一人じゃない
次の日の朝二人はほぼ同時に起きた。
太陽はいつもより体が軽く感じていた。こんなによく寝れたの久しぶりだった。
一方の葵はやっぱり朝が弱くぼけっとしていた。
「陽くん・・・おはよ。」と葵が寝ぼけた声で言う。
「あおちゃんおはよう。気分はどう?」と太陽は葵とは逆にはっきりとした声で言う。
「うん・・・久しぶりによく寝てたと思うよ。けど気分が乗らないって言うかなんか暗い感じがする。朝はいつも気分が良くないの。」
「仕事行けそう?」太陽は心配そうに聞く。精神的に不安定な人は朝特に憂鬱な気分になるのはツッキーから聞いていた。
「うん。頑張っていくよ。」葵の声は暗かった。やっぱり休んだほうがいいと思うけど葵が行くというからにはその意見も尊重してあげないとと思っていた。正直太陽は心配だったがそこは葵を信じることにした。
「無理しなくていいからね。無理だったら早退でもなんでもしていいからね。」
「ありがとう。」
二人はベットから俺それぞれ準備をした。準備ができると二人は同時に家を出た。葵は歩いて駅に行きそこから電車で会社に向かう。太陽は車で職場へと向かう。二人はお互いに「行ってきます。」と一声かけて職場へと向かった。
車を走らせること15分、太陽は会社についた。四日ぶりの会社は何か新鮮さを感じた。
会社に入り自分のデスクに座る。まだ誰もきていない始業前だが四日ぶりの仕事なので仕事の確認をした。
しばらくすると上司がやってきた。太陽は上司に挨拶すると上司も挨拶を返した。そして太陽は上司の元にいき話をした。
「昨日まで休みいただきありがとうございました。そのおかげで助かりました。これからも仕事に専念できるよう精進していきます。」
太陽は上司に丁寧に休みをくれたお礼を言った。太陽の直属の上司は社長とも親密に関わりがあり部下が困っていることや社長にお願い事がある時とかは積極的に仲介役になってくれる。また、社長も部下の話をよく取り入れてくれたり部下を気遣ってくれている。そこまで大きうない会社だが給料もしっかりしておりとてもいい会社だった。
「そこは心配しなくていい。こっちも彼女さんのことが心配だよ。社長も心配していたからあとで社長と俺と三人で面談をしよう。」と上司は話をする機会を作ってくれた。
太陽は今後もいろいろなことが起きる可能性があると思うのでいまの状況を話すことにした。そのほうが上司や社長も安心できると思った。しかも太陽は話をできるくらい上司と社長を信頼していた。
そんな話をしていると社長がきた。社長は太陽はみるや太陽の元にやってきて声をかけた。
「平野くんおはよう。彼女さんは大丈夫かい?松岡さん(上司)からある程度話は聞いているけど朝礼が終わったら松岡さんと三人で話をしよう。」と社長は太陽に言った。
「ありがとうございます。後ほどお時間いただきます。」と太陽は頭を深々下げた。
「そんなに頭下げなくていいよ。社員の悩みは解消できるように手助け行くのも社長の務め。その家族や行使している人も同じ。人はそうやって支えられて行くものだから。」
と社長は言葉を続けた。
社長の言葉を聞いて太陽は泣きそうになった。こんなに理解してくれる人に囲まれて本当に幸せになった。葵のことも理解してくれて本当に嬉しかった。葵のことを理解してくれる人は多くいる。それを葵に伝えたい気持ちもあった。
朝礼が終わり太陽と上司、社長で面談をする。三人は応接に行き面談を始めた。
太陽はそこで葵のことを全部話した。上司と社長は親身に聞いてくれた。
太陽が話し終わると社長が話を始めた。
「彼女さんはものすごく大変な環境にいると思う。仕事が辛い、家庭の問題、前の彼氏さんとの問題。一人の人間が一気に捌ける状況ではないと思った。そんな中で平野くんは他の人の助けも得ながらなんとかしようとしているのはすごく伝わってくる。会社としてもそれは支援して行くつもりだから協力して欲しいときは全然声をかけてほしい。」
「ありがとうございます。」
社長は言葉を続ける。
