、
美咲は凛とした表情を崩さず、普通のことだと毅然とした態度を保った。
そんな彼女の態度と言葉に、興奮していた男たちは、
一瞬の静寂の後に顔を見合わせ、楽しげな笑い声を漏らした。
「お前、なかなか面白いやつだな」「いいね」「アハハハ」
一人の男がそう言うと、他の男たちも同意するように頷きあった。
その反応を見た美咲は、コレで終わったという安堵の気持ちと同時に、
これから何かが起こりそうな予感を感じて焦っていた。
「面接の結果は、今後の行動次第だ。
ただ、お前の提案には特別な価値があるから楽しんで働け。
その後に客からの要望があったら合格にしてやるからな。
それまでは、仮の採用だ。わかったか?それでいいな。美咲」
「いいねぇ。頼むぞ。アハハハ」「そうなんだなぁ。みさきぃい。」
その言葉は希望ともとれるが、
この店で働けば友達と同じ危険に巻き込まれるかもしれないという、
何が起こったのかもわからない漠然とした恐怖を感じている。
しかし、これ以外に目的を果たすためのチャンスはないと、
美咲は心に決めていた。
「友達…友達のためよ。これ以外に方法はないの。」
彼女はその言葉を噛みしめ、心の中で葛藤し、
友達の行方を探るためには、この瞬間しかないと、強く決意を固めた。
「わかりました。よろしくお願いします。」
美咲は決意を込めて答えた。
その言葉の裏まで理解したかのように、
男たちは再び笑い合い、彼女の覚悟を受け入れるかのように頷いた。
「アハハハ。そうかよぉお。」「美咲も俺達の仲間だって。アハハハ。」
「お前がどれだけできるか、楽しみにしている。
だが、こちらからも条件がある。ちゃんと覚悟を持って来たのなら、
行動で示し、俺たちを失望させるなよ。」
その言葉から、彼が自分を疑っていることを、美咲は察した。
彼女は次の一手を考えながら、冷静に行動を見極めることに決めた。
「これで少しは時間が稼げるはず。その間に…」
今の状況に心は疲弊し、これが本当に正解なのかさえわからない、
できることなら、今すぐに彼等と話したかった。
もちろん、面接に遅れて来た理由に疑問を持っても、
他の店で働いている事を彼等も知っている。
深夜に来たのは、多少の計算と打算があってのことだが、
次の展開は、彼女の想像をはるかに超えていた。
「今から働いてもらう。」
男のその一言が、美咲の胸に重くのしかかった。
「更衣室はあっちだ。さっさと着替えて店に出ろ。」
男の指示に、美咲は一瞬混乱した。
「でも、今日は面接だけ…」
口を開こうとした彼女の言葉を遮るように、男は続けた。
「今から、昼間の喫茶店が始まるまで働いてもらう。
分かったらすぐに動いて、俺たちを失望させるな。
そんなこともできないのなら、仮採用さえも取り消すぞ。」
美咲は一瞬ためらったが、心の中で自分を奮い立たせた。
「逃げるわけにはいかない。この状況を乗り切るしかない。」
そう自分に言い聞かせて、
「はい。」と、緊張や驚きを隠して、嬉しそうな顔で更衣室へと向かった。
。
面接の部屋を出て、言われた更衣室のドアを開けると、
薄暗い空間には、この店の制服が吊り下げられていた。
急いでその中から自分に合いそうなサイズを選び、
「これから…これからよ。」
と、心を落ち着けるように深呼吸をする。
まだ具体的に、どんな仕事をするかは聞かされていないし、
彼に「処女」だと伝えているから、無理なことはしてこないと思うが、
正直何をするのか不安で困惑していた。
もちろん、並べられている服は、全て同じ形をしていているので、
「コレ?はぁあ。こんなのを着るの?」という美咲の不満は考慮されない。
その中でも出来るだけ大きな制服を選んでも、きつい部分もあるし、
着替えを終えた美咲は、鏡の前に立って自分の姿を見て呆然とする。
鏡に映るのは、黒いストラップレスハイレグワンピースを着たウサギ。
脚のつけ根はハイレグ仕様で、
「見えそう…」と、布の内側へ色々な場所を押し込んで隠してみたが、
気を張っていないと、薄い毛や色々な場所がはみ出してしまいそう。
「こっちは…」と、後ろの布を引っ張って広げたが、
歩き方によっては、お尻が外へ飛び出して布が谷間へ沈んでいきそう。
「痛い…」と、下半身側へ出来る限り布を引き下ろそうとしたが、
変わりに胸が大きく盛り上がるようにせり出し、谷間に何かをされそう。
頭には大きなうさ耳、手首には白いカフス、
首には蝶ネクタイ、足には光沢あるハイヒールが揃っていて、
黒いバニーガールの服は、彼女の体のラインを際立たせる。
うさ耳と高いハイヒールに、ハイレグワンピースという格好は、
背の高い美咲が、一段と目立ってしまい視線を集めそうで、
「この格好で…」と、これから何をするかわからない緊張と、
「これで…」と、友達が見つかるかもという期待が交錯する。
「さあ、行くしかない。」
彼女は自分を励まし、意を決して更衣室を出ると、
美咲を店に招き入れた男が立っていた。
「美咲。仮採用おめでとう。」
「ありがとう。これから頑張るわ。」
と、妖艶な微笑みで、彼のイヤらしい視線に答える美咲。
「ぺた」「ウフフ。」
男は、何も言わずに美咲の綺麗なお尻に触れてくるが、
彼女も特に嫌な顔をせずに、笑って流している。
「…」「ダメよ。これ以上は別料金よ。」
男がさらに、残った手を美咲の胸に伸ばそうとすると、
彼女は、体をひねってその手を避けていた。
「まあ、合格だな。客に嫌われないように注意しろよ。
それから、これを首からかけとけ。」
男が差し出したのは「ヴァージン」と書かれた首掛けのプレートで、
それをメダル授与のようにかけられると、みぞおち辺りで揺れていた。
「お守り?」
「そうだ。これがお前の価値だ。」
と、男は軽く笑うだけで、それ以上は何も言わない。
「店に出たら、お前のお披露目だ。他の女たちは、お金を稼ぎに来ている。
これ以上は言う必要もないが…まあ、邪魔をするなよ。」
「わかったわ。場を乱すなってことね。」美咲がそう答えると、
男は「あとの事は店で見かけたやつに聞け」
とだけ言うと、男は何も言わずにどこかへ向かって歩き出し、
美咲はその背中を追いかけた。
エアコンの音がやけに煩く感じる廊下を、
美咲は焦りながらも彼についていき、真っ白な壁を何度か曲がった後、
目の前に現れたのは、「ボタンは?」と言いたくなるような光景だった。
その理由は、エレベーターのような見た目をしているのに、
入口のドア以外には何もなく、ただの自動ドアのように見えたから。
その扉が、彼女を待っていたかのように、到着音もなく静かに開くと、
男は「幸運を祈ってるよ」とだけ言い残して立ち去り、
「入れって…こと?」と心の中で美咲は呟いた。
焦りで心臓の鼓動が激しくなったが、
扉が閉まると、彼女を乗せた箱の中で静かな空間が広がっていた。
潜入②




