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青空の向日葵  作者: チュラ
8/30

3回目のデート

 月日は流れ3回目のデートの前日になった。2人は変わらず仲良くLINEをしていた。しかし葵の方が忙しいようで2人で外食をする機会がなかなか取れなくてラーメンを食べた時以降初めて会うのが3回めのデートの日となっていた。

 2人はこのデートを特別なデートと思っている。両者両思いの中行くデートはどんな展開が待っているだろう。両者緊張とワクワクが交互に押し寄せていた


「明日やっと会えるね。ずっと会いたかった。」と葵がラインをする。この言葉の中から嬉しさが滲み出している。

「僕もずっと会いたかったよ。しばらく会えなかったから本当に楽しみ」と太陽もご機嫌にラインを送る。

「ずっと会いたくて会いたいが暴走してた(笑)もう本当に会いたかったよ」

「会いたいって何回言うんよ。まあ嬉しいけど」

「何回でも言うよ。だってそれだけ我慢していたんだもん。爆発しそう。」


 葵も太陽も会いたいけど会えない期間が続いてお互いの感情が爆発していく。会いたいのに会えない。それがどんなに寂しくて辛いことなんだと改めて認識された。2人のLINEが世に出回ったら仲良しカップルだと思われるが2人はまだ付き合ってない。けれど明日になればカップルになっている。それは神様だけが知っていることだ。


「明日に備えてそろそろ寝るね。」と太陽はLINEで呟いてベットに潜り込んだ。

「うん。私も寝るね。おやすみ。」と葵も返信してお互い睡眠に入った。

 夜の静けさが2人のLINEを邪魔させないようにしているみたいに静寂に包まれた。


 そして待ちに待ったデートの日。葵と太陽はいつもの待ち合わせ場所の公園に向かっていた。

 葵は今日着て行く服を昨日の夜必死に考えていった。特別な日にしたい。そんな思いから服にも気合が入った。

 悩んだ末水色っぽいワンピースにした。ヒマワリ畑にも会う綺麗な水色のワンピース。これで行こうと決めた。

 太陽くんは喜んでくれると言う自信もあった。ラーメン屋に行くときに着てったスカートをすごく喜んでくれたから今回のワンピースも喜んでくれると思っていた。そんな考えをしていると公園についた。


 一方太陽の方も服も少しおしゃれな服装をして普段あまりつけないワックスもつけた。この日のために前日に髪の毛も切りに行った。こちらも準備万端。太陽の覚悟は相当なものだった。絶対に成功してやると思い込みながら車を運転し公園に向かった。


 2人はほぼ同時に公園に着いた。いつものごとく集合時間より10分早く両者公園に着いた。

「太陽くーん。」と葵の元気な声が公園に響く。それに気づいた太陽は思いっきり手を振った。


「葵さんやっと会えたね。今日の服装とっても似合っててかわいいよ。」と最初から太陽はエンジン全開で言った。

「嬉しい。昨日ずっと考えていたんだよ。太陽くんが喜んでくれてよかった。」葵もエンジン全開だった。

 両者とも久しぶりに出会えた”好きな人”にテンションが上がりまくっていた。


「さあ最初の目的地の武田神社に行こう。」と太陽が言って2人は車に乗り込んだ。車内では葵がつけている香水の匂いと幸せな空気感が漂っていた。

「武田神社って信玄公を祀っっているんだよね?やっぱ信玄公って山梨の英雄だよね。」

「そうだよ。やっぱ信玄公は山梨の英雄だし戦国時代に山梨を発展させてくれた偉大な人よね。」

「本当にそうだよね。そんな偉人が祀られている神社とか楽しみでしょうがない。」と2人は武田神社についてを語り合っていた。


 戦国最強を言われる武田信玄公は山梨では英雄的な扱いであり4月には甲府のまちを甲冑を着た人が練り歩く信玄公祭りと言うものがあるくらい山梨県民は武田信玄公を愛している。山梨県民は敬意を込めて信玄公と呼んでいる。武田神社は大正時代に県民の声によって建てられた神社であり信玄公が住んでいた躑躅ヶ崎館つつじがさきやかたの跡地に建てられている。


 そんな会話をしていると武田神社についた。比較的早い時間なので人もまばらだった。

「着いたよ。」と太陽は言って車から降りた。葵も「ありがとう。」と言って太陽に続いた。

 掘にかかった橋を渡ると立派な狛犬と大きな鳥居が2人を待っているかのように出迎えてくれた。

「すごい大きな狛犬と鳥居。この階段を上ると社殿が見えてくるんよね。」葵は感動を受けていた。葵自身武田神社には来たことがあったけど実に数年ぶりなので新鮮味を感じていた。しかも好きな人とこれたと言う嬉しさもあり見るもの全部が輝いて見えた。