「前の彼氏さんにされたことは正直言って犯罪行為でもあるしそこは警察に言ってもいいところだけど相手が相手だしね。俺もその会社のことは知ってるけど結構いろんなところと関わりあるから変に手出しはしないほうがいい。けど元の彼氏から接近することはもうないと思う。そこはそんなに心配しなくていいと思う。」
太陽は社長の話を真剣に聞く。本当に親身になって考えてくれていると実感する。
「会社のことだがやっぱり会社は辞めたほうがいいと思う。彼女さんのメンタルがそれで壊れるのが目に見える。そしてしばらく休める環境を作ったほうがいいと思う。退職代行とかなら俺の知り合いにいるから全然紹介する。」
社長の話を聞いて太陽は自分の思いを話す。
「やっぱ仕事は辞めたほうがいいですよね。けどなかなか辞めれないと思います。親がその会社にも絡んでいるので解雇しないと思います。」
「それもそうだな。けど何とかして会社から離れさせられるようにしてあげたいな。」と社長がつぶやく。そこに上司が意見を言った。
「彼女さんの会社確かうちの会社と取引してたことあります。平野くんの話からして彼女さんの会社はあそこだと思いました。山梨の会社であの規模の取引をしているのはあの会社だけなので。そこでうちとの取引をする際の担当を彼女さんにしてうちにきてもらって仕事をするようにすれば彼女さんがあの会社に行かなくて済むと思います。」
上司の考えはいいものだった。
「しかしそんなことしてもらってよろしいのでしょうか?会社として大丈夫でしょうか。」と太陽は疑問をぶつける。
すると社長が話をした。
「そこは全然大丈夫だ。こっちとしてもあっちとしてもメリットもあるし利益も生まれる。しっかりとした仕事だから何も問題はない。」
社長がこう言ってくれて心配が消えた。これなら安心できる。
「おふた方ありがとうございます。本当に助かります。」と太陽は心からの感謝を伝えた。
「あとひとつ提案がある。」と上司は意見を出す。
「この取引の仕事は平野くんは家でリモートでやってもらうことにする。そうすれば葵さんも自宅で平野くんと仕事ができて会社に行く必要もなくなる。そうすれば葵さんの体調も少しは安定すると思うからそういう形で仕事を依頼するよ。」と上司は笑いながら言った。
「ありがとうございます。」
「他の社員には俺から言っとく。事情を説明するために彼女さんの状況とかの話もするけどそこは了承してくれ。」と社長も言葉を続ける。
この面談で今後の仕事内容な葵のフォローの仕方がだいぶ見えてきた。
話を終えた三人は応接室から出てそれぞれ仕事に戻った。上司は仕事に戻るや速攻葵の会社に仕事の依頼をかけていた。
しばらくしたら葵の会社から連絡があり仕事を受け入れるとの返事がきた。
「平野くん。彼女さんの会社との仕事成立したから安心して今後仕事してくれ。」と上司はにっこりしながら言った。
「ありがとうございます。本当に感謝しきれないです。」
「他にも何か困った事があったらいつでも言ってくれ。協力する。頼りにしてこい。」
「わかりました。困ったら頼りに行きます。」
その後太陽は安心して仕事に励むことができた。すぐに蒼井と仕事ができるようにした準備も進めて言った。
会社の人もこのことに納得してくれたようだ。まるで会社全体で応援してくれているようだ。社長がよく言っていた社員の悩みは会社の悩み。それを解消して行くのが一番会社を発展させるという意味がいまはものすごくわかる気がした。
葵は電車に乗りながら不安を感じていた。どんなことを言われるのだろうか。どんな対応されるのかすごく不安だった。電車の音がその思いを加速させる。けど行かなければならない。帰えれば太陽がいる。そう。乗り越えた先に幸せと思える環境がある。その思いだけが葵が奮い立たせる。
会社の最寄駅に着き葵は会社に出勤した。中には何人かの同僚や上司がいた。
「おはようございます。休みをいただきありがとうございました。」と葵は挨拶をする。
しかし周りは静寂に包まれていた。反応する人は誰もいなかった。その静かさで折れている左手の甲が痛む。葵は静かに自分のデスクに向かって言った。デスクには四日分の仕事が溜まっていた。まだ始業前だが仕事内容の確認と溜まった仕事の整理に取り掛かっていた。
