クリスマスデート(諏訪大社編)
待ちに待ったクリスマスデートの日となった。二人はこの日をずっと楽しみにしていた。一週間くらい前から二人はワクワクが止まらずずっとデートの話をしていた。
会社でも行く度にに周りから楽しんできてねと言われていた。
しれだけ楽しみだったデートがついにその時を迎えた。
二人は朝起きて身支度をしていた。
「諏訪大社すごく楽しみ。初めて行く神社ってすごくワクワクする。」
葵は諏訪大社に行くのが初めてだったのでどんな光景が待っているのかワクワクしていた。
「僕も数年ぶりに行くからすごく楽しみ。」と太陽もワクワクしていた。
二人してルンルンで準備を済まし車に乗り込んだ。
諏訪大社は上社本宮、上社前宮、下社春宮、下社秋宮という4つの神社からなる神社で諏訪湖を挟んで諏訪湖の北側に下社の二つ、南側に髪社の二つがある。御祭神は大国主命の息子である建御名方神が上社、その奥さんである八坂刀売神が下社に祀られている。
二人は最初下社春宮を目指した。中央道を名古屋方面に進み岡谷インターで降りて下道を走らせるほど数分で目的地についた。
「着いたよ。」と太陽は葵に声をかけた。朝早いせいもあってか葵は車の中で半分寝ぼけた状態でいた。長野県に入ってからは少しうとうとしてた。
「ごめんね陽くん。半分寝かけてた。」と葵が謝る。
「大丈夫だよ。朝早かったし全然爆睡しててもよかったよ。あおちゃんの寝顔見れるし。」
「普通に恥ずかしんだけど。」
駐車場について二人は会話が弾んでしまい10分くらい車内で話していた。
「あ、そろそろ降りて諏訪大社に行こ。と太陽はそういうと二人は車を降りて諏訪大社に向かった。」
駐車場から少し歩くと大きな鳥居が二人を迎えてくれた。鳥居をくぐり境内に入ると大きな注連縄が巻かれた神楽殿が見えてきた。その奥には大きな拝殿が見えてきた。
拝殿の横には建物がありそれぞれ左右片拝殿と呼ばれている。そしてその角には御柱という長い大木が立っている。
御柱は7年に一度行われる御柱祭で新しいものに建て替えられ諏訪大社とその周辺の神社独特のものである。
「他の神社と違って御柱が立ってるのなんか不思議。」
葵は御柱を見て不思議そうにいう。
御柱が立っている説は様々言われているがどれが正しい説なのかはわかっていない。
太陽は葵にそのことを説明すると葵は納得したのか頷いていた。
「諸説あるのってなんかいいよね。一つの考えによらず様々な考え方があってそれが正しいかどうかわかってないのなんか人間の人生みたい。」と葵は太陽に向かっていった。
太陽もそれに同意していた。
「確かに。正解がないのは人生も似ているかもしれない。人生に正解なんてない。自分がしてきたことを正解したかのようにするのが人生なのかもね。」と太陽も考えをいう。
御柱を見て人生について考えている人はそうそういないと思うが二人はその話で盛り上がっていた。
しばらく御柱の前で話をしていてその後二人は拝殿でお参りをした。
「「いつもお守りしていただきありがとうございます。」」
「葵さんの病気が良くなり今後も仲良く過ごせていけますように。」
「自分の病気が治り太陽さんと今後も仲良く過ごせていけますように」とそれぞれお願いをした。
諏訪大社は上社前宮を除いて本殿がない形式をしている。神社は古来では本殿がなく御神体である山や木などを御神体として崇めていた。諏訪大社も下社は拝殿奥にある木を御神体としている。一方上社本宮は守屋山を御神体としておりそれぞれ古来の形式を残している。
二人の願いを御神体である木が受け止めてくれたかのように風によって木の枝が揺れる。冬なので葉っぱはないが木の枝のぶつかる音で御神木が答えているかのように感じた。
