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青空の向日葵  作者: チュラ
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交通事故

 渡辺先生はこの日救急外来を担当していて救急センターにいた。今日は救急搬送の件数が少なく静かな1日だった。渡辺先生も一息ついていた。

 そこに救急隊から一件の要請が入った。

笛吹ふえふき市内において交通事故発生。意識不明の患者一人搬送します。現在ドクターヘリにて搬送中。容態はかろうじて心臓が動いている状態。腹部に内出血あり。バイタルは安定してない。」

 渡辺先生は一気に救急モードに入った。どんな人でも希望があれば全力で助ける。医者としてのモットーだった。そして続報が入る。

「患者の名前は日向葵。女性で年齢は26歳。」

 それを聞いた瞬間渡辺先生は凍りついた。


「日向葵って・・・葵さん。」

 血の気が引いた。今日は確か両親に話をしにいく日。そう聞いていたので成功することを願っていた。それなのに交通事故で運ばれてくる。しかも重体。渡辺先生は息を飲んだ。

「すぐに治療できる準備を。すぐに輸血するように準備。運ばれて来たら緊急オペできるようにお願い。私はヘリポートに行き患者を受け入れる。」と渡辺先生は言いヘリポートへ向かった。


 ヘリポートについてすぐにドクターヘリが到着した。タンカーが降ろされそこに葵が乗せられている。

「葵さん。葵さん。聞こえますか。」と渡辺先生が葵に必死に問いかける。けど葵の応答はない。外傷はぱっと見見受けられない。しかし腹部に出血があるということなので急いで手当する必要がある。

 ヘリポートから葵を救急センターに運ぶ。

「早く。急いで。」渡辺先生に焦りが募る。なんとしてでも助けなければいけない。自分の医者人生をかけてでも助けなければならない。ずっとその思いが頭の中を巡らせていた。

「運んだら全身の検査をしつつ腹部の出血を止める。輸血も同時に行う。」渡辺先生は頭をフル回転させて指示を出す。

「絶対に助ける。」

 そう呟き先を急いだ。


 処置室に入り渡辺先生はオペの準備に入った。それと同時に家族に連絡を取るよう指示した。少しして看護師が連絡が入ったとの知らせを受けた。

「家族の代理の者が来るそうです。そしてそれ以外のところには連絡を取らないでくださいだそうです。」

 看護師が言われたことを渡辺先生に伝える。

 渡辺先生は葵の両親に対して怒りを覚えた。娘が重体なのに何のんきなことを言っているんだ。そして私たち以外に連絡するなと。これでは太陽にも連絡できない。けれどそんなことを思っている暇はなかった。

「月野先生を呼んで来て。」それだけ看護師に指示を出し渡辺先生は葵の治療を始めた。


 腹部の出血部位を突き止めるために腹部を切開した。腹膜を切開した瞬間大量の血が溢れ出ていた。それに伴い葵の血圧も下がっていく。

「先生。血圧が低下して行きます。」

「輸血急げ。」

 血だらけの葵の腹部の中から必死に出血部位を探す。しかし血が溢れ出ており出血部分が特定できない。その間にも血はどんどん溢れ出ていく。

「くそっ。吸引急いで。ガーゼもありったけくれ。」

 必死で出血した血を取り除く。しかし葵の血圧、脈拍とも低下していく。

「渡辺先生。このままでは・・・」とバイタルを見ている看護師がつぶやく。

「諦めるな。最後まで諦めるな。葵さんはいま必死に生きようとしている。俺たちが秋恨めてどうする。手を探すんだ。何か手はあるはずだ。」

 そう言いつつも渡辺先生は手段が思いつかない。そしてレントゲンの結果も送られて来た。

「これは・・・大腿骨骨折骨盤骨折。そして頭蓋骨も折れている。頭も損傷している・・・」

 渡辺先生の血の気がさらに引く。これはもう助からない。そう悟ってしまった。


 その時ツッキーがきた。ツッキーは渡辺先生の元にいく。そこにあった光景に衝撃を受けた。

「嘘・・・葵さん・・・」

 ツッキーは言葉を失っていた。

「渡辺先生。葵さんの容態は」

「腹部の出血が止まらないのと脳にも損傷を受けている。これはもう助からない。」

「そうですか・・・」


 二人の会話の後に沈黙が走る。

「渡辺先生。最後まで治療しましょう。それが葵さんに対する敬意です。仮に可能性が限りなくなくても諦めないで行きましょう。そして太陽には連絡しましたか。」

 ツッキーが淡々という。言い表せない感情がツッキーに襲う。

「葵さんの両親から他の人への連絡は止められている。多分太陽は知るのは今日の夜のニュースになると思う。」

「・・・渡辺先生。僕も手伝います。オペを続けましょう。」

 そう言って二人はオペを進めた。

 なんとか血を全部拭き取り出血箇所を特定した。内臓のあちこちが破れており内臓破裂の状態だった。

 その内臓を一つ一つできる限り修復していく。葵の心臓はまだ動いている。それと同時に脳外科の先生も来て脳の方の損傷の処置に向かった。

 正直にもう延命治療しているに過ぎないことはわかっていた。それでも諦められなかった。葵の様々な姿を見て来た二人にとって葵をなんとしてでも助けたかった。今までいろんな辛い経験をした分幸せな人生を歩んでほしい。そんな思いが二人を襲う。


 懸命に治療を進めていると葵の両親の代理の人が来た。スーツに身をくるんだ少し年の言った男性だった。

 その人は渡辺先生に葵の容態を伝える。その話を聞いた代理の人は渡辺先生たちにこう伝えた。

「葵さんの両親からの伝言があります。助からない場合の延命治療はしないでください。そしてなくなった場合遺体はすぐに家に運ぶよう手配してありますのでその指示に従ってください。」

 スーツの男性は淡々と喋った。その目は死んだ魚の眼のような目をしていた。


 ツッキーはそれを見てこの人心が壊れいると感じていた。葵と同じで葵の両親に心を削られて言ったんだなと精神科医としての分析をしてしまった。


「そんな・・・もうこれ以上は何もできない。」

 渡辺先生の全身から力が抜ける。家族から延命治療を断られたら基本延命治療はできないことになっている。そのためツッキーと渡辺先生は葵の死を待つだけとなってしまった。

「月野先生。ご協力いただきありがとうございますた。」

「渡辺先生こそ懸命な治療ありがとうございました。」

 二人はともにお礼を言い合ってオペの後処理をした。

 葵のバイタルがどんどん低下していく。葵は懸命に生きようとしている。しかしそれもそのうち終わる。


 それから2時間くらいがたった。葵のバイタルサインが完全になくなった。バイタルモニターはバイタルサインがなくなった時の独特の音を立てて横線とゼロの表記が映し出されている。葵は息を拭き取った。

 渡辺先生は静かに死亡確認をしそのまま治療室を出て廊下に出た。ツッキーもそれに続く。

 そして渡辺先生は壁を思いっきり殴った。

「くそっ。」

 こういう仕事柄人の詩と向き合う機会は多かったが今回は特別だった。知り合いだからというわけではないが葵さんには本当にこれからも生きていて欲しかった。もっと幸せになって欲しかった。ただその思いだけだった。

「太陽ごめん。」とツッキーも呟き下をみる。太陽にどう報告すれば良いのか全然わからない。今後どんな顔をして太陽に合えばいいのか。ただただ悔しさと悲しさが二人を襲う。


 葵の遺体はすぐに実家へと運ばれてしまった。太陽に最後を看取られる隙もないままに。


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