会いたくない人との再会。そして人の暖かさ。
デートの帰りの車内で葵のケータイにある男から連絡がきていた。蒼井が今一番会いたくない人からのメッセージだ。「なんでこの人からメッセージが届くのかわからなかった。LINEもブロックしたはずなのにLINEからメッセー沿いが届いていた。なんで。せっかく陽くんと楽しいデートをしたのに。嫌だ。会いたくない。」と葵は心の中で思っていた。
そんなことを思っていたら太陽から声をかけられた。すごくありがたかった。けどここでこの事を話したらせっかくの雰囲気が台無しになるし陽くんに変な心配掛ける。それだけはやだ。
そう思って葵は無理やり笑顔で太陽に答えた。
なんとかごまかせて公園に着いた。そこで陽くんと思いっきりハグをした。陽くんの暖かさが染み渡る。このままずっとこうしていたい。けど向き合わなきゃ。陽くんが私に光を照らしてくれているんだから頑張らないと。
そう思って葵は太陽から離れた。そしていつもいつも以上の笑顔で太陽を見送った。
怖い。会いたくない。嫌だ。そんな思いが葵に積もる。けど太陽がいる。そう思い勇気を振り絞り葵は家に帰った。
家に着くとなぜか玄関が空いていた。ちゃんと鍵も閉めたはずなのにドアが開いていた。恐怖で鳥肌が立つ。意を決して中に入る。
部屋の中は電気がついていた。そこに見覚えのある人がたっていた。
「なんで・・・」と葵は声を震わせながらいう。その男は葵の方を振り向く。
「秦。なんでいるの・・・」と葵はそいの男に問いかける。
秦。葵の元カレであって散々葵を貶してきた相手だ。太陽と会う前に別れたはずの彼だ。彼はもういい。とあの時言って自分から出て言ったのに今になってなぜきたのかが意味がわからなかった。鍵も変えたのにどうしているのかがわからなかった。いや。一つ方法がある。自分の親だ。うちの親は秦との関係を保たせるためにあらゆる事をしてきた。今回も鍵を作って渡したに違いない。葵はそう確信した。
「なんでいるのって。お前は俺の会社とお前の親の会社のために結婚するんだからね。てかそのために生きてるんだろ。それしか生きる意味ないのに。」
秦はそう言い放ち葵に近づく。
「来ないでっ。」
葵は精一杯の声を出した。しかし秦は葵の声にお構えなしに近づいてくる。
「ねえ。俺にそんな態度していいの?この前の取引先のミスも俺がうまく潰してあげたのにさ。取引先でミスをするなんて本当に情けないね。やっぱりお前の両親が言ってた通りなにもできないんだな。生きている意味本当にないね。俺と結婚する以外。」
秦は御構い無しに葵を罵倒してくる。
そして秦は葵の目の前までにきた。そして葵の方を掴む。そしてさらに言葉を言い放つ。
「本当に顔だけは多少いいんだな。顔だけな。けど親の会社がなきゃ何も価値がないんだよな。そんなお前をもらってあげるだけありがたく思え。」
そう言い放ち葵の方を強く押した。葵は思いっきり床に叩きつけられる。
痛い。辛い。過去のことが一気に蘇る。思い出したくないのに。せっかく光を見たのに。陽くんが私を照らしてくれたのに。陽くん。・・・
太陽の顔が思い浮かぶ。太陽が助けにくる。そんな予感が一瞬だけした。
「あおちゃんからライン返ってこないな」と太陽はスマホを見ながら呟いた。いつもなら返ったあとすぐにラインが帰ってくるのに今日は帰ってこない。今ままでこんなことはなかったので不安が募って行く。太陽は LINEにもう一言だけ「大丈夫?」遠くって返信をまった。
床に叩きつけられた葵は腰に痛みが走る。その様子を秦が笑いながら見てきた。痛くて涙が出そう。痛い。辛い。
「そんなに言うたかったか?」と秦が笑う。
葵は絶望を感じた。もう何もしようがない。そう思ったときポケットに持っていたスマホの通知が来る。見なくても太陽体と思った。太陽にせめてこのことを伝えることができればと考えた。しかし秦がいる状態では何もできない。葵は色々と考えたがいい考えが浮かばない。一か八か携帯を取り出そうとし手をポケットに入れ携帯を取り出した。