 太陽も同じことを思っていた。普段からいっているのに今日は全てが新しく見えた。好きな人とくるとこんなにも違って見えるのか。と心の中で思っていた。


 階段を登り鳥居をくぐると社殿が見えて来た。社殿は信玄公の勇ましさを表すかのように堂々と立っていた。全ての人の願いを受け入れてくれそうな感覚がする。途中にある手水舎(てみずしゃ/ちょうずや)で手を清めて社殿の前に立った。

「いつもパワーを感じるけど今日はなんかすごくパワーを感じるな。」と太陽がいう。太陽は神社とかに行くとパワーとかを感じやすい体質だ。そのおかげで今日の武田神社の強いパワーを感じ取っていた。

「太陽くんパワーとか感じるんだよね。わたしも普段感じないのになんか感じるものがあるよ。」と葵もパワーを感じていた。

 好きな人と行くことによる幸せのおかげだろうか。それとも信玄公が2人にパワーをくれているのか。もしかしたらその両方かもしれない。真相はわからないが今日は特別な武田神社だった。


 2人はお賽銭をして二礼拍手一礼をしてお参りをした。

「いつもありがとうございます。どうか今日の告白がうまく言って葵さんと付き合えますように。」

「いつもありがとうございます。どうか今日太陽くんと結ばれますように。」

 声には出てないが2人は同じ内容をお願いした。きっと信玄公にも届いて願いを叶えてくれるだろう。


 お参りを済ませた2人は来た道を戻りすぐ近くにあるお土産やさんを見た。そこには山梨の有名なお菓子の信玄餅や信玄公に関係するいろんなものが売っていた。


 2人は色々みてわまり奥にあった甲州印伝という鹿皮に漆の文様が特徴な甲州印伝が売ってるところに着いた。少しだけそこを見ることにした。

「この財布すごく可愛い。」とトンボ柄の赤い財布を指差して言った。

「確かに可愛いよね。印伝って地味そうに見えるけど可愛いやつもたくさんあっておしゃれにもなるんよね。」と太陽も共感した。

「こういう財布欲しくなるよね。今度買おうかな。」と葵が小声でいう。それを聞いてた太陽も「僕も買おうかな。」と呟いた。


 売り場を出て外に出るとソフトクリームが売っていた。普通のバニラソフトに加えて巨峰ソフトというやつも売っていた。

「わたしソフトクリーム食べたい。」と子供のように葵ははしゃいでいた。

「一緒に食べようか。」と太陽も言って2人は巨峰ソフトを頼んだ。すぐに巨峰ソフトが出て来た。ほのかに巨峰の香りが漂う。

 2人は近くにあったベンチに座り巨峰ソフトを食べた。一口食べると口の中に巨峰の香りと味が広がるとともにソフトクリーム自体の甘さもうまく交わりあっていく。

「すごいねこれ。まるで本当の巨峰を食べてるみたい。と葵は笑顔でいう。」

「本当にそうだよね。夏の時期にぴったりだしこれ幾つでも食べられるよ。」と太陽も葵を見つめながら言った。

 アイスを食べている葵は子供っぽさもあるがその中に美しさもあった。葵は本当に何にでもあって可愛い。こんな子にこのあと告白するんだと思うと太陽の胸のドキドキが高鳴る。

 いつ方葵も太陽に見られながらアイスを食べてることにドキドキしていた。太陽の顔が輝いて見える。まるで”太陽”が真横で私を照らしているかのように。

 アイスを食べながら2人の想いはどんどん強くなる。


 アイスを食べた2人は車に乗り込み次の目的地の金櫻神社に向かった。

 金櫻神社までの道は途中山道を走るので太陽は慎重に車を走らせた。

 そんな山道でも葵は楽しそうだった。

「車酔いとかになってない?大丈夫?。」と太陽は葵に声をかける。

「ううん。大丈夫。太陽くんの運転なら絶対に酔わないもん。それだけ太陽くんは運転うまいもん。」と心配とは裏腹に元気な声が返ってきた。本当に信頼されているんだなと思いながら太陽は引き続き車を走らせた。


