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青空の向日葵  作者: チュラ
29/30

前を向こう。自身のために。

 それから何日がたっただろう。何日たったかもわからない太陽はひたすらベッドに寝たままだった。携帯も見たくない。外にも行きたくない。ただ単に時が過ぎていくのを待っていた。けれどいくら時が過ぎようとも心は空っぽのままだった。部屋の静けさと時計の秒針の音しか聞こえてこない。


 あれほどまでに幸せな空間だった家は今は絶望に包まれていた。葵がいない。その現実を受け入れられないでいた。葵と会話をした日々、一緒に出かけたこと。葵の笑った顔、照れた顔、困った顔、泣いている顔、嬉しそうな顔。もう二度と見ることはできない。どれだけ待っても見ることはできない。幸せが突然壊された。


 LINEの通知がくるが見る気も起きない。もうこのまま一生この状態でいたい。何もしたくない。体を起こす気力もない。ただぼーっとしていたい。ただそれだけだ。


 けれど頭のどこかでこのままではダメだと思う時もある。葵は幸せのために行動してきた。自分の心の闇と戦って自分といる選択をしてくれた。けれどそのせいで葵は死んでしまった。自分が葵を間接的に殺してしまった。結局マイナスの発想に至る。

「このまま生きていても意味がないな。」

 そう思うようになってきた。この状態がいつまで続くのだろう。一生続くのであれば一層の事人生を終わらせよう。そんなことを思っていた。


 太陽と連絡が取れない日がずっと続いた。ツッキーも太陽の事が心配でたまらなかった。精神科医をしているので太陽の気持ちは十分にわかった。無理に外に引っ張り出すのは良くないとわかっていた。けど親友としてこのまま太陽がズルズル葵の詩を引っ張っていくのはダメだと思っていた。どうすればいいのかツッキーなりに考えた。


 誰かがきっかけを作ってあげれば太陽は動くかもしれない。けどそうするかは太陽次第。きっかけを作ることはできるが最終的に行動するのはその人次第。その人がそこから脱出しようとしなければいつまでたっても脱出できない。

 そう思っていたが親友としてなんとしてでも太陽をいまの状況から脱出させてあげたい。


 そんなことを考えていると太陽の会社の上司から連絡がきた。

「お疲れ様です。平野くんにはしばらく休んでいいと言いましたがずっと音信不通なので月の先生なら容態とか知っていると思い連絡させてもらいました。」とメールに文章が書かれていた。

 ツッキーも太陽よ状態がわからなかったので素直にそのことをメールした。

 そしたらすぐに返信がきた。

「今度社長と先生たちとで平野くんのことで面談をしたいと思っていますが都合のよろしい日とかありますか。」

 上司の提案にツッキーも賛同していた。このままではダメだとみんな思っていた。ツッキーも渡辺先生も上司も社長も。このことを渡辺先生にも伝えるとすぐに許可をくれた。そして後日面談をすることになった。


 後日ツッキーと渡辺先生は太陽の会社にきていた。太陽について話し合う日だった。

 4人はいつものようにお移設に行き席に着いた。

「本日はお忙しい中ありがとうございます。」と部長が挨拶をする。3人もそれに続いて挨拶をする。

 そして太陽についての話し合いが始まった。

「太陽なんですけど私との連絡も絶っている状態で正直どういう状況かわかっていないです。けどこのままではいけないと思っています。こちらからなんらかの行動を起こさないとこのままでは太陽自身にとってもダメだと思っています。」

 3人はその言葉を聞いて考えた。

「けど無理に引っ張り出すのもダメだと思います。かえって逆効果になる可能性もありますし。」と渡辺先生が意見を言った。


 確かにそうだと思う。しかし状況を変える何かを少しでもしないことには前に進まないと思う。」

 社長がみんなの意見を聞いて提案する。

 その後少しの沈黙があり上司が気になって点を質問した。

「葵さんのお葬式とかはどうなっていたんですか」

「お葬式は身内で済ませたそうです。誰も呼ばれず淡々としたらしいです。」と渡辺先生が言った。

 葵のお葬式は家族葬で行われ参列者もない状態で行われたらしい。

「お葬式って最後の別れの場の意味もあるし個人と最後に向き合う機会なのにそれもなかったとなるとなおさら平野くんは気持ちの整理がつかないだろうな。」と上司がいう。そう。葵の最後を見届けたのは渡辺先生とツッキーだけだった。それ以外の人は太陽も含め最後の別れもできないままだった。

「今更そこを嘆いてもしょうがない。平野くんをどうフォローするかが一番のポイントだ。」と社長が言った。余人はまたしばらく考え込んだ。


 しばらくしてツッキーが意見を言った。

「私は太陽と小さい時から親友でした。太陽と一番仲がいい自身があります。そこでなんですが私が太陽の家に直接行きたいように会ってきます。そこで太陽と向き合います。僕に任せてくれませんか。精神科医として、そして親友としてできることはあると思います。」

 みんなはツッキーの意見に納得した。確かにツッキーなら大丈夫とみんな確信していた。

「なら月野先生に任せるとします。よろしくお願いします。」

 と上司は深々と頭を下げた。社長もそれに続いた。

 今後の行動は決まった。ツッキーは責任と使命を感じ太陽のもとに行くことになった。


 太陽はずっとベッドの上にいた。食事もまともにとってなくて日に日に体重が減っているのが感じられた。けれどいまはそんなこともどうでもよくなっていた。ずっとこのままだった。