お参りした後境内にある摂社、末社にお参りした後ちょっと歩いたところにある万治の石仏に行くことにした。万治の石仏は昔石を切ろうとした時にその石から血が流れたので仏様を石に彫刻して祀ったのが始まりでそこで言葉を唱えて石仏の周りを三周歩くと願いが叶うと言われている。
二人は万治の石仏に行きその通りのことをしてお祈りをした。祈ったことはもちろん先ほどと同じことで二人はその祈りを言いながら石仏の周りを三周していた。
「なんか呪文唱えているみたいで楽しい。」
「確かに。魔法使いになった感じがするね。」
「ねえ陽くん。魔法使いごっこをしようよ。」
葵の言葉に太陽は戸惑った。どういうことと思ったが葵の説明を聞く。
「今から両方魔法使いになってそれぞれの言ったことを聞いていくの。絶対無理なことは言わないでね。」
説明を受けた太陽は納得したようなしないような感覚だったがとりあえずして見ることにした。
二人は駐車場に戻りながらそのゲームをすることにした。
「じゃあまず。手を繋ぐ。」
案外簡単なことでびっくりした。もっときつい魔法が飛んでくると思ったがそうではなかった。
「だって。手を繋ぎたかったんだもん。しばらくデートもしてなくて外で手を繋ぎたかったもん。諏訪大社についてからずっと手を繋ぎたかったんだよ。」
葵に言われて太陽は少し罪悪感に襲われた。」
「ごめんね。魔法使わなくてもつなぐよ。」
そう言って太陽は葵の手を握った。葵は笑顔でとても嬉しそうだった。こうして考えると久しぶりに葵の手を握った気がする。葵が手を怪我してたというのもあるけどハグの方がしていると思った。ハグもいいけど外で手を繋ぐものまたいい。特に冬は寒いので二人の手の暖かさを余計感じることができる。カイロのようにじんわりと二人の手が暖かくなる。
二人は手を繋ぎながら駐車場に戻り次の目的地下社秋宮に向かった。春宮から秋宮へは車で数分でつくところにありすぐについた。
春宮と違い秋宮の前にはおみやげ屋さんもあった。そこにも後で立ち寄ろる事にして二人は境内に向かった。秋宮は春宮より少し境内が広く春宮と同じ神楽殿と拝殿と御柱が見えた。
「秋宮と見ているけどよく見ると拝殿が若干違うね。」
「そうなんよね。同じようだけど細かいところが違うらしい。」
「そうなんだね。細かく見て見るとそういう発見があって楽しね。」と葵は拝殿をまじまじと見ている。太陽も拝殿に目を向けじっくり見た。
しばらく見た後に拝殿に参りをし境内をゆったりと仰いでいた。冬の冷たい空気を感じるなか太陽光の暖かさも感じていた。
「なんか温かい気分になるね。」
ふと葵がつぶやく。
「うん。あたたくて幸せな気持ち。神様も優しく見守ってくださってるみたい。」
「確かに。神様が私たちに少しだけ力をくれている感じがする。遠くで見守ってくれる感じがまた好き。」
二人は神様に見守られている感覚がまた好きだった。二人の普段の頑張りを遠くから見守り少しだけ力を貸しているようだった。
春宮と同じく摂社末社にお参りして鳥居の前までに戻っていた。
「ねえ陽くん。魔法使っていい?」と葵は魔法を使おうとした。
なんの魔法が来るのか太陽は楽しみだった。
「写真とろ。」
これもまた簡単なお願いだった。太陽は頷くと諏訪大社と書いてある石像の前でツーショット写真を撮った。
写真を見ると二人の前に光が差し込んでいた。
「すごい。なんか幻想的。」と葵は喜んでいた。
「本当に綺麗だよね。魔法のおかげかな。」
「そこは神様のおかげにしとこうよ。」
「そうしとこ」
二人はこの現象を神がかりといって喜んだ。そのスマホを片手にお土産屋に向かっていった。お土産屋で二人はお菓子を少し買って駐車場に戻り車に乗り込んだ。