しばらくして葵の直属の上司が出勤してきた。葵は上司の元にいき昨日の休みのことを謝罪した。
「昨日はお休みいただき申し訳ありませんでした。私の不注意で怪我をしたことにより皆様にご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。これからはこのようなことがないように道路を歩く際は気をつけて歩くようにします。」
葵の怪我の理由は歩道を走っていた際段差につまづいて転んでしまったということに病院がしてしまった。道路に小さな階段がありそこに足を引っ掛けてしまったというものだ。他にも理由は考えられたが第三者が絡むと色々と大変なのでこの理由が精一杯の理由だった。
上司は葵の話を無言で聞いていた。
葵の話を聞いて上司は「そうなの。仕事溜まっているているからかいしょうするように。ただでさえ仕事できないんだからそういうところまであるとくす信頼なよ。」と冷たい目をしながら言っただけだった。
そのあとの静寂が怖くてたまらなかった。
もうすでに帰りたい。すごく怖い。けど仕事が残っている。やらないと。
左腕が痛む中葵はパソコンで作業をしていた。キーボードを打つと左腕に痛みが走る。しかし両手で作業しないと仕事が進まない。
病院でもらった痛み止めを飲んで痛みを散らすしかない。辛いがこれしか方法がない。無理はしたくない。葵の心情と行動が反対のことをしているのが余計に心に響く。
骨折してギブスをしているのに誰も気づかない。気づくふりすらしない。冷たい空気が職場内を流れる。
そのまま仕事を続けていると途中である社員同士の会話が聞こえていた。その声は大きく何を言っているのか丸聞こえだった。
「日向さん四日も仕事休んでそれに怪我して帰ってきたなんて本当に足引っ張るよね。」
「本当にそうよね。ただでさえ親のコネで入ったのにしれに仕事できないし怪我してくるとか本当に価値ないよね。
「やめなよ本人に聞こえちゃうよ」
そんな声が聞こえるが周りは止めもしない。なんならその会話を聞いて笑う人が多かった。なんだこの空間。葵は完全な疎外感を思えた。今までもあったけどこんなに露骨なのは初めてだった。普段から影で言われているのはわかったがここまではっきり言われると余計に心にくる。
「早く逃げたい・・・」ボソッと心の声が漏れた。
それを近くにいた上司に聞かれてしまった。
「日向さん。今逃げたいって言ったよね。みんなあなたが休んでいる時も仕事してたの。それなのにあなたは四日も休んで仕事から逃げたいって社会人としての自覚あるの?仕事溜まってるんだから早くやりなさいよ。」と隣から槍が飛んでくる。
「すみません・・・」と一言いい葵はパソコンを見つめた。何もやる気が起きたい。自然に涙が出てくる。また泣くと言われてしまう。
葵はふと携帯を取り出し「取引先から電話がきたので出てきます。」と言ってデスクのある部屋から出た。
部屋を出ると同時に我慢してた涙があふれ出た。そのままトイレに行き個室で大粒の涙が出た。まるで四面楚歌のように周りから悪口が聞こえてくる。
太陽には大丈夫と言って仕事にきたものの大丈夫ではなかった。正直にいうともう仕事に行きたくない。けど仕事はお構いなく降ってくる。そして周りには悪口を言われる。まさに地獄そのものだった。いくら太陽がいてもこれは耐えられない。そんな木本が収まらず涙が永遠に出てくる。そして体も震えてきた。トイレの中に葵の鳴き声だけがさみしくそして辛くこたました。
けど仕事に戻らないと。そう思い涙をふいてデスクに戻ろうとした。けど体に力が入らない。壁をつたいなんとか立ち上がりデスクへと向かった。
デスクに戻ると上司に呼ばれた。今度は何を言われるのかとても怖かった。それを受け止める心はもうない。もう全てが嫌になる中上司のところに向かった。
上司の元に行くと上司が淡々と話をした。
「あなた宛に仕事がきた。それをやってほしい。」
また仕事が降ってきた。いまの仕事も終わらないのにまた仕事が降ってくる。絶望を感じた。しかし仕事の内容を聞くと絶望から希望に変わって言った。