 そこにインターフォンが鳴った。正直出たくなかった。出るのも億劫だった。しかし身を粉にして出ることにした。

 ドアを開けるとそこにはツッキーがいた。

「太陽。久しぶり。」とツッキーは一言声をかけた。

「久しぶり。」と太陽はそれだけ言葉を交わした。

「太陽と話がしたい。」とツッキー入った。太陽もツッキーならいいかと思いツッキーを家の中に入れた。


「太陽。体調は話さなくてもわかるから大丈夫だ。俺もなんて言葉をかけていいかわからないのが正直なところだ。でもこのままでは太陽自身がダメになってしまうと思って来たんだ。」

「ありがとう。」

 太陽はツッキーの言葉にから返事をした。その言葉に魂がこもっていなかった。

「正直こんな未来は俺も想像していなかった。幸せが急に壊された。どうしていいのかわからない。俺も正直そうだ。」

 太陽はツッキーの話を黙って聞いていた。

「ここからの話は精神科医としてではなくて親友として話をする。精神科医として言ってはいけないことを言うかもしれない。けど太陽はこのままずっとこのままでいて欲しくない。だから言う。」

 ツッキーの目は本気の目をしていた。

「太陽。現実を受け入れなければいけない。確かにそれはきついことだが葵さんは自分の現実を受け入れて太陽と幸せになることを選んだんだ。そのため葵さん自身が行動した。だから太陽がこれだと葵さんも報われない。」

「そんなのわかってるよ。」

 太陽の大きな声が響いた。

「そんなの僕だってわかっているさ。わかっているよ。けどあおちゃんは僕と幸せになるという選択をしたから死んじゃった。僕が殺したんだ。」

「太陽それは違う。」

「違くない。現に現実そうなっているじゃないか。もしかしたらあおちゃんは死んでなかったかもしれない。俺が殺したんだ。俺が・・・だから俺もこのまま死ねば・・・」

 太陽が言い切る前にツッキーは太陽をつかんだ。

「いいか。絶対に死ぬなんて言うな。太陽は決して葵さんを殺してなんかいない。確かに葵さんは事故に遭ってしまった。それは事実だ。けどそれは太陽のせいじゃない。」

 ツッキーは思わず声を荒げる。このまま太陽も後を追ったら誰も報われない。その一心で声をあげた。

「じゃあなんであおちゃんは死んだの。神様はなんで残酷なことをしたの。なんで。」と太陽も声を荒げる。


 少し冷静になってツッキーが言う。

「それは俺にもわからない。多分神様もそんなの望んでいなかった。正直理不尽だと思う。葵さんは俺と渡辺先生がいる病院に運ばれて来たんだ。そこで渡辺先生は懸命に治療した。葵さんが運ばれて来たときはまだ息をしていた。葵さんは一生懸命生きようとしたんだよ。太陽が死ぬことは葵さんが生きようとしたことを無に帰すことと一緒なんだよ。これは太陽だから言うことだ。」

 太陽は少し考える。葵は最後まで生きようとした。ここで僕が死んだらその思いはどうなるのか考えた。

「ごめんツッキー。あおちゃんの気持ちまで考えてなかった。ただこの現実から逃げたかった。それだけだった。」

「それはわかる。逃げたいよな。けど前を向かないと。葵さんがそうやって前を向いて来たように太陽。お前も前を向かないと。」

 ツッキーの目は真っ赤だった。

「ねえツッキー。」とポツンと太陽がいう。

「どうした。」

「泣いてもいい?」

「ああ。思いっきり泣け。自分の感情に正直になれ。全て吐き出せ。」

 ツッキーがそういうのを待たずに太陽は泣いていた。男なのに大声で泣いた。声が枯れるくらい泣いた。

 ツッキーも目から涙が流れた。

 どのくらい時間が経ったんだだろう。太陽は大声で泣いていた。声も枯れていた。それをツッキーは全て受け入れて来た。


 そして太陽がこういう。

「あおちゃんが生きれなかった分まで生きる。そして幸せになる。その決意をあおちゃんに伝えたい。けどどこに行けば。」

 ツッキーは即答へこう答えた。

「ひまわり畑に行こう。葵さんはそこが大好きだったんだろ。あの事故がなければ二人で言っていた場所だ。そこで葵さんは待っているはずだ。」

 ひまわり畑。二人の思い出の場。そうだ。そこに行こう。

「ありがとう。ひまわり畑に行くよ。」

「そうしよう。」とツッキーは笑顔で言った。

 そう言って太陽はツッキーを見送った。一人の時間になった。自然tp体が動く気がする。

 ふと葵が使っていた机の引き出しを見る。そこには前にひまわり畑で買ったひまわりの種があった。そこにメモがあった。

「いつか陽くんと結婚して家を買ったら庭にこれを巻いてひまわり畑を作りたい。」

 太陽はその紙を握った。葵のその気持ちを確かに受け止めた。

 うん。ひまわり畑に行こう。


 夏の風が静かに吹いている。その風が太陽をひまわり畑に案内している気がした。二人の思い出の場所。ひまわり畑に行こう。そして葵に会いに行こう。そう思いひまわり畑に向かった。

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