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クロスオーバー  作者: 連鎖
あーちゃん(夏の海)
31/98

お風呂

 朝から亮平と遊び続けて疲れているが、海からの帰り道はまだ長く、

 途中で休憩しても、窓の外を流れる高速の景色は変わり映えしない。


 違うのは、助手席でスマホをいじっている亮平が、

 ちらちらとこちらをうかがっていることだけで、

 それがひかりの気持ちをわずかに紛らわせていた。


「何を見ているの?」ひかりは軽く睨むように亮平に視線を向ける。


「べつにぃ。」亮平は一瞬目をそらし、


 再びスマホに集中するふりをしていた。


 そういう、意味のない会話も気晴らしになったらしく、


「ふぅ。。」と、ひかりは軽くため息をつき、


 再び前方に視線を戻して、真剣な目をしていた。


 。


 そういう穏やかな時間が過ぎていき、やっとアパートに着いたときには、

 ひかりは心の中で「やっと着いたぁ。」と、ほっと安堵の声をあげた。


 車をアパートの駐車場に止めて、荷物を持って部屋に向かうと、

 玄関先でメイクをした亮平の母親が、

 これから仕事に向かおうとしているところだった。


「お帰り!本当にありがとうね、ひかりちゃん。」

「いいえ。私は楽しかったので。。。」「亮平も楽しかった?」


 母親は、にこやかに言いながら亮平を抱きしめていた。


「うん、めっちゃ楽しかった!」亮平は母親に満面の笑みを向けた。


「よかった。それじゃ、私はもう行かなきゃいけないから、

 ご飯は自分でね。お母さん、仕事頑張ってくるからね。亮平。」


 そう言うと、急いで仕事へと向かっていった。


 その背中を見送りながら、ひかりはふと亮平のことが気になった。


「亮平、今晩一人でご飯を食べるの?」

 声には出していないが、彼女の視線や仕草で何かを感じ取ったのか、


 亮平は少し気まずそうに顔を背けて、

「まあ、いつもそうだし、平気だよ。」と肩をすくめた。


 その仕草に、ひかりの胸に小さな引っかかりが残っていた。


 亮平はまだ小学生で、

 一人でご飯を食べる姿は、どこかとても寂しそうに思えたらしく、


「ねえ、亮平。もしよかったら、今夜うちでご飯食べていかない?

 一人で食べるより、二人で食べた方が美味しいでしょ?」


 ひかりは優しく微笑んで言葉にしていた。


「ほんと?お姉ちゃんと一緒に食べる!」


 亮平は目を輝かせ、嬉しそうに答えた。


「じゃあ決まりね。荷物を片付けたら、うちにおいで。」


 そう言って、二人はそれぞれの部屋に戻った。


 。


 夜が更け、二人は静かな部屋で向かい合って食卓を囲んでいた。


 ひかりは、簡単に作ったパスタとサラダをテーブルに並べ、

 亮平は「いただきます!」と元気に手を合わせて食べ始めた。


「うまい!お姉ちゃん、料理上手だね!」


 と、亮平がパスタを口いっぱいに頬張りながら無邪気に笑う。


 その様子にひかりは少し照れながらも、


「ありがとう。でもそんなに褒めないでよ、恥ずかしいから。」


 と、笑顔で応えていた。


 亮平の笑顔を見ていると、ひかりは日常の疲れや仕事のストレスが、

 この一瞬だけどこかへ消え去っていくように感じていた。


 食事中、亮平は今日の海での出来事を楽しそうに話し続けた。


「お姉ちゃんが浮き輪で遊んでるの、面白かった!」と言って、


 思い出し笑いをする亮平に、ひかりもつられて笑っていた。


 。


 楽しい食事が終わり、亮平がシャワーの時と同じように、


「お姉ちゃんと、一緒にお風呂に入りたい!」


 と、無邪気に言い出してきた。


「えぇ!。。また、一緒に?」


 と、ひかりは一瞬戸惑ったが、亮平のキラキラした目に逆らえなかった。


 ひかりは少し嬉しそうな顔で「しょうがないなぁあ。」と言い、

 少し苦笑いしながらも、走り出した亮平について行った。


 二人で入るのが嬉しかったのだろう、亮平は服を乱暴に脱ぎ捨て、

 そんな彼の姿を見ながら、ひかりも一息ついてから服を全て脱ぎ、

 狭いバスルームに入っていった。


「お姉ちゃん、身体を洗ってあげるよ!」と亮平は張り切って言い、

 タオルを手に取った。


「ありがとう。」ひかりは疲れた表情を少し緩め、優しい笑顔を返した。


 二人の距離が一段と近く感じられ、

 ひかりの心には、何故か穏やかな安心感が広がっていった。


 お風呂から上がり、亮平はすぐに彼女のシングルベッドに飛び込んだ。


「お姉ちゃん、一緒に寝よう!」と目を輝かせながら言う亮平に、

「フウゥゥゥ。またなのぉお?」

 ひかりは少しため息をつきながらも、寄り添うように横になった。


 狭いベッドに二人で寝るのは窮屈だったが、

 亮平は「お姉ちゃんと、一緒に寝るのがいいんだ。」と笑っていた。


「もぉ。今日だけ特別だからね。」ひかりも嬉しそうに笑い返していた。


 亮平が寝息を立て始めた頃、ひかりも目をつぶり、

 二人の心地いい寝息が、一人ぼっちの寂しい部屋に流れていた。



 お風呂

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