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青空の向日葵  作者: チュラ
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葵の死

 葵を見送った後太陽は家でひまわり畑に行く準備をしていた。葵はきっと自分の意見を言って全てをぶつけてくる。そしてスッキリして帰ってくる。そう思っていた。いまの葵はとても強い。だから心配していなかった。ただ葵の帰りを待つだけだった。

 ひまわり畑で向日葵を見るのは今年に入って初めてだった。やっとひまわりの時期に入った。見るのがとても楽しみだった。そして今日は葵と初めてひまわりを見て1年の日。二人にとっては付き合った記念日よりも特別な日だった。


「あおちゃん早く帰ってこないかな。」と呟きながらベッドに寝転がる。早く葵とひまわり畑に行きたい。そんな思いが脳裏に溢れてくる。

 しばらくすると葵から一通のLINEが入ってきた。


「無事おわったよ。ひまわり畑にいこ。青空の向日葵。」


 無事に両親との会話が終わったんだと太陽はホッとしていた。葵はこの困難を乗り越えた。幸せの未来のために行動した。これからも二人で幸せを作って行こう。太陽はそう思っていた。


 葵が帰っているのを待っていると急な眠気に襲われた。太陽は葵が帰ってくる間寝ることにした。急な目向けに襲われるのは珍しいことだったがこの後の運転に支障をきたすのは困るので少しだけの仮眠をすることにした。


 その時にラインの通知音が鳴ったが眠気が勝って画面を見る余裕はなかった。


 何時間くらい経っただろうか。太陽が目覚めた。太陽は時計を見る。そして驚愕した。

「16時30分・・・」寝たのが昼前だったのでかなり寝てしまったのに驚いた。そして葵はどうしてるんだろうと家の中を見回す。しかし葵はいなかった。

「あおちゃん帰ってきてないの。けど帰ってきたら起こしてくれるはずだし。」

 葵が帰ってきていないことに太陽は疑問に思った。連絡がきて4時間以上経っているし帰ってきてたら絶対に声をかけてくれている。それがないから葵は帰ってきてないと推測した。

「なんで帰ってきてないんだ。」と太陽は呟きスマホにLINEの通知が来ていることに気づいた。それを見ると葵から12時過ぎに一言だけメッセいーじが送られていた。

「ひまわり」

 この「ひまわり」という言葉になんの意味があるのかわからなかったが葵に返信をして見ることにした。

「あおちゃん家にきた?どこにいるの?」と LINEを残し返信を待った。しかしLINEは一向に帰ってこない。基本葵のLINEは用事がなければすぐに帰ってくる。何か急用でも入ったのかなと思ったけど本能的に嫌な予感がする。けれど大丈夫と思い込み返信を待つことにした。


 それから2時間くらいが経っていた。流石に返信が遅すぎると焦りも感じていた。あんなに楽しみにしていたひまわり畑に行くことを忘れるはずがない。とにかく気を紛らわそうとテレビをつけた。

 テレビではニュースがやっており今日起きたニュースが流れていた。


 そしてあるニュースになった。

「次のニュースです。今日昼間、笛吹市内ふえふきしないの交差点で歩行者と車が接触する事故があり歩行者の死亡が確認されました。」

 太陽はそのニュースを片耳で聞いていた。自分の住んでいる市で悲惨な事故があったんだなくらいで思っていた。それより葵が帰ってこないことの方が不安だった。

「死亡が確認されたのは近くに住む会社員の日向葵さん26歳。」

 太陽はテレビの方を見る。画面にはっきりと葵の名前が乗っていた。

 頭の理解が追いつかなかった。いや理解してはいけないと脳が本能的に考えるのを止めていた。

「あおちゃん・・・」と一言つぶやく。まさかそんなはずはない。たまたま同姓同名の人だったに違いない。そう思い込んでいた。


 そこに一軒のLINEが入る。ツッキーからだった。そこには簡潔に一文書かれていた。


「葵さんが交通事故で亡くなった。」


 その文章を見た瞬間全身の力が抜けた。これは現実なんだと。体に重いものが急にのしかかる。何もできない。ラインの返信もせず太陽はただ部屋の天井を見ていた。


 それからどのくらい経っただろう。いろんな人から連絡がきていたのはわかった。会社の上司や美咲さんからも連絡がきていたのはわかった。けど返信をする余裕はない。ただただ何もしたくない。もう何もしたくない。けど上司には連絡をしないといけないと思い上司のLINEを開いた。

