潜入①
美咲は三島の言葉を思い出しながら、
「トレジャー・ナイト」の裏口にたどり着き、
緊張で心臓が高鳴るが、それでもここへ向かう決意を固めていた。
時計を見ると、すでに面接時間の21時を過ぎて23時。
わざと遅れてきたのは、自分の価値を試すためでもあり、
遅い時間なら、相手も疲れて面接が緩くなるかもしれないという、
少ない打算もあった。
薄暗い路地に足を踏み入れると、チンピラ風の男が近づいてきて、
彼は美咲の姿を見て驚いた様子で、まじまじと彼女の顔を見つめた。
「お、お前…美咲だろ?」男は一瞬目を見開いた。
「ええ、そうです。面接に来ました。」
と、美咲は少し緊張しながらも毅然と答えた。
その美しく凛々しいい姿に、男はたじろぎつつも、
彼女の顔を見て何かを思い出したようで、
「なんでこんなところに…お前、あの店で働いてるんじゃなかったのか?」
と、疑わしげに眉をひそめる。
彼が自分の顔を知っているとは思わず、美咲は一瞬戸惑ったが、
「事情があって、ここで働く必要があるんです」
と、相手の目を真っ直ぐ見て答える。
真剣な美咲を見ても、男の表情は困惑したままで、
「まさか、本当にこんなところに来るとは思わなかったが…
本気なのか?ここで働くつもりなのか?」
明らかに、自分の働いている店が、
まともでないとでも言いそうな顔で話していた。
その態度に、美咲はこの店に何かが有る事を確認し、
心の中で「ここだ…友達はここにいる」と何処か納得し、
友達を探すために、何が何でもこの面接を成功させなければならないと、
心を決めていた。
「はい、本気です。短期間でお金を稼ぐ必要があるんです」
彼女は真剣な表情で男を見据えた。
少し考え込んだ男はやがて頷き、
「わかった、待ってろ。中に通してやる」
と扉の鍵を開け、美咲を店の中に招き入れた。
。
美咲は、新しい一歩を踏み出す瞬間を感じながら、
「トレジャー・ナイト」の内部へと足を踏み入れた。
ドキドキしつつも、強い決意で自分を奮い立たせて、
今日は、いつもなら絶対に着ないような、
お尻がチラつく赤いボディコンワンピースを選んでいた。
その服は体のラインを強調する見た目と、
佐々木が選んだ大胆なデザインの白い下着が背徳的な気分を誘い、
本当は、自信が無く臆病な彼女を支えていた。
そんな気持ちの美咲は、薄暗いVIPルームのような部屋に通され、
ソファに座る数人の男たちが、無遠慮な視線を向けて、
その視線に一瞬身震いしつつも、美咲は自分を奮い立たせる。
「この女が、あの店で有名な美咲だ。今日からここで働きたいらしい」
と、連れてきた男が紹介すると、
他の男たちは興味深げに笑みを浮かべた。
「この店に来た目的を話してみろ」と、別の男が促す。
遅れて来た美咲の面接を、やめるつもりが無いと気づき、
その言葉の意味に気づいてしまうと、
「やっぱり、そう聞く…」と、美咲の胸には不安が的中する。
「はい、よろしくお願いします。」
美咲は意味の無い返事をして、男たちの視線に負けないよう気を張る。
「だから、この店で何を期待しているんだ?」
呆れた声だが鋭い目で続けて尋ねられ、
美咲はしっかりと目を合わせてから、
これから言う言葉で全てが決まると、
少しだけ躊躇しながら、決めていた言葉を口にする。
「こちらの店で、処女を高く購入してもらえると聞きました」
その言葉は、彼らの興味を引くために彼女が考えた一言だった。
実際には、失踪した友人を探すためにここにいるのだが、
刺激的な話で彼等の関心を引き、面接に合格したかった。
もちろん、美しく凛とした美咲が自分から告白したので、
男たちは一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに興味深げな笑みを浮かべた。
「ほう、それは面白い」「いいね、美咲」「そういう事…」
と、彼らはさらに身を乗り出してきて、