「携帯なんて取り出して何してるの。」と秦の声が響き携帯をとった葵の手を踏みつけた。
「痛い・・・」と葵の声が響いた。それを見て秦は高笑いしている。
「携帯なんて見ても誰も助けも呼べないだろ。意味ないことするなっ。」と秦はいう。
携帯さえ取れれば助けが呼べる。私は以前と違って助けてくれる人がいる。大事な人がいる。そう思いながらも秦に踏みつけられている腕が痛む。
葵は痛さと苦しさで涙が出そうになる。
「何もしないから話してよ。」と葵がふりしぼった声で言う。
「しょうがないな。」と言って秦は踏みつけていたてから足を話す。
「離しててくれてありがとう。」
「こんなことされてるのに感謝するんだ。やっぱ本当に悲しい人間だな。」
秦は平気で罵倒してくる。その言葉一言一言が心に刺さる。心がボロボロになって行くのをかんじる。せっかく太陽と楽しい時間を過ごして少しずつ治ってきた心の傷がまた増えて行く。
葵はどうしようか考えた。ふと考えが浮かんだ。
「トイレにさえ行ければ・・・」と葵は考えた。ちょうど尿意も結構あったのでこの作戦にかけて見ることにした。
「ねえ秦。トイレ行きたい。結構我慢してるの。」と葵はいう。
「は?そうやってトイレにこもる気だろ。行かせるわけないじゃん。」と秦は言い放った。
「本当に限界なの。ねえ。行かせて。」葵は涙目で訴える。
「だったら漏らせば。大人にもなって漏らすとかちょー恥ずかしいよな。」ちお秦は高笑いしていた。
「そんな・・・」と葵の声がか細くなる。
このてもダメだったかと思うと同時に胸が苦しくなる。逃げたい。今すぐここから逃げ出したい。でもどうしたらいいのかわからない。必死に頭の中で方法を考えた。
やっぱこんなに連絡が来ないのはおかしいと太陽は不安がますます募って言った。葵の家は前に一回行ったことがあって家の場所は知っていた。もしこのまま葵の身に何かあった時は太陽は後悔するだろう。そんなことを考えてた。もしここまま行かなかったら絶対に後悔する。そう直感で感じた。太陽は直感を信じ葵の家に行くことにした。ひょっとしたら手遅れになるかもしれない。そう思うと太陽は携帯を持って家を飛び出した。葵の家から太陽の家までは20分くらいかかる。太陽は未落ちをひたすらに走った。
葵も次の方法を考えてある方法を思いついた。母親に連絡するふりをして太陽に電話をしようと思った。声でバレる可能性があったがそれにもうかけるしかなかった。葵は痛い手を我慢して携帯を握り LINEを開く。太陽の LINEを開き名前を母親とした。幸い太陽の LINEのアイコンは富士山の写真なので見えてもすぐみ見てもバレないと思った。
「ねえ。せっかく秦が来たからお母さんに報告させて。」と葵はスマホを操作しながら望みをかけて言った。
「本当に母なのか?でもお前に電話するような相手もいないよな。」と行って秦は許可した。
「ありがとう。」
震える手を必死に抑えバレないように太陽に電話をする。
太陽は走り続けて待ち合わせをする公園までついていた。公園についたときに車で来ればよかったと気づいたが太陽はそんな頭が回ってなかった。今更気づいても遅い。公園で息を整えて再び走り出した。その時スマホに着信がきた。葵からだ。葵から電話が来るのは初めてのことだった。きっと何かあったんだと確信した。
太陽は電話に出ると葵の声が聞こえた。
「もしもしお母さん。私だけど今秦くんが家にきてて話ししているの。」
太陽は最初戸惑った。お母さんという言葉と秦くんという言葉に疑問が生じた。でもすぐに察した。ここは自分の声が出さないほうがいいと思い頷くことしかしなかった。この時に葵に何か起きていることが確信に変わった。早く行かなければ。と思い走りながら電話に出た。