 上司のLINEには「平野くん。状況が状況だ。しばらく休んでいい。社長もそう言っている。声かける言葉が見つからなくて申し訳ない。」とメッセージがきていた。太陽はそれに「はい。」とだけ返信した。


 突然に幸せが途絶えた。葵は幸せのために覚悟を決めて行動をした。それなのになぜ。なんでなんだ。太陽は泣く事さえもできなかった。ただただ現実を受け入れたくなかった。


 次の日会社に太陽の姿はなかった。会社のみんなその理由は察していた。とてもじゃないけど太陽は会社にこれる状況ではない。それをみんな言われずとも理解していた。

 朝礼が始まると社長が言葉を察した。


「昨日葵さんが交通事故でなくなりました。わたしも言葉が浮かびません。なんて言っていいのかわかりません。葵さんはうちの会社で多くの人と関わりを持ちとても楽しそうに業務に励んでいたことが忘れません。」社長は涙をこらえながら言っていた。

 他の社員も同じだった。葵が亡くなったことがどれだけ衝撃を与えているか。

「葵さん。葵さん。なんで。一緒に遊びにまた行こって言ったのに。」

 美咲は耐えきれず泣き崩れる。周りの社員が美咲に寄り添う。啜るような泣声があたりに広がる。


 そんな中社長が口を開く。

「本当に葵さんはみんなに愛されていました。すごくいい人でした。自分の病気や闇と戦い必死に幸せを掴むために努力をしていました。それなのになんでこんなことにならないといけなかったのか。私も納得いってないです。けれど現実に背を向けてはいけないです。皆さん。仕事がきついかたはすぐにいってください。遠慮なく休んでください。」

 社長も涙を抑えられなかった。仕事どころではなかった。このまま今日は仕事を休みにするとまで考えていた。

 部長ただうつむいて地面を見ている。少しして部長が顔を上げて一言いう。

「葵さん。葵さんはみんなに大切にされてきました。本当にありがとう。」

 社内全体に悲しみが広がる。葵が会社の大事な一員であったことはまぎれもない事実である。もっと葵と一緒に居たかった。葵と仕事がしたかった。葵の幸せを見届けなかった。その思いが悲しみの中に広がっていった。


 葵の死後ツッキーと渡辺先生は病院のある部屋で二人でいた。二人は終始無言だった。医者として葵さんを助けられなかったこと。その無力さが二人を襲っていた。無言が続く中ツッキーが口を開く。

「渡辺先生。医者って本当に無力ですよね。多くの人を助けられることもある。しかし大事な人を助けられないときもある。今回の件でわかりました。自分たちは無力なんだと。」

 ツッキーは窓を見ながらそういっていた。

「確かにそうかもしれません。医者は本当に無力です。けど無力なりに精一杯なことはやったつもりです。あくまでもつもりですが。でも葵さんは助けたかった。なんとしてでも。けれどそれができなかった。」

 渡辺先生もツッキーの言葉に続いた。

 医者とはなにか。そのことをずっと考えていた。多くの人を救う分救えない命もある。そこといつも葛藤し患者と向き合っている。

「でも私たちにできることは患者さんのために全力を尽くすことだと思います。それが葵さんに対して私たちができる最大限の敬意だと思っています。」

 ツッキーの言葉を渡辺先生は全て受け止めた。救急医として。整形外科医として。医者として。これからも全力で患者と向き合うことを二人は心に誓った。


「月野先生。太陽さんから連絡はありました?」と渡辺先生が聞く。ツッキーは事故があった日の夕方に太陽に連絡を入れていた。

「既読がついているだけで何も返ってこないです。太陽が一番辛い思いをしているので今は時間が必要かと思います。そしてある程度の治療も必要になってくると思います。太陽の受けた傷は大きすぎるので。」

 渡辺先生はツッキーの話を聞いて頷く。太陽の容態も心配だ。大切だった人を亡くして何もないわけがない。太陽の心のケアをしなければならない。

「太陽は俺が必ず救います。精神科医として。そして親友として。」とツッキーは力を込めていった。太陽が葵にしてきたように今度はツッキーが太陽に精一杯の助けをすることを心に誓った。


 葵の死によって多くのところに悲しみが生まれた。けどその悲しみと立ち向かっていかないといけない。残ったものはその悲しみと立ち向かいながらその人の分まで生きていかなければならない。そうでなければ葵は報われない。それぞれ行動は違うけれど葵のため。そして自分自身のためできる行動をしていく。

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