彼女の気持ちがどれほど本気なのか、探るように見てきた。
彼等の目が、本当の気持を探っているようだったので、
美咲は「本気です。」と、強い意志を込めて頷いていた。
「そうか、美咲」「すげえな」「へぇ。処女かい」
「処女である私に、特別な価値があるのなら、
高価で買っていただける場所で、それを売りたいと思って来ました。」
男たちの表情が少し和らぎ、興味が引かれているのが分かり、
美咲は、わずかな成功を感じつつも自分を鼓舞した。
しかし、次の瞬間彼らの間で視線が交わされ、何かが決まった。
「じゃあ、試しにテストしてみよっかぁ。
お前のその価値が本物かどうか、見極めさせてもらうぞ。イイナ?」
その言葉に、美咲は一瞬、心臓が止まる思いがし、
男たちの意図が明らかになり、彼女の胸に恐れと絶望が広がる。
しかし、ここで後退するわけにはいかないと心に誓い、
友人を救うため、そして自分の目的を果たすために、
彼らの試練に立ち向かうしかないと、決意を込めて彼らに向き直る。
「どうぞ、何をされても構いません。」
もちろん、内心では「イヤ…ヤメて…」と叫びたかったが、
ここまで来た以上、もう後戻りはできない。
彼女の心には諦めと同時に、
面接が計画通りに進んでいる興奮も入り混じっていた。
「この面接に合格して、必ず大金を掴んでみせます」
その言葉に込められた強い意志を感じ取り、
男たちも一層興味を持ち始めたのが分かる。
もう引き返せないのだと覚悟を決めた美咲は、
彼らの視線を一身に浴びながら、
相手から言われる前に、スカート部分からワンピースをめくり上げ、
脚を開き腰を前に出し、彼等から見えやすい格好になっていた。
もちろん、何故ショーツを脱がないのか気になった男達の視線が、
美咲の下半身に集まったが、
「穴開きだろ?」「そうか」「へぇ、最初から見せるつもりか」
と、一人は見慣れているらしく、
美咲が履いているショーツが穴開きなのを知っていた。
そう説明されるだけで他の男達も気づき、
ちょっと動かすだけで中が見ることも出来るし、
好きに出来ると気付いた瞬間、男たちの視線が鋭く美咲に集中した。
「動くなよ」と、一人の男がスマホを取り出し、
美咲の体に無遠慮に指を這わせながら、
彼女の言葉を確認するかのように、そこに向かってレンズを向ける。
指の感触に美咲は身震いしたが、自分がここで何をしているのか、
やっていることが間違っていないと信じて、耐え抜こうと決意を固めた。
必至に我慢している美咲の顔が楽しいらしく、
男は満足げにフラッシュを焚き撮影を続け、
その光が瞬くたびに、美咲の心には恐怖と不安が交錯する。
それは、自分がまるで見世物になっているかのような感覚に襲われ、
同時に、この状況を利用しなければならないと誓った。
「いいね、その表情。もっとこっちを見てくれ。」
男は楽しげに言いながら、美咲の嫌がる顔を撮り続けた。
彼女の凛とした雰囲気で、嫌悪感を感じて微かに歪んでいる表情は、
撮影している男に、さらなる興奮を与えているようで、
周囲の男たちもまた、その様子を楽しんで見ているのが感じ取れた。
美咲は心の中で葛藤しながらも、
「もう少しで終わる…もうちょっと…」と強い意志を保ち続けた。
もちろん、嫌がって感じているように見せているのは、
男たちを引きつけるための演技で、本当の目的は友達の行方を掴む事。
だからこそ、どれほど見せかけの表情を浮かべようとも、
決してこの男たちに屈して、
本当に感じることなどないと自分に言い聞かせた。
「こんなことで、全てを終わらせるわけにはいかない。」
と彼女は心の中でそう強く呟き、自分を奮い立たせ、
状況に飲まれることなく冷静さを保ち、何をすべきかを考え続けた。
「まだ始まったばかりよ。」美咲はそう自分に言い聞かせて、
これから続く、長い戦いに向けて意志を新たにしていた。
潜入①