すると電話は「あまり長いこと話すと秦君に悪いからきるね。またね。」と言って電話が切れた。葵のsosは太陽に伝わった。太陽は全力で走って葵の家に向かった。
「親との会話素っ気ないな。本当に親との会話してたのか。親の声も聞こえなかったし。」と秦が疑い始めた。
「本当だよ信じて。」と葵は秦を睨みつけていう。
「信じられないな。」と秦は葵の握っているスマホを取ろうとした。
「やめて。」と葵も手と腰が痛む中必死に抵抗する。スマホを取られたらいくら偽装をしてたとはいえ LINEのトークを見られたらバレてしまう。
「なんで抵抗してるんだよクズが。お前が目的じゃなくてお前の親の会社との関わりが目的なんだよ。だから素直に俺と結婚しとけばいいんだよ。それしか取り柄がないんだよ。所詮お前に興味ある人間もお前を大事にしてくれるやつなんかいないんだよ。」と秦が怒鳴る。
その言葉が葵の心の中をグサグサにさす。過去のトラウマがフラッシュバックする。葵の心はもうボロボロだ。今まで言われて来た言葉、暴力が全て蘇る。学校、両親、秦、会社。全てが葵の敵だった。その時されて来た全ての嫌なことが鮮明に思い出される。
そして手にも力が入ってこなくなりスマホが秦に奪われる。そして LINEを開かれ太陽とのログを読まれてしまった。
「なんだこれは。」と秦は葵を睨む。秦は続けさまに LINEのトークを読み続ける。ある程度読むと笑いが聞こえて来た。
「お前正気か。彼氏いるとか。俺がいるのに彼氏がいるなんて本当にアホだな。こんな履歴消してやる。と行って太陽とのトーク履歴を消そうとした。太陽との思い出を消されたくない。嫌だ。絶対に嫌だ。
「やめて。」と葵が叫ぶ。秦が振り向いて足を向ける。そして葵の体を蹴った。
胸に激痛が走った。痛みで涙が出る。
「こんなのすぐに消してやる。」と秦が言った時だった。
ガチャ。と玄関が開く音が聞こえた。
「葵!!」と叫ぶ声が聞こえた。それはいつも聞きなれた声だった。
「陽ちゃん・・・」と葵は微かな声を出す。
「誰だお前は」と秦の怒鳴り声が響く。
「お前こそ誰だよ。葵。大丈夫か。」と太陽は葵のもとに駆け寄った。
「陽ちゃん・・・陽ちゃん・・・」と葵入って太陽に手を伸ばした。葵の手は腫れていた。
「おい。葵に何をした。」と太陽は秦を睨む。
秦も睨み返して「何したって関係ないだろ。こいつは俺の道具に過ぎないんだから。」
「何したって言ってんだろ。」
普段見ないキレた太陽を見て葵も怖さを感じた。しかしそれより太陽が来てくれた安心感の方が数百倍勝っていた。
「お前わかった。葵の元カレだろ。葵から話は聞いている。」
「お前が彼氏か。なんか弱そうだな。やっぱ虫けらあと付き合うのは同じ虫けらだったか。」と秦は嘲笑う。
「虫けらでもなんとでも言えばいい。葵は俺にとっての最高の彼女だ。こんな最高の彼女はいない。世界一だ。」と太陽は言い切った。
「くだらな。そんな臭い言葉どうだっていいわ。」秦は二人を見下したように言う。
太陽はすごく頭にきた。今にも殴ってやりたかった。しかしそれは得策ではない。ここは少し頭を使うことにした。確か葵の元カレ(秦)は大きな企業の社長なはずだ。このことが公にバレたらよくないはずだ。そのことを使いハッタリをかけることにした。
「大きな企業の社長さんがこんなことしていいんですかね。これがバレたら会社に大ダメージ受けますよ。今このこと録音してありますし警察官の友達と今通話繋げてますよ。このまま葵に手を出すならこのまま警察が来ちゃいますよ。それが嫌なら今すぐでてってください。そうしたら今回の件は穏便に済ませます。けど一つだけ約束させてください。葵さんにもう二度と近づかないでください。次近づいたら警察に容赦なく突きつけますからね。」
