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クロスオーバー  作者: 連鎖
あーちゃん(夏の海)
27/98

ファミレス

 車内で休憩しているうちに、周囲の車はすっかり消え、


「うぅん。。。?」


 駐車場には街灯の明かりだけが、ぽつりぽつりと光る夜が訪れていた。


 浅見ひかりは、車内に差し込む微かな光で周りを確認すると、

「あちゃー。。。」と心の中で叫んでいた。


 彼女も休憩前の記憶はあるのだが、亮平の顔が自分の胸に埋もれて、

 苦しそうに寝息を立てているのを見て、焦りが一気にこみ上げてきた。


「はぁ。またやっちゃった?またなのねぇ。ハァ。亮平ゴメンナサイぃ。」


 そうやって心の中でつぶやいているのだが、

 いつもお酒を飲んだ後には、よく見る光景だったらしく、

 急いで腕を緩めると、亮平は小さく寝返りを打って離れていった。


「暑いわねぇ。。ふぅ。ごめんね。亮平。」とため息をつき、

 ひかりは申し訳なさそうに、彼の背中を見つめていた。


 流石にエンジンを止めていた車内はすっかり蒸し暑くなって、

 全身が汗のような物で、べたついていることに気づくと、

 まだ酔いが残っているのか、ひかりはふと笑みを浮かべ、


「大丈夫、大丈夫、夜だし、誰も見てないよねぇ。。アハハハハ。」


 そんな風に自分に言い聞かせながら、濡れた全身をタオルで拭き、

 汚れた下着は諦めて、Tシャツとホットパンツだけを身に纏っていた。


「リョウちゃん、起きてってば!」ひかりが軽く亮平を揺すっていた。


「お姉ちゃん。。何?」とまだ寝ぼけ眼で答える彼に、

「近くにファミレスあるの。閉まる前に行かなきゃ!」と急かしていた。


「帰るんじゃないの?」亮平が不安そうに尋ねると、


 ひかりはにっこり笑って、


「車中泊よ、言ったでしょ?

 明日、海の家が開いたらシャワーを浴びて帰るって!

 マサカ覚えていないの?」


 亮平はすっかり聞き流していたようだが、

 まだ酔っているような感じがするひかりに反論することもできず、

 渋々起き上がっていた。


「ごめんね、お姉ちゃん。。」と謝る亮平に、


 ひかりは楽しげに笑いながら、


「アハハ、いいのよ、リョウちゃん。何も気にしていないよ。

 お姉ちゃんが、全部許してあげるからね! チュッ。」


 と頬に軽くキスをしていた。


 旅行中のハイテンションになったひかりに戸惑いながらも、

 亮平は素直に「ありがとう、お姉ちゃん。」とお礼を言っていた。


「これからも何でも許してあげるから、何でも言ってね。」「アレ?」

「気づいちゃった?ちょっと目が痛くてね。」「んっ。うん。」


 眼鏡姿のひかりを、久しぶりに見たような気がしたのか、

 亮平は何度も彼女の全身を見続けていた。


 そうやって見てくる亮平の視線が気になったらしく、


「グイッ。早くご飯に行こう。リョウチャン。」「ハイ。」


 嬉しそうに笑っているひかりが、手を強く引いてきたので、

 顔を真赤にしている亮平が、ファミレスに向かって歩き出していた。


 外に出ると、夜の風が心地よく感じられ、

 ひかりは亮平の小さな手を引きながら、

 ファミレスに向かって歩き出していた。


 しかし、昼間にたっぷり遊んで疲れた亮平は、

 車の中で寝たという疲れや、暗い夜道を歩いている不安感で、


「痛っ。。」「いいのよ。おいで。」


 とうとう彼の体が悲鳴を上げたらしく、

 それに気づいたひかりは、亮平を背負っていた。


「ごめんね。。お姉ちゃん。。」亮平は申し訳なさそうに言ったが、


 ひかりは、優しく微笑んで答えた。


「いいのよ。大きくなったら、今度はお姉ちゃんを助けてね。」


 背中越しに感じる亮平の体温が、ひかりの心に温かく響いていた。


 亮平は少し恥ずかしそうに「でも。ひかり、おんぶは、恥ずかしいよ。」

 とつぶやいたが、


 ひかりは楽しそうに笑いながら、


「リョウちゃん、もっと甘えていいのよ!」と、しっかり背負っていた。


 。


 ようやく、ファミレスの明かりが見えたときには、

 流石にひかりでもほっとしたらしく、


「ハァ。ハアハア。ふぅう。遠かったぁ。アハハハハ。」


 そう思っていたが、亮平に気づかれないように彼をユックリ降ろすと、

 その扉を開けていた。


 明るい店内は、土曜の夜ということもあって賑わっていたが、

 若い女の子と小さな子供という、目立つ二人を気にする人は少なかった。


「コチラのテーブルへどうぞ。ご注文が決まりましたら、

 ボタンを押してくださいね。」と店員に案内され、席に着いていた。


「お姉ちゃん、何でも食べていいんだよね?」

 亮平が嬉しそうに聞いてきた。


「いいけど、ちゃんと考えなさいよ!」

 と、少しお姉さんらしく答えるひかり。


「じゃあ、チーズインハンバーグとドリンクバーそれとデザート。」と、

 一生懸命メニューを見ている亮平を見ているだけで、

 ひかりの心は穏やかになっていた。


「お姉ちゃんは?」と亮平が気遣うように尋ねてきた。


 その言葉に嬉しくなり「ペスカトーレにビール。」


「お姉ちゃんドリンクバーは?」


「じゃあ、ドリンクバーもつけようかしらね。」と、自然に答えていた。


 ボタンを押して、けたたましいチャイム音を聞いたあとは、

 呼んだ店員に注文をすると、


「コッチだよ。お姉ちゃん。」亮平がスグにひかりの手を取ってくるので、

「行くから。ちょっとリョウヘイ。」と、慌てて彼について行った。


「こうなんだよ。知ってる?」「こうやるんだぁ。リョウちゃん。」


 嬉しそうに大声で説明してくる亮平を、見ているだけで嬉しくなり、

 興味深そうに自分の全身を見てくる視線など、少しも気にならなかった。


 食事を楽しんだ後は、二人ともトイレを済ませてから帰ったが、

 再び帰り道で亮平を背負うことになっていた。


 もちろん、最初は「帰りは頑張るよ!」と亮平は真剣な顔で言っていた。


「本当?」とひかりがイタズラっぽく聞き返すと、

 亮平は自信満々に「今度は大丈夫だよ!」と答えていた。


 しかし、歩き始めてしばらくすると、

 亮平は徐々に眠くなったらしく、フラフラと目を閉じて歩いていたので、

 ひかりが彼を背負ってあげていた。


 もちろん、ひかりに背負って貰えて安心した亮平はすぐに寝始めて、

 ダラリと伸びた手が、彼女の肩から前へと垂れ下がっていた。


「やっぱり無理だった。」と、ひかりは心の中で苦笑いを浮かべながら、

 重くなった亮平の体を嬉しく感じていると、

 彼は夢を見ているらしく、「お母さん。むにゃむにゃ。お母さん。」

 と、甘えるように寝言をつぶやいていた。


 亮平が母親を求める寝言を耳にして、ひかりは小さく微笑み、

 彼の体温を感じながら、しっかりと支えて静かな夜道を歩き続けていた。



 ファミレス

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