統合失調症
朝になった。二人はこの日もよく寝れた。今日から葵との二人の仕事が始まる。二人は身支度を整えてリビングでパソコンを開いた。
葵は幾分元気になっているように見えた。仕事にいかなくていい開放感と安心感が葵の心の負担を軽くしていた。
二人は仕事の話をしつつ仕事を進めていった。
葵は手がまだ痛むためパソコンでの作業は控えめにしてパソコンを使わないつつ葵の負担にならない作業を太陽はお願いをした。
適度に休憩を挟みつつ仕事をしていき気づいたら午後になって言った。
二人は昼休憩をとった。
「あおちゃん体調とかはどう?無理していない?」
太陽は葵を気遣う。仕事をしているが本来の目的は葵の心の回復が目的なのでそこに重点をおいている。
「今のところ大丈夫だよ。暗い気持ちにならない。」と葵は笑顔で言った。
「それならよかった。」太陽も嬉しそうだった。こうやって仕事している瞬間が二人にとって安心できる環境であった。
太陽は葵の仕事を見て驚いた。全ての作業が正確で素速くこなしている。葵のどこが仕事ができないのか全然理解できなかった。太陽の推測であるが周りからかけられる圧力や悪口なので葵自身が恐縮してしまい自分の持っているパフォーマンスができていなかったからだと思った。
人間のパフォーマンスは周りの環境にかなり影響される。どんなに仕事がきる人でも周りからの圧力などでその力が発揮できない人は奥いるはずだと太陽は考えている。そのため環境はすごく大事にしておりたいよう自身も職場の環境が良くなるよう日々動いている。そのおかげで職場内でも仕事がしやすく周りとの良好な関係築くていた。そのおかげで今回みたいに周りが助けてくれることも多くあった。
そんなことを考えながら太陽は葵の方を見る。葵も今の環境になってから自分のパフォーマンスを発揮しやすい環境になっていると感じる。葵は生き生きしていると感じる。無理をさせない範囲で葵にも仕事を楽しんでもらいたいと思った。
昼休憩を取り二人は仕事に戻った。午後も葵は仕事をテキパキとこなして行った。一人で仕事を進めすよりすごく早く仕事が進んで行った。
夕方になり太陽は上司あてに今日の仕事の進捗と葵の様子をメールで送った。太陽はテレワークをしているときは毎日上司に報告を入れとこうと思っていた。上司にこまめに状況を報告することで何かあった際の対応も素速く対処できると考えたからだ。
上司にメールをして今日の業務を終えることにした。
葵も仕事にキリがついたので本日の仕事を終えることにした。
「あおちゃんおつかれ。」と太陽が葵に言う。
「陽くんもお疲れ様。一日ありがとうね。」と葵も太陽にお礼を言う。
「体調大丈夫そう?」
太陽は葵の表情が少し暗かったので様子を伺う。
「ちょっとしんどいけど大きく体調悪いとかはないから大丈夫。ありがとうね。」と葵は自分の症状を正直に語る。
「そっか。なら葵はゆっくりしてて大丈夫よ。僕晩御飯とかの準備してくるね。」と言って太陽は台所へ向かった。晩御飯を作る準備をして調理に取り掛かった。
葵は今日1日とてもリラックスしながら仕事をすることができた。めまいなどが起きるときもあったが太陽がいると言う安心感からかそんなにひどくなることはなかった。この調子でいけばだんだんと良くなっていくような気がした。
一方太陽は料理をしながらツッキーに葵の症状を細かく伝えていた。診察してもらう前にあらかじめ症状を伝えることによって診察の際スムーズになり適切な診断がしやすくなると思ったからだ。
ツッキーにとってもそれはありがたかった。太陽の送られてくる葵の症状からある程度の診断はできていた。葵を診察するときには素早く適切な薬などを処方できそうだった。
晩御飯ができ二人は晩御飯を食べながら太陽は葵の症状をツッキーに伝えていることを伝えた。