ちょうどお昼時なので次の目的地上社前宮に行く前に昼食をとる事にした。
車内で何を食べるか話し合い信州そばを食べる事にした。ちょうど決まったタイミングで蕎麦屋があったので二人はそこに入る事にした。
店の中に入理二人はざるそばを注文してしばらく待っていた。
「私信州そば初めて食べるからどんなのか楽しみ。」
葵は信州そばを食べるのが初めてだった。普段食べているそばとどんな違いがあるのか楽しみだった。そんな想いを寄せている中そばが運ばれてきた。ほのかに香るそばの香りとめんつゆの香りがうまく融合して食欲をそそる。
「「いただきます」」といって二人はそばを食べた。
そばを食べた瞬間二人は感動した。口の中にそばとめんつゆの香りが広がり少し硬めの歯ごたえのある食感が口の中をおおう。
「美味しい。今まで食べたそばの中で一番美味しいかも。」
葵は笑顔でそばをすすっている。太陽も葵の表情を見ながらそばを堪能している。
そばを食べる葵が本当に可愛かった。なぜか脈が高鳴る。こんなに笑顔で食事をしている葵を太陽は久しぶりに見た気がする。この笑顔の葵が本当の葵の姿なんだとつくづく思う。笑っている葵が一番可愛く見え幸せを感じる。本当に元気になってよかったと思った。
そばを食べた二人は上社前宮に向かうため車に乗り込んだ。葵は車に乗り込んですぐに薬を飲んだ。元気になっているとはいえツッキーが言っていたようにいつぶり返して来るかわからないので薬はしっかり飲むようにしている。
そうして車を走らせると途中諏訪湖の沿岸を通る道を走った。
車の窓から”太陽”に照らされた諏訪湖が見えた。
「諏訪湖が海みたい。海より薄い青だけどそれがまた独特な雰囲気を出しているね。」と言って葵は諏訪湖の方に指をさす。
太陽はちらっと諏訪湖の方を見る。確かに葵が言っていた光景が広がっていた。しかも一部は凍っている部分もあった。
「なんかエモい感じがする。暖かさの中に少しだけ寂しさもあるような感じがまたいい。」
「陽くんがエモいって使うとなんか違和感。でもエモいのはわかるよ。けどその寂しさもなんか冷たく感じないんよね。”太陽”が温めてくれたからかな。まるで陽くんみたい。」
葵は太陽の方を見て言う。葵自身も最近の太陽は私を暖かく照らしている存在だと強く思っている。現に自分の心に寄り添ってくれてこうやってデートを楽しんでいるから間違いはないと思う。
「僕が太陽ならあおちゃんはやっぱひまわりだね。ヒマワリのように笑顔が輝いてい。ひまわりを照らす”太陽”まさに僕とあおちゃんだね。」
「いいこと言うね。本当にその通りだと思う。私陽くんに照らされててよかったよ。」
「僕もあおちゃんを照らすことができてよかったよ。」」
太陽という光に当てられ光合成をする向日葵みたいに二人の関係はお互いを支え合って言った。そんなことを諏訪湖が見える車内で二人は思っていた。
湖岸の道を通り過ぎ車を走らせると上社前宮が見えてきた。駐車場に車を止め境内に入る。境内には様々や社や十間廊と言われる建物が建っておいた。前宮は今いる位置から約200メートル離れたところにあるらしい。
「なんかここ独特な雰囲気だよね。お宮は200メートル先だけどここでいろいろなお祭りが行われるみたいだよ。」と太陽が解説する。
葵はそれを聞いてて境内のいろんなところを見て話回っていた。
一通り見終わると本殿がある方へ向かって言った。上社前宮だけ唯一本殿がありその本殿に直接お参りすることができる。
本殿に行くまでは坂道になっていた。それを見た葵はある魔法を思いました。
「陽くんここで私魔法つかいます。」
太陽は待ってましたとばかりに葵の魔法を聞く。今回はどんな魔法を使うのか内心楽しみだった。