と太陽は言い放ち携帯の画面を見せた。そこにはツッキーという文字が見えた。太陽は葵の家に来る前にツッキーにもこの話をしていた。ツッキーもただ事ではないと思い通話を繋いどいてもらった。実際ツッキーは警察官ではないが警察の友達は何人もいるので警察に言うのは簡単だった。
携帯越しにツッキーがいう。
「今の話聞かせてもらっているんで全然対応しちゃいますけどいいですか?」と一言だけ言い放った。
秦はキョドッていた。分が悪くなったか秦は「くそっ。出て行ってやるわ。こんなしょうもない奴なんてどうでもいいわ。」と言い去って葵の家から出て行った。
「あおちゃん大丈夫?」とさっきとは裏腹に優しい太陽の声が響く。
「陽ちゃん・・・ありがとう。」と言って葵は泣き出す。
「体とか大丈夫?痛くない。」と太陽は言葉を続ける。
「腰と腕と胸が痛い。蹴られたりされていたい。あとトイレ漏れそう・・・」と葵は泣きじゃくりなが言った。
「そうか。まずはトイレに行こう。歩ける?」
「一人では無理かも。」と葵は首を振った。
「トイレまで連れてくね。」と太陽に支えられ葵はトイレに行った。
トイレにいる間太陽はツッキーに連絡を取りここに来てもらうことにした。
実はツッキーは医者である。精神科が専門だが医者なので怪我などの知識もある程度ある。葵の様子を医者に見せたほうがいいのは素人の太陽でもわかることだった。
葵がトイレから出ると葵をベッドまで連れ添った。そこで葵を横にさせた。
「怖かった。辛かった。でも陽くんが来てくれて嬉しかった。」葵は全身を震えさせながら言う。
「ごめんね。もっと早く来てればこんなことになってなかったかもしれない。いや。帰りの車の中で気づいていればよかった。」と太陽は葵の頭を撫でながら言う。
「ううん。私が一人で行くからって言ったから。一人でなんとかしようとして。でも無理だった。また助けられちゃった。」
葵hなみだがとまらなかった。いくら泣いても涙が止まらない。感情がコントロールできなかった。
「あおちゃんは自分の力で勇気を出して立ち向かったんだよ。すごいよ。でもね。一人じゃ無理なことも世の中があるんだよ。その時は人を頼ってもいいよ。僕を頼って。頼っちゃいけない人なんていないんだから。」
太陽の優しい言葉が響く。葵はさらに泣いた。太陽はずっと葵の頭をさすっていた。
そうしているとガチャっと言う音がした。葵は一瞬ビクッとなったが太陽は「ツッキーだな。俺のよく話していた友達だよ。医者をしているし信用できる人だよ。」と言った。
太陽はツッキーを出迎えた。
「太陽。葵さんはどうだ。」
ツッキーは太陽に聞く。太陽は葵の容態を細かく話す。
容態を聞いたツッキーは自分の勤めている病院に連れて行くことにした。色々検査が必要だった。
二人は葵を介護しながらツッキーの車に乗せた。体を動かすために葵の表情がこわばる。いろんなところが痛むらしくとても辛そうだった。
「陽くん。ツッキーさんありがとうございます。」と葵は微かな声で言う。
「大丈夫よ。ツッキーも全然気にしてないし。」と太陽がいうとツッキーも言葉を続ける。
「そうですよ。人が大変な目にあっているのは絶対ほっとけないしこのくらい全然大丈夫。病院に行ったら色々検査するけどちょっとだけ頑張ってね。」
二人の優しさに葵はまた涙が出る。ツッキーも初対面なのにこんなに親切にしてくれる。人ってこんなに優しいのか。人のやさしさってこんなに暖かいのか。太陽で感じていたがツッキーの優しさを受けてさらに暖かさを感じた。
そんな様子を見ていた太陽はそっと葵の頭をだで続けた。少しでも葵の体の痛みが取れるように。そして葵が安心できるようにと。
頭を撫でられた葵は安心したのか太陽に寄りかかる。太陽の暖かさが頭越しに伝わってくる。
「葵さんも少しでつくから頑張ってね。痛み止めの点滴もすぐに打てるようにするから痛みも和らげられるからね。」とツッキーは後ろの二人にいう。病院までもう少しのところまで来ていた。