 車を運転する太陽を見ていた葵は実は緊張していた。いつ好きというのを伝えようかずっと考えていた。多分ひまわり畑でその話になると思っているがそこまでに私が先走らないか不安も覚えていた。せっかく思いを伝えるならちゃんと雰囲気を作って言いたかった。こんなに人に対してドキドキしたのは何回目だろう。いや初めての感覚だった。葵は心の中でその機会を楽しみに待っていた。


 しばらくすると昇仙峡しょうせんきょうという景勝地の近くを通った。山道の影から大きな一枚岩みたいな風景が目に入り込んできた。

「あの岩みたいなのすごいね。天狗みたい。」と葵は指を指していう。

「あれね。天狗岩って言って天狗の形に見えるからそう呼ばれたんだよ。その対岸に見えるのが覚円峰かくえんぽうって呼ばれるところだよ。」と太陽が葵に教える。

「すごいよね。自然って人間の力では作れないものを長い年月かけて作るんだもん。私たちが生きているよりもずっと長く美しさを見せてくれてる。そう思うと人間って一瞬だよね。」といかにも悟った人がいいそうなセリフを言った。

「何か悟りでも開いたの?」と太陽は笑いながら返信する。

「そう。ちょっとかっこつけてみたの。」

「なるほどね。でもいいこと言ってるなと思ったよ。」

「本当にそう思ったの?」

「思ったさ。葵さんかっこよさも兼ね備えてるからね。」

 葵の顔が少し赤くなった。ネタで言ったつもりがちゃんと真面目に答えられて少し恥ずかしかった。けどこういうところも太陽の好きなところだった。


 景色を楽しみながら山道をどんどん進む。しばらくすると金櫻神社この先2kmという看板が見えてきた。

「もうすぐつくよ。」

「楽しみ。」

 2人のテンションがまた上がった。好きな人と神社を回るのがこんなにも楽しいことなのかと2人は思った。


 そして金櫻神社についた。駐車場に車を止め2人は車から降りた。夏なのに標高が高いせいか涼しかった。

「また武田神社とは違った雰囲気だね。山の中にある神社って感じがまた神聖な空気出してるね。」と葵があたりを見回しながらいう。

「そうなんよね。今日は人もほぼいないしそれが余計に神秘さを生み出してると思う。」と太陽は体を伸ばしながら言った。

 その様子を見ていた葵は「運転で疲れてない?大丈夫?」と太陽を心配した。

「全然大丈夫だよ。バリバリ元気。ありがとうね」と太陽の元気な返事が返ってきた。


 2人は鳥居をくぐり社殿へと向かった。

「赤が鮮やかで綺麗さもあるけど堂々とした雰囲気がある。」と葵は社殿の圧倒さに驚いていた。先ほどの武田神社とは違い赤の鮮やかな色のなかに山の中に立っているという堂々たる姿に圧倒された。

「ここも好きな神社の一つなんだよね。祀られている神様も好きだし。」

「どんな神様が祀られているの?」

「ここはねスクナビコナといって大国主と国づくりをした小さい神様と大己貴命おおなむちのみことという大国主命の別名の神様と須佐之男尊すさのおのみこと、日本武尊、櫛名田比売くしなだひめのみことを祀っているんよ。」と祀られている神様の名前を挙げた。