「ある会社からの依頼であなた宛に取引をして欲しいとの依頼があった。なんでこんなできない子に頼むのかなと思ったけどこの会社は昔取引をしてうちに会社に莫大な利益をもたらしてくれた。だから断る理由がないの。」と上司がいうと一枚の書面を渡した。
その書面を見るとうちの会社とその会社の取引とある企画をお願いすることが書いてあった。
書面の内容の紙を見て行くと一人の名前が書いてあった。
「平野太陽」
そうその名前は太陽そのものだった。なんと一緒に仕事をする人は太陽だった。葵は視界が鮮明になったのを感じた。
しかもその下には仕事をするために相手先のところへ出向くことと記されていた。
「これって・・・」と葵が考える。
「あなたにきて欲しいって書面で書いてある。正直あなたに行かせると何しでかすかわからないからこっちは不安でしょうがないけどあっついはあなたでなければダメらしい。しょうがないから許可した。いい。重要な取引だから絶対にミスはしないで。それだけ。」
上司は不満げそうだった。しかし取引先の条件だから仕方なく葵に託すことにした。
「明日からそちらの会社に出向いて欲しいらしいよ。だから明日からその仕事に専念しなさい。」
「わかりました。ありがとうございます。」そう言葉を交わし葵は自分のデスクへと向かった。
葵は安心した。しばらく会社に来なくていいことと太陽と仕事ができることで自分を攻撃してくる人が来なくなることが何よりも嬉しかった。
希望が見えた。その希望は太陽が作ってくれた。また太陽に救われた。太陽が葵にとっての希望になっていた。
昼過ぎになり太陽は昼食をとり上司と話をしていた。太陽と葵が仕事をする件で上司は葵の話も聞いときたかったと伝えた。実際葵の心の負担を取ることが目的だが仕事もするので上司は話しておきたかったのと葵の状況も知っといてどの様にフォローするのかを考えていきたかったらしい。
「平野くん。今から日向さんの職場に電話してきて欲しいと言っても大丈夫かな。結構無礼なことだけどいち早く日向さんをあの会社から話した方がいいと思う。」上司はそういうと太陽は二つ返事で「はい」と答えた。
そうして上司と太陽は葵の会社に電話をした。葵の会社の上司も承諾して今から葵がくることになった。
「平野くん。日向さんを相手の会社まで迎えに言ってあげな。その方が彼女の安心するだろうしその方がいいよ。こっちの仕事はなんとかなるから気にするな。」と上司は太陽に指示を出した。
「ありがとうございます。迎えにいきます。」と太陽は言って葵の会社へと向かった。
一方葵は太陽の会社に出向くことを本当に喜んだ。今すぐにでも出たかったので葵は急いで準備をして会社の前で待っていた。
しばらくすると一台の車が会社の前に止まった。太陽の車だ。中には太陽が乗っていた。
「陽くん。」とおもわず葵は声を上げてしまった。
「日向さんダメだよ。まだ会社の前だし仕事中だからそこは分けないと。もしもバレたら止められるかもしれないし。」
太陽に言われ葵は周りを見渡した。誰もいないことに安心して葵は太陽の車に乗り込んだ。
車の中で太陽はこれからの段取りを説明した。葵は太陽の会社の多くの人が私を心配してくれているのに驚きが隠せなかった。自分の会社では誰一人心配してくれる人はいなかったので環境が違えばこんなに違うんだと実感した。そして少しだけ私も誰かに認めてもらっているんだという思いも生まれた。
「ねえ陽くん。この話になった時に陽くんの会社の人たちはなんて行ってたの?」と葵は浮かんだ疑問を聞く。
「上司も社長も全力で協力するって言ってくれよ。他の会社の人もみんな理解してくれたよ。」と太陽が答えると葵は安心したと同時に嬉しさも出てきた。
「人ってやっぱりこんなに優しいんだね。まずは会社に行ったら社長さんをはじめ会社の人にお礼を言いたい。」
「うん。そこはあおちゃんの好きなようにしていいと思うよ。」
「ありがと。」
二人とも太陽の会社の人たちにはとても感謝しておりそのことを改めて伝えようと思った。
太陽が会社に着くと外で上司と社長が待っていてくれた。
「社長、松岡部長。わざわざありがとうございます。」と太陽がお礼を言う。葵もそれに続けて一礼する。
「初めまして。日向葵と言います。この度は色々とご配慮いただきありがとうございます。よろしくお願いします。」
