表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロスオーバー  作者: 連鎖
みさき(運命)
45/98

秘書⑤

 店員がトイレに行ってしまいどうすればいいか迷った美咲は、

「続きはどうしますか?」と、佐々木に聞く。


「それ。それに着替えろ」と、この下着も嫌いなのか、

 彼はそれを見ようともせずに指差す。


 次に選ばれたのは、糸の束のようになった黄色い毛玉だった。


 美咲も大人なので、それが何かに気づき、

「まあ、こういうのよね。あはは…」

 と呆れた顔で、その毛玉をほどいていった。


 佐々木が、その下着に少しも興味がなさそうにしていたので、

 美咲は「本当に着ますか?」と聞く。


 その返事は、「アイツはいないが、見てやるから着ろ」と言われ、

 社長に着ろと言われれば、仕方がないと諦めて美咲は着始める。


 前に使った人が悪かったのか、明らかに中古品の紐を解き、

 ショーツと言えないほどの紐の塊を、股の間に通して腰で固定する。


 胸の方も似たようなもので、

 胸を丸い枠に通し、首後ろと背中部分の紐を結んで固定した。


「佐々木さん、どうでしょう?」「まあ、いい。アイツはいないから次だ」


 佐々木は、相変わらず興味がなさそうに下着姿の美咲を見ているので、

 そんな態度に、


「でも、こういうのが人気なのよね…どうして?別に何も隠れないよね」


 と、彼女も少し気が抜けていた。


 紐を止める時に固結びをするわけでもないので、

 軽くブラの固定した結び目を外した時に、

「ハァ、紐のあとってなかなか取れないのよね」

 と、身体のことが気になった。


 しかし、ショーツを脱ごうと腰の部分の結び目を外しても、

「あれ?どこか…」と、いつまで経っても紐が落ちてこなかった。


「…ひっ…」と、外し忘れている場所に気づいた美咲は、

 顔を真っ赤にして、慌てて全ての紐をまとめ、

 さっき以上に入念に、二つの紐を団子にしていった。


「どうした?」


「い、いえ、大丈夫です。次ですね、次」「ああ、あれが最後だ」


 最後に着替えるべき下着を見て、美咲は少し戸惑っている。


「今回は普通っぽい…」と心でつぶやく美咲。


 今までの派手なデザインや紐のようなものではなく、

 レースが飾られた白い下着は、普段目にするようなデザインだった。


 そこへ、満足そうな表情で、少し疲れた店員が戻ってきた。


「佐々木さん、アレ終わりましたか?」「ああ、あれが最後だ」


「…あ、見せなくてすみません」と、焦った顔で美咲は謝るが、

 手にしていた黄色い紐の塊を、なぜか握り締めたまま離さなかった。


「さっさと次に着替えろ」と、佐々木が少し不機嫌そうに促す。


「次のがいいですよね?佐々木さんの好みでしょう?」


 佐々木の趣味をわかっているなら、

「最初から、これに着替えさせてくれたらよかったのに…」

 と、美咲は心の中で思いながら、


「これに着替えますね」と言い、

 手で包むように隠した下着を、二人に忘れてもらおうとしていた。


「今度のは普通の形だし、これなら…」

 と、美咲は片手でぎこちなくショーツを履いたが、

 ブラのホックがなかなか留められず、仕方なく店員に助けを求めようと、

「お願いできますか?」と、少し不安げに頼む美咲。


 店員は困った顔で佐々木を見たが、

 佐々木は無関心に「美咲がいいなら、別に構わない」と言い放つ。


 佐々木の了承を得た美咲は、店員の背丈に合わせようと脚を左右に開き、

 ストラップを両肩にかけたまま「よろしくお願いします」と言い、

 腰を落としつつ頭を下げた。


 店員が彼女の背後に回り、舐めるような視線を、

 お尻の先に送っているのに気づいた彼女は、

 全身に言いようのない恐怖が走る。


「やっぱり、佐々木さんに…」と躊躇したが、


 その時、店員がブラのホックをとめるだけのはずが、

 胸に直接触れて、支えるように持ち上げたことに驚いた。


 もちろん「やめて!」と反射的に体をひねって彼を睨みつける。


「ちゃんとカップに収めないとダメだろ?それとも自分で出来るのか?」

 と、店員は美咲を馬鹿にするように笑う。


 美咲は先ほどまで身に着けていた紐の下着を手に握りしめたまま、

 何かの違和感に気づいた。


 店員が背後に回った際、「エアコンの風?彼が…見た?」

 と、布で覆われているはずの部分にあり得ない感覚を感じ、

 自分の目でその部分を確認すると、

 さっきまで白いレースの下着と思っていたデザインが、