「ありがとう陽くん。私も症状が出たりしたらすぐに細かく伝えるね。」
葵も自分の症状をツッキーに細かく伝えたかった。そうして自分の心の傷と向き合いたかった。傷を癒して太陽と楽しい時間をたくさん過ごしたかった。
二人は晩御飯を食べお風呂に入り就寝に入った。太陽はすぐ寝付けなかったが葵は今日は寝付けなかった。目を瞑ると誰かが自分を誹謗している声が聞こえた。
葵は変な汗をかいていた。
それに気づいた太陽が目を覚ました。
「あおちゃん症状出てる?」と太陽は聞く。
「うん。誰かに責められている気がする。」
それを聞いた太陽は葵を抱きしめた。
「大丈夫。誰も攻めてないよ。落ち着くまでずっとこのままでいいよ。」
「ありがとう。」
しばらく二人はハグしたままベッドで寝ていた。葵の症状はだんだんと落ち着いていった。
太陽は葵が寝るまで起きていた。葵が安心して寝れるように体をさすりながら葵が寝付くのをサポートした。
太陽も精一杯看病したが結局葵は三時間くらいしかねれなかった。
朝起きて葵は太陽に謝っていた。私に付き添ってくれたせいで太陽の睡眠時間を奪ってしまった。申し訳なさでいっぱいだった。
葵が太陽に謝ると太陽は「気にしないで。」とにこやかに行っていた。太陽自身も眠いことは間違いないが葵はもっと苦しんでいる。太陽は睡眠時間が短くても大丈夫な体質だったので少しくらい寝不足でも気にはならなかった。
この日は仕事の量をかなり減らした。葵が不安定なので無理をさせると症状が悪化すると判断してゆっくりすることにした。
上司に昨日送ったメールの返信が帰ってきてそれを確認し改めて上司に今日の方針を伝える。上司は快く了承してくれた。
こんな感じで太陽は葵の体調に合わせて仕事のペースや過ごし方を日ごとに変えて行った。葵は調子のいい日や悪い日など日によって差が激しかった。そのこともツッキーや上司に細かく報告して行った。
そして休みの日になった。太陽と葵はツッキーの診察を受けるためツッキーが務めている病院へ向かった。
病院に行き受付を済ますとすぐに呼ばれ診察室に入る。そこには白衣を着たツッキーがいた。
「二人とも忙しい中きていただきありがとうございます。」とツッキーはいう。
「こちらこそ私のために忙しい中見てくださりありがとうございます。」と葵はツッキーにお礼を言った。
「いえいえ。では診察を始めますね。症状については太陽から細かく聞いています。葵さん自身も症状について細かく聞かせてくれますか。」とツッキーに聞かれ葵は症状を細かく伝えた。
ツッキーは葵から聞いた症状をパソコンに打ち込む。葵の話と太陽から報告された症状を照らし合わせツゥキーが診断を下す。
「葵さんの場合いろんなものが複合していると思いますが一番の病気は統合失調症だと思います。」
ツッキーは葵と太陽の方を向いていう。
「統合失調症?」葵は聞き返す。
「はい。統合失調症はストレスや脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることが原因で起きる病気で葵さんがよくなる幻聴や責められている症状も統合失調症の代表する症状です。」
太陽と葵はツッキーの話を真剣に聞いていた。
「葵さんの話を聞板は範囲では考えがまとまらないとか被害妄想といった他に統合失調症を代表する症状はあまり出ていないですが症状を見ていくと統合失調症を一番疑うべきだと思います。そして統合失調症だけではなくうつ病も併発していると思います。」
太陽はツッキーに質問をする。
「統合失調症とうつ病って併発するんですか。」
その疑問にツッキーは答える。