「ここの坂を全力でダッシュして登る。」
太陽は思っていたのと全然違う言葉が飛んできた。坂道ダッシュなんて高校の部活の時を思い出す。
「坂道ダッシュね。全然やるよ。なら僕も魔法使うね。」と太陽も初めての魔法を使った。
「負けた方飲み物おごりね。」
太陽は負ける気がないと思って余裕の表情を見せていた。
「全然いいよ。」と葵はすんなり魔法を聞いた。
「それじゃあいくね。用意、ドン。」
太陽の掛け声で二人は走り出した。太陽は最初から全力で走って葵を突き放そうとした。
しかし葵も意外と食らいついてきている。太陽はだんだん疲れてきた。気がつくと葵にこされ葵の方が早く本殿の前についた。
「はい私の勝ち。」と葵は勝ち誇っていた。
まさか葵に負けるとは思ってなかったので驚きを隠せなかった。
「じゃあ途中にあった休憩所みたいなところの自販機で買ってね。」と葵は笑顔で言っていた。勝負に負けたからには潔く買うかと太陽は思っていた。
二人は本殿にお参りして御柱を見て回った。上社前宮だけ4本全ての御柱の近くに行くことができる。御柱を見てその脇にあった湧き水で手を冷やしきた坂道を下っていった。
太陽は途中の休憩所みたいなところで葵にジュースを買ってあげて駐車場へと戻った。
そして最後の目的地である上社本宮へと向かった。前宮から本宮までは車で5分くらいの位置にありあっという間についた。
駐車場に車を止めると様々な土産屋や食べ物屋が並んでいた。お土産やさんを横目に二人は諏訪大社本宮へと向かった。
本宮前までに着くと大きな鳥居があり鳥居をくぐったら大きな境内が待っていた。境内にある階段を登ると左手に長い回廊が見えてきた。
「この回廊の進んだ先が本来の入り口だったんだって。この中もあとで通ってみよう。」と太陽は回廊を指差していう。回廊の方を向くと神聖な感じがただよっていた。
「うん。通ってみたい。まずはお参りしないとね。」と葵が言って二人は幣拝殿へと向かった。
小さな門をくぐると下社同様諏訪大社独特の拝殿が見えてきた。拝殿の数メートル手前に賽銭箱がありそこでお参りをする。
「なんかすごい力強い力を感じるね。男性のパワーというかそんな感じがする。」
葵は賽銭箱の前で深呼吸をしてそう言った。
「多分建御名方命を祀っているからだと思う。大国主尊の子供で武勇に優れた神様だからさ。」と太陽は解説した。
建御名方命は出雲の国譲りのシーンで天照大神が送り出した武甕槌命と勝負をし負けて諏訪の地に鎮座したとこ時期には書かれておりどの時代を通しても武神として崇められてきた。それによって葵は力強いパワーを感じていたんだろうと太陽は思っていた。
これで諏訪大社四社を回った二人は達成感で満ち溢れていた。朝早くから来た甲斐があったと二人で感じていた。諏訪大社をクリスマスイヴに四社全て回るカップルはなかなかいないだろうと思うとなんか特別な気分になった。
二人はその後回廊を通り摂社、末社にお参りをし諏訪大社上社本宮を堪能しお土産屋などを回った。ある店に甘酒が売っていたので甘酒を飲むことにした。
「この甘酒とっても美味しい。飲みやすいし暖かいしずっと飲んでられる。」
「そうだよね。ノンアルコールだから運転している僕でも飲めるし体が暖かくなるよね。」
二人は甘酒の美味しさに感動していた。アルコールは入ってないが少しだけお酒の味がする中に甘さが広がってありとても口当たりの良い味になっている。そんな甘酒を堪能して二人は次の目的地であるひまわり畑に向かうことにした。
空は夕焼けに染まり間も無く”太陽”が沈みかかろうとしており夜が訪れようとしている。冬の北風が二人を案内するかのように吹いていた。