 実は違って、その部分に穴がある事に気づいた。


 これ以上、着替えを手伝う時に触れさせたくないし、

 もう一度あの格好で、店員に覗かれたくないので、

 美咲は「どうぞ」と、手の中で隠していた下着を店員に渡した。


 直接、美咲から下着を手渡された店員は、

 においを嗅ぐような仕草をしながら、いやらしく笑みを浮かべた。


 その視線や、あの濡れた下着を渡した羞恥心に耐えきれずに、

 美咲は店員から視線をそらす。


「うん、いい香りがするなぁ。

 美咲ちゃんのは、さっきのも良かったけど、これは格別だなぁ。」


 彼が舌を出し、なめるような動作を見せると、

 美咲は吐き気が込み上げたが、冷静な顔を保ち彼を睨み続ける。


「さっさと目の前から消えろ」と、佐々木が冷たく言い放つと、

 店員は不敵な笑みを浮かべながら立ち去っていった。


「…舐められた。私の下着を、あの男に…」

 そういう思いが駆け巡り、美咲の心はざわついている。


 彼女は、以前からおりものが多いためシートを貼る習慣があったが、

 さっき渡したコットンの下着も、紐の下着にもシートは貼っておらず、

 生理も近いわけではないのに、紐の下着は白濁した液体で濡れていた。


 最初に渡した下着のことを思い出してしまうと、

「違う。あれが、たまたま濡れていただけ…」

 と、必死に自分に言い聞かせ、顔を真っ赤にする美咲。


 もちろん、羞恥心で顔を真赤にして「たまたま…」と思いながら、

 アソコに紐を強く食い込ませていた理由など考えたくなかった。


 色々な妄想が心をかき乱し戸惑っている美咲に、

 佐々木が「さっさと着替えろ!」と命令する。


 怒鳴り声で我に返った美咲は、すぐに胸元を整えてホックを留めた。


 下着を着るだけで妙に落ち着いた美咲は、

 店員がいなくなり二人きりだと気づくと、

「着替えました」と嬉しそうな顔で佐々木に向かってポーズをする。


 そんな美咲に、佐々木は興奮した表情で「脚を広げろ」と命じると、

 しゃがみ込んで見上げてくる。


 美咲は「この男も一緒…」と思っているが、

 彼の興奮している姿に、自分も興奮していると気づいていない。


 今、美咲が思っているのは、あれだけ怖かった佐々木が、

 嬉しそうに見上げて来る姿が可愛くて、

 自然に腰を前に突き出して、彼から見えやすいような格好になっていた。


 。


 二人が店で少しだけ楽しんでいた時、不意にドアが開く音が響き、

 数人の新しい客が入ってくる気配がした。


 戸惑いで美咲の視線は思わず佐々木に向けられ、

 自分が今、下着姿でいることに気づくと羞恥心で全身が熱くなった。


 必死に「早く服を着ないと…」と思うが、動揺で体がすくんで動けない。


「ほら、美咲、こっちだ!」


 と佐々木が手を差し出し、強く彼女を自分の方に引き寄せた。


 美咲は驚きながらも反射的にその手を握り返し、

 混乱の中で「佐々木さん…」と、頼れるものがそれだけだと感じた。


 佐々木は客たちの間をすり抜け、

 まるでその場から美咲を守るかのように彼女を連れていく。


 頭が真っ白になった美咲は、

 ただ彼の後ろについていくことしかできず、

「この人…やさしい…」と心の中でつぶやいた。


 外に出た彼が社用車のドアを開けると、

 ようやく安全な場所に逃れられたような気がして、

 美咲は急いで車内に飛び込んだ。


 佐々木も続いて乗り込み、ドアを閉めると、

 さっきまでの喧騒が嘘のように静寂が二人を包んだ。


 美咲は深く息を吐き、「よかったぁ…」と安堵の表情を浮かべるが、

 ふと下着姿のままであることに気づき、再び顔が赤らむ。


「落ち着けよ、美咲。色々あったが、これも仕事の一環だ。」

 佐々木が強く言うと、美咲は小さくうなずく。


 何とか気持ちを落ち着かせようと深呼吸し、

「これは秘書の仕事なんだ…コレぐらい…」と自分に言い聞かせ、

 そうして羞恥を振り払うように背筋を伸ばし、

 彼に向かって毅然とした表情を見せた。


「佐々木さん、もうどうにでもなれって気持ちです。」


 佐々木はその変化に気づき、満足げな笑みを浮かべて頷いた。

「よし、その意気だ。美咲、さすが俺の秘書だな。」


 美咲は少し緊張しながらも、佐々木にすべてを委ねる覚悟を決めた。


 彼の指示に従うことで、秘書としての役割を全うすることが、

 自分のプライドを守る唯一の方法だと信じたかった。



 秘書⑤

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