「精神疾患ってこの病気と断定できることは少ないんですよね。むしろ断定するのは良くないと思っています。精神疾患は複合的に混ざり合ってその人を苦しめています。それなので統合失調症だけと決めつけずに他の精神疾患も併発していると考えた方が有効な治療ができると考えています。そのため私の場合複合に絡んでいると常に考えて薬などを処方してます。」
太陽はツッキーの質問を聞いて納得した。
うつ病や統合失調症という病気は太陽も知っていたが併発するのは初めて知った。ツッキーがそのような考えで診察してくれていると思うとさすがツッキーと思った。
「治療方法ですが薬を飲んで症状を落ち着かせるのとストレスを緩和させる対処療法を同時にしてい着たいと思います。現にストレスの緩和については太陽をはじめとしていろんな人が環境を変えられるようにサポートしているのでこのまま継続させて言ってもらえれば大丈夫だと思います。それでも症状は出ると思いますのでその症状を抑える薬も処方しますね。」
ツッキーは治療の方針を伝えた。そしてツッキーは最後にこう言った。
「葵さん。大丈夫です。今まで受けた苦しみを今すぐに取り除くのは難しいですが私が葵さんの苦しみ、心の傷を治すお手伝いをしていきます。一緒に頑張りましょう。」
ツッキーの言葉は信頼と安心感があった。
「ありがとうございます。」と葵は言って診察室をでた。死んつ質を出ると太陽がツッキーに呼ばれた。葵はその間病院内にある薬を処方される場所に行き薬をもらいにいく。
太陽は再び診察室に戻りツッキーと話をした。
「ツッキーありがとうね。」と太陽がいう。
「それは全然大丈夫。太陽に少し言っておきたいことがある。」とツッキーは真面目な顔をした。
「葵さんの症状なんだけど結構重い症状だと思う。めまいとかもおきているしめまいが原因で倒れる可能性もある。そして一番心配なのが葵さんがストレスが降りかかったときに過去の記憶も蘇ることが一番の不安要素なんよ。ストレスが降りかかることによりパニックになっていると考えられそうなると自殺とかそっちの方に走りやすくなる。それが一番危惧していることだ。」
「自殺・・・」
太陽はツッキーからその言葉を聞いて恐怖を覚えた。葵が自殺。そんなの絶対に起きてはならないことだ。
ツッキーは言葉を続ける。
「ストレスが降りかかり自分を責めすぎると生きている意味なんてないって思うようになる。その時にちょっとした行動力が働くと自殺する可能性がある。だから葵さんがストレスにさらされた時は本当に注意して様子を見て欲しい。その時大変そうなら呼んでくれればフォローに行く。葵さんの自殺なんて俺も嫌だ。」
それはその通りだ。葵がいなくなるのなんて絶対に嫌だ。それだけは絶対に阻止したい。
「あと症状がしばらく出なくなったからって安心してはいけない。そういう時が一番怖い。治ったように見えても実際は治ってないからね。統合失調症は治るのに基本年単位かかる。そこも気をつけて欲しい。」
ツッキーは太陽の方を見つめながら言った。ツッキーの目から精神科医としてのプライドと友達としての友情としての思いが伝わって来た。
「ありがとう。ツッキー。葵さんの未来、そして自分の将来のためにも葵さんを全力でフォローして守っていくよ」。
太陽は手を力強く握った。
葵なしの生活はもう考えられない。葵とこれからもずっとっしょに楽しく過ごしていきたい。そのために葵の心の回復を今は一番に考えていこうと改めて思った。
太陽は薬をもらった葵と合流して帰路についた。改めて葵の顔をみるとやっぱり葵が居ない生活なんて考えられなかった。葵が居たから今の自分がいる。葵と出会って本当に良かった。
「陽くん私の顔に何かついている?」とずっと見られていた葵は太陽に聞く。
「ううん。今日もあおちゃんは可愛いなって思ってずっと見ちゃった。」
「なにそれ。ありがとう。」
二人の話声が心を安定させていく。