と葵は挨拶をする。
「日向さん。お気になさらず。中に入って話しましょう。」と上司が言って四人は応接室に向かった。
応接室に行き葵は社長、上司に今まであったことと今日会社であったことを話した。それを聞いた上司と社長は言葉が出なかった。家のこと、元彼や会社でされてきたこと。太陽から聞いてはいたが想像を超えていた。
少し重い空気になったが社長が口を開いた。
「葵さん。今まで私たちが想像をできないくらい苦労されてきたと思います。本当に辛い思いをされてきたのがわかります。ですが今は葵さんを大事にしてくれる人、葵さんを理解して認めてくれる人がいます。安心してください。ここの人はあなたを攻撃する人はいません。ゆっくり心を休めるための環境を作ります。葵さんの心が回復できるようサポートして行きます。」
社長の言葉には重みがあった。葵のことを理解して葵の心を第一に考えてくれている。太陽はこの会社がますます好きになった。
「葵さん。明日からの仕事は平野くんと家でやってもらうことになっているけど大丈夫でしょうか。家で仕事した方が体調も安定すると思うし平野くんも家で仕事してもらうから何かあったときにもすぐに対応できると思うのでその方がいいと思います。だけど週に一回は会社に顔を見せて欲しいです。葵さんの様子もこちらとしても把握しておきたいので、けど無理に行こうとはしなくていいのでまずはゆっくりと心の回復に専念してください。」
上司はにっこりしながら葵に話しかけた。葵の目から涙が溢れ出ていた。
それを見た社長が声をかける。
「葵さん。泣きたい時は泣いても大丈夫ですよ。自分の気持ちに正直になって泣きたい時は泣いて辛い時は誰かに助けを求めていいんですよ。それが人間ですし。大丈夫です。ここの人たちは受け入れてくれますよ。」
社長の言葉を聞いてさらに葵は涙を流す。太陽葵の横に行き葵の背中をさする。
あおちゃん。あおちゃんの味方はたくさんいるんだよ。一人じゃないんだよ。確かに過去のあおちゃんは一人だったかもしれないけどさあおちゃんがあの時どうにかしたいと思い公園に行ったんだよね。そのどうにかしたいって思いが僕と出会わせてくれたんだよ。あおちゃんが変わりたいって思ったからこうして変わって言ってるんだよ。だから安心して。あおちゃんはもう一つじゃない。」
太陽の目も涙が浮かんできた。
あの時の選択があるから今がある。そして未来を変えていくのは変えようとした人だけ。未来のために今何をするのか。それが本当に人生に影響していく。葵はまさに未来を変えるようにいろんなことをしている。葵はここからゆっくりでも変わっていける。もう一人じゃないから。
こんなことを思っていると太陽も浮かんでいた涙が流れていた。社長と上司はそれを優しく見ていた。
人の温もりが応接室を包む。そのはひまわり畑のようにキラキラと輝いていた。
葵が泣き止むのを三人はずっと待っていた。その間太陽はずっと葵に寄り添っていた。しばらくして葵涙を拭いて顔を開けた。
「陽くんとあってからいろんな人と会いました。ツッキーさんや渡辺さん。そして会社の社長さんや部長さん。本当にいい人たちに会いました。本当に今までにないことが起きています。皆さん本当にありがとうございます。みなさんに感謝を伝えたいです。ありがとうございます。」その顔には笑顔が見えた。
「笑顔が見れてよかった。」と上司と社長は顔を見合わせて笑う。
太陽と葵も笑顔になる。葵は心が軽くなったのを感じた。
「ところで陽くんとあおちゃんと呼び合ってるのいいね。」と上司が太陽をつつきながらいう。
「「あっ」」と二人の声がハモった。
「すみません。職場なのに・・・」と太陽が弁解する。
「全然大丈夫よ。二人が仲良い証拠だから。」と社長がカバーをする。
「すみません。気をつけます。」
「私も気をつけます。」
「青春だな。」という上司の言葉が応接室に響く。
二人は今日は早上がりしていいとのことなので家に帰った。
家に帰って二人は晩御飯を食べそのままベッドに入った。ベッドでは今日のことを色々話した。安心したのか二人は自然に眠りに入って言った。