目覚め
ファミレスを出た浅見ひかりは、
背負っていた亮平を、フルフラットにした車内にそっと寝かせていた。
「私って?」亮平が心地よく寝ている姿を見ながら呟いていた。
気持ちよく寝ている亮平を見ながら、
車内が涼しくなったところでエンジンを切ると、静寂が広がっていた。
もちろん、外は蒸し暑い真夏の夜で、
湿気が肌にまとわりついたような気がしたが、
彼女は疲れていたらしく、すぐに目を閉じていた。
。
どれくらい時間が経ったのか、ひかりはまだ寝付けず、
何度も寝返りを打ちながら横になり、額に手を当てていた。
「フゥ、やっぱり暑いなぁ」と、手のひらにうっすらと汗を感じたその時、
ふと誰かに見られているような気配を感じた。
もちろん、駐車場には誰もいないし、
遠くの街灯がぼんやりと照らすだけの、静かな夜だった。
「フウフウ。。アツイアツイ。。」
まるで夢の中にいるかのように、咲良の声が耳に蘇る。
「亮平をよろしくね。ひかりちゃんが大好きらしいのよ。」
ひかりは、眠れない意味に気づき、仰向きになって目を閉じた。
亮平が自分を女として好きなのか、
ただ母親の代わりとして寂しさを紛らわしているだけなのか、
その違いが分からなかった。
だが、亮平が甘えてくれるたびに、
自分の中の孤独が、少しずつ癒されていくのを感じていた。
「亮平は、ひかりが好きでご飯来たよ。」
ボブとの食事中に、彼もそう言っていた。
こんなに年が離れた自分をどうして好きになれるのか、分からなかった。
ボブのように気持ちをぶつけてくれれば、判断できるのだろうか?
それとも自分自身、恋愛について何も分かっていないのかも?
「ひかちゃん、男ってのは年は関係ないんだよ。」
けんちゃんに撮影されている時も、そんなことを言われたっけ。
映画の主人公みたいな大げさなことを言われても、現実味がなかった。
だが今は、彼らが何を言いたかったのか、少しだけ理解できる気がした。
「いいって。。」「イキオイよ。。」「自分の気持を。。」
激しい熱にうなされながら、
三人の笑い声が頭の中をぐるぐる回り、その声はどんどん大きくなり、
やがて身体の奥で、何かが爆発するかのような熱がこみあがってきた。
そして突然、視界が真っ白に閃き、
「イッ。。」
その衝撃に驚いたひかりが目を開けると、
車内に街灯の薄明かりが差し込んでいるだけで、
辺りは静まり返っていた。
「ひかり?」「亮平?」
しかし、びっくりしたような亮平の顔が目の前にあり、
彼もまた、ひかりの表情に何かを感じ取ったようだった。
「おいで、亮平。。」「ひかり。。」
車内の狭さが、二人の距離をさらに縮めていた。
エンジンを切ったままの車内は、蒸し暑さを閉じ込めた箱のように、
二人の息遣いでさらに熱を帯びていく。
波の音が遠くにかすかに響き、車の外では誰もいない静かな夜だった。
ひかりはシートに沈み込みながら、目の前にいる亮平の顔を見つめると、
彼の瞳は真剣で、普段のあどけない表情とは違った顔をしていた。
ひかりは少しだけためらったが、彼の手が自分の頬に触れた瞬間、
その戸惑いは一瞬で消えていた。
「ひかり。。」亮平の小さな声が囁くように響く。
ひかりは彼の名前を呼び返すことなく、その手を取った。
そして、二人はゆっくりと近づき、お互いの身体が触れ合うと、
体温が重なり合い、汗がじわじわと滲んでいた。
触れるだけで我慢できなくなった彼の手が、
ひかりの身体を撫でるたびに、彼女の心は微かに震えていた。
亮平の幼さが、その動きに残っているのが分かるが、
それでも、彼の気持ちが痛いほどひかりに伝わってきた。
「大丈夫。」ひかりが優しく囁くと、
亮平は緊張をほどくように、深く息をつき二人は唇を重ね、
車内の空気はますます熱くなっていき、
彼の指先がひかりの髪を梳き、ゆっくりと彼女の体を辿っていく。
波の音が遠くから響き、車内にこもる熱は、
二人の動きに合わせて、さらに濃密なものになっていった。
ひかりの胸が激しく上下し、彼女の手が亮平の背中に回る。
二人の呼吸が重なり合い、ひかりはもう何も考えられなくなっていた。
「ひかり。。好きだよ。。」亮平が途切れ途切れに囁く。
彼の言葉は、ただの子供の告白ではなく、大人びたものに聞こえた。
ひかりは、その言葉に何かを感じつつも、
ただ彼の気持ちを受け入れるだけだった。
二人は互いに求め合い、熱を分かち合いながら何度も身体を重ね、
そのたびに車内に漂う甘く切ない香りが濃くなり、
彼らの想いを永遠に刻んでいくようだった。
外の波の音は、二人を優しく包み込むように、
ゆっくりと静かに響き続けていた。
目覚め




