情報屋①
藤崎美咲は、売れっ子のキャバ嬢。175cmの長身に、
スレンダーなウエストとFカップを超える巨大な胸を持つ彼女は、
どこにいても目を引く存在だった。
その日の美咲は、仕事の途中で店を出て来たらしく、
綺羅びやかな白いプリンセスロングドレス姿だった。
そのドレスはまるで光を纏ったかのように、
夜の照明の下で優美な輝きを放ち、
まばゆいスパンコールやビーズが波打つように揺れて、
深いV字の胸元から鎖骨にかけてのラインが繊細に映え、
肩から袖へと滑らかに流れるシルクの布地は、
まるで軽やかな風に乗って舞うようだった。
そのドレスの裾は床に届くほどの長さで、
彼女が歩くたびにゆっくりと後を引く。
その動きに合わせて、柔らかなシフォンがふわりと膨らみ、足元には、
ドレスと絶妙に調和するシルバーのハイヒールが光を反射して、
ひっそりとした輝きを放っていた。
そのハイヒールの踵が床を軽く打ち、そのかすかな音が夜の空気に響く。
ドレスの裾が足元をふんわりと包み込みながらも、
シルバーのヒールが時折見え隠れし、
彼女の一歩一歩をさらに魅力的に引き立てていた。
そんな彼女の髪は、深いアッシュブラウンに染められ、
まるでシルクのように滑らかな光沢を放ち。
ゆるく巻かれた髪の毛が優雅に肩の上で揺れ、
顔周りにかかる部分は繊細なカールがかかって、
彼女の表情を柔らかく引き立てている。
アイメイクは濃いめで、深いブラウンのアイシャドウが目元を強調し、
長いまつげが彼女の魅力を引き立てて、美
咲が自信に満ちた笑顔を浮かべると、
ピンクのリップまでもが彼女の優しく穏やかな印象を強調した。
そんな彼女がフロアに足を踏み入れると、
その存在感で周囲の視線を一身に集め、周りにはすぐに人々が集まった。
お酒を注ぐその手さばきは華麗で、まるで舞台の上で踊るように動き、
美咲の声は甘く、その声に魅了された人が次々と現れる。
彼女は自分の魅力を知り尽くしていて、その表情やしぐさ、
そして服装の一つ一つにその意識が表れていた。
美咲は、ただの夜の遊び相手ではなく、
忘れられない思い出を提供する存在であることを、
全身で感じさせるような女だった。
しかし、そんな美咲が仕事をする目的は既に終わってしまい、
お客様に笑いかける事が生きがいだと誤魔化してきた。
そんな彼女が、仕事で見せてる顔とは違い、
切羽詰まったような緊張した表情で街を歩く。
もちろん、店はまだ終わっていないのだが、
途中で抜け出してまで向かった行き先は、
繁華街の片隅にある古びたビルだった。
その薄暗く汚れたビルの入口では、
年季の入った自動ドアが時折キーキーと不快な音を立てて、
壁にはかつてのテナントの古い看板が残され、
埃っぽい空気と時折漂ってくる湿った臭いが鼻についたが、
行き先を聞いていた美咲は、気にもせずに階段を上がっていく。
彼女が三階にたどり着くと、廊下はさらに薄暗く、
蛍光灯の明かりは弱々しくちらつき、散乱したゴミが影を作っていた。
そんな不気味な場所で、彼女の足音が廊下に反響すると、
不気味な静けさを一層際立たせていた。
目的の扉の横には小さな木製のプレートがかかっており、
「三島」の名前が手書きで書かれているだけだった。
何も知らない者なら近づく事さえためらうだろうが、
美咲の手が扉を軽くノックする。
その音で気づいたのか、
「はいれ。」という低い声が扉の先から返ってくると、
彼女はドアノブをひねり、ゆっくりと中に入っていった。
そこには三島の「店」があった。
部屋は窓がほとんど塞がれ、薄暗いライトがぼんやりと照らすのみ。
カウンター奥の棚には酒瓶が無造作に置かれ、
空間全体に独特の静寂と重みが漂っている。
壁には写真やメモが無造作に貼られて、
過去の仕事や彼に関わった人物たちの歴史を見せているかのようだった。
そんな店のカウンターの向こうには、
黒いシャツを着た三島が静かに立ち、美咲に一瞥を送ると、
無言でグラスに琥珀色の液体を注ぐ。
その表情は読み取れず、
鋭い眼光を持ちながらもどこか冷ややかな静けさを保っていた。
「今日は何を知りたいんだ?」三島が低く問いかけた。
美咲は妖艶な顔で嬉しそうに口角を上げて、冷静な口調で答えた。
「今回の件について、あなたの知っていることを全て教えてほしい。」
三島は無言で頷き、
カウンター越しに資料の入ったファイルを差し出した。
彼の動作は落ち着き払っており、
緊張感を漂わせつつも、どこか余裕が感じられた。
二人の間に流れる沈黙。
その空気には、ただの取引ではなく、
彼らが共に背負う覚悟や互いに築き上げてきた重みが染み込んでいた。
もちろん、そのファイルに意味など無いのだろう、
美咲は一瞥もせずに彼を見続ける。
お互いの視線は交差するが、彼女の訪れた理由を知らない彼が、
「少し待ってろ。調べてくる。」
と言って店の奥へ消えていった。
美咲は無言のまま待たされる間、部屋の薄暗い空気に包まれていた。
心の中で不安がうごめき、いつまでこの静けさが続くのか、
分からなかったし、自分以外に誰もいないはずなのに、
どこかに視線を感じて落ち着けない。
タイトなドレスの生地を指先で撫でて、冷たい生地の質感が、
少しだけ冷静さを取り戻せそうに思わせるが、
周囲の静寂はその努力を許さないし、
耳を澄ませば、心臓の鼓動が響き渡る。
次に美咲は手元のネイルに視線を落とし、
ピンクのマニキュアが光る指を口元に持っていくと、
唇に触れることで安心感を求めようとしたが、
誰かに見られているかのような緊張感が背筋を走った。
その感覚から逃れるために、美咲は立ち上がり、部屋の隅を歩き始めた。
カウンター越しに置かれた酒瓶や、
壁に貼られた写真の一つ一つに目をやり、思考をそらそうとするが、
どれも彼女の心を落ち着かせるには足りなかった。
再び自分のドレスに手を滑らせ、そのフィット感を確認する。
視線の正体が不明なまま、彼女は何度も服の裾を引っ張り、
着心地を調整するように見せかけながらも、周りに視線を送り、
必死に理由を探しながら気を紛らわせようとしていた。
心臓が高鳴り、静かな不安が彼女を包み込む。
まるでどこかで、自分を見つめている誰かがいるような気配に、
さらに落ち着かない思いが募っていく。
そうしているうちに、少しずつ気持ちを整理しようとしたが、
待つことができず、イライラを隠しきれなくなった。
美咲は再びドレスの袖口を引っ張り、目を閉じて深呼吸をしたが、
その瞬間、目を閉じている間にも、
背中に感じる視線がより一層強くなっているように思えた。
そんな心の奥底から湧き上がる不安は、
彼女の美しい顔を曇らせ、影を落とす。
何が彼女を待たせているのか、そしてその視線の正体は何なのか、
心の中で問い続け、静寂の中で、彼女の胸は高鳴り、
時間だけが無情に過ぎていった。
情報屋①