「全部が出雲に関係している神様なんだね。」

「よくわかったね。」

「うん。せっかく神社に行くから日本神話を読んで見たの。その方が神様にとっても敬意を払えるしその方が神社巡ってて楽しくなるじゃん」

 太陽は葵の勉強熱心なところに感心していた。

「ならお参りしよっか。」と太陽が言って社殿の前に立ちお参りをした。武田神社で言ったことと同じ言葉を金櫻神社でもお願いした。


 お参りした後2人は社務所に立ち寄った。そこにはお守りやお札、水晶のブレスレットなどがおかれていた。

「このブレスレット綺麗だね。水晶でできているんだね。」と葵は目を輝かせていた。

 金櫻神社は水晶発祥の神社としても有名で昔は金櫻神社の地で水晶を加工していた。昇仙峡自体水晶の産地であり今は掘られていないが昔は水晶がよく掘られていた。

「水晶ってお守りとしても効果あるし空気の浄化の効果もあるんだって。」と太陽が水晶について少し語る。それを葵は水晶のブレスネットを見ながら聞いてた。

「また欲しいものが増えちゃった。」と葵は笑顔で答える。

 葵がつけたらきっと似合うんだろうなと思いながら太陽は葵を見ていた。

 しばらくお守りなどを見て2人は駐車場で車に乗り込んだ。


 次に行く夫婦木神社は金櫻神社からするのところにある。車で来た道を降って2分くらいしたところに駐車場がある。そこに車を止めて夫婦木神社に向かった。

 階段を登って行くと小さな社があった。小さな社だが優しげな雰囲気が漂っていた。

「ここが夫婦木神社か。初めてきた場所だけど静かでいところだね。」

「本当だね。恋愛のパワーが本当にありそう。」

 2人は神社から出ている恋愛のパワーを感じ取っていた。暖かくほと他人を包み込むようなパワーがみなぎっていた。

 2人はお参りをして社務所を見ていた。すると中にいた女性から「ここは初めて?中の御神木も見て行くかい。」と聞かれたので「お願いします。」と答えて中のご神木を見に言った。

 社の裏に案内され奥にあった社の中に案内された。そこには大きな木があり木の下の部分が空洞になっておりそこには上からもう一本の木の幹が伸びていて男性の象徴みたいだった。

「すごい。立派なご神木だね。」と葵はその御神木を眺めながら言った。


 太陽は男性の象徴の御神木を見て若干気まずかったが葵はそんなの気にせず御神木を眺めていた。

「ここの前で二礼二拍手一礼をしてお願い事をして見て下さい。」と案内役の女性の人に言われ2人はお参りしてお願い事をした。

「太陽くん/葵さんと付き合えますように。」

 2人のお願い事はここでも完全に一致した。その願いは御神木にもきっと届いているだろう。2人の頭がほんわかする。それと同時にこの願いは叶うと2人は確信していた。御神木は2人の様子を優しそうに見守っていた。


 案内役の女性に由来など説明されて2人は御神木の周りを眺めていた。御神木の後ろには願いがかかったお礼に奉納される千羽鶴や絵馬がずらりと並んでいた。多くの人の願いが叶った証拠にもなっている。ここにきたから絶対に大丈夫。2人の自信も上がって言った。


 御神木を見終えた2人は社務所でお守りをいただいた。(神社ではお守りを買うことをいただくやお受けするという)いただいたものは恋愛成就のお守り。2人揃って同じのをいただいた。それをカバンにつけて再度社にお参りして車に戻った。

 だんだんと告白の時間が迫ってくる。2人は共に緊張が高まってった。


 昇仙峡を降り甲府盆地に帰ってきた2人は山梨の名物であるほうとうを食べにほうとう屋に入っていた。夏の暑い時期であったが2人は揃ってほうとうが食べたいと言い。ほうとうを食べることにした。

「ほうとうってたまに食べたくなるんよね。やっぱ山梨県民だかならかな。」と太陽がほうとうをすすりながらいう。

「やっぱそうだよね。山梨の血が騒ぐよ。」と葵も冗談なのか本当なのか微妙に分からないことを言った。

「山梨の血が騒ぐのは大げさだけどわからなくもないな。」

「でしょ。ほうとうを食べないなんてう山梨県民じゃないよ。」

「それは言い過ぎでしょ。けど俺もそれだけ好きなんよねほうとう」

「でしょ。ほうとう最高。」と2人はほうとうについて熱く語り合っていた。


 ほうとうの話題でお互い緊張をほぐそうとしていた。けど緊張はなかなか解けない。むしろほうとうを食べ行くにつれ緊張が高まる。葵と太陽の動作に落ち着きがなくなってきた。この次に人生最大とも言える勇気を出すことになるのだから。


 ほうとうを食べ終えた2人は車に乗り込みいよいよヒマワリ畑に向かった。車の中での会話はなぜか進まない。いつもならポンポン弾む会話が今はすぐに止まってしまう。2人の手は手汗によって濡れて行く。ゆっくり呼吸を整えようとしても心は整わない。両者の考えていることは同じなのになぜか不安も少し感じていた。


 重い口を開けるように葵が話しかけた。

「久しぶりのヒマワリ畑だね。また綺麗な空間広がっているかな。」

 葵の声は少し震えていた。緊張がダイレクトに伝わってくる。

「う、うん。そうだと思う。きっと綺麗だよ。」

 太陽の返答もぎこちない。こちらも緊張でろれつが回らない。いつもならすんなり話せるのにどうしてこんなにも話せなくなるのか。本当にうまく告白できるのか。急に不安が太陽を襲う。

 お互い不安と緊張が混じり合い脈がどんどん早くなる。相手に聞こえていないか不安になるほどに。車内が2人の胸の音を必死にかき消している。もうすぐヒマワリ畑に着く。ついに告白の時がくる。

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