「もう少しだって。あおちゃんもう少し耐えてね。」
「うん。ありがとう。」
二人の様子をツッキーはミラー越しに確認していた。ツッキーも二人の幸せを心から願っている。この二人のためにできることはなるだけしてあげようと思っていた。
少しして病院に着いた。病院の裏口に回り葵を車から降ろした。裏口には白衣を着た若い人がストレッチャーを準備してしていた。
「渡辺先生ありがとうございます。夜で担当の時間ではないのにわざわざ用意までしてもらって助かります。」とツッキーは白衣の男性にお礼を言っていた。渡辺先生と呼ばれた白衣の男性は葵をストレッチャーにのせる。
「太陽さんですね。いつも月野先生から話は聞いています。彼女の症状とかは聞いてます。点滴を打って検査をするので一緒にきてください。」と渡辺先生は太陽に声をかけてストレッチャーを押しながら太陽を中へ案内する。
「渡辺先生ありがとうございます。」と太陽は頭を下げその後をついて行く。
「本当にありがとうございます。時間外なのにわざわざ対応してくもらって申し訳ないです。」とストレッチャーに乗っている葵も渡辺先生にお礼を言う。
「苦しんでいる人を助けるのが医者の仕事ですから。気にしないでください。日向さんもよくここまで耐えてくれました。もう大丈夫ですよ。」と渡辺先生は笑顔で答えた。隣にいたツッキーも「大丈夫。渡辺先生は救急対応の先生だから適切な処置をしてくれるよ。だから安心して。」と答えた。
そして処置室に着いた。そこで葵は痛み止目の点滴を打たれた。その後レントゲン室に案内され骨に異常がないか確認した。その後腹部エコーも取り内出血などがないかも調べた。
調べ終わった後処置室に戻りツッキーと渡辺先生はレントゲンの写真などを見ていた。
しばらくしてツッキーと渡辺先生が結果を説明しにきた。
「まず腹部エコーの方では内出血とかはなかったので命に関わるようなことはないと思います。」と渡辺先生から説明を受ける。
「よかった。」と太陽は一安心する。
腹部の出血があると最初は意識があるが徐々に意識を失ってしに至る危険性もある。胸を蹴られたということだったので念のため腹部エコーも必要だとツッキーと渡辺先生は判断した。
「出血は問題ないが手の甲の骨が折れているのと肋骨の一本にヒビが入ってから左手はしばらく固定が必要になるね。肋骨は固定しなくても大丈夫だけどしばらく激しい動きとかはできないから気をつけてね。」とツッキーが骨の状態を言ってくれた。
「ありがとうございます。」と葵は二人に感謝を伝える。
「二人ともありがとうございます。」と太陽もお礼をいう。二人には感謝しかない。太陽と葵は同時にそう思っていた。
しばらく葵の様子を三人は見守った。点滴で痛みも軽くなったのか葵は眠りについた。
その様子をツッキーは見て太陽に話があると言っておくの部屋に案内された。
二人は椅子に座りツッキーは太陽に喋りかけた。
「葵さんの怪我は骨は折れているがまあそれは治るけど葵さんの心の傷の方が俺は心配してる。精神科医の立場でいうけど心療内科で治療をした方がいいと思う。葵さんはこの件で過去のトラウマが蘇ったと思う。それは二人の電話を聞いていて思ったんよね。多分葵さんは今精神的にかなり不安定な状態になっているから本当はゆっくり休んだ方がいいと思う。」とツッキーは淡々と話す。その表情は真面目だった。続けてツッキーは話す。
「多分長期休みを取るのは葵さんの立場的にきついと思う。本当は原因となるものを解消するのがいいけどその原因が重すぎる。だから太陽が寄り添うことが大事になってくる。大変だと思うけど俺も全力でサポートはする。精神科医として。そして友人として。」
ツッキーの言葉はありがたかった。すごく心強かった。
「ありがとうツッキー。精一杯葵を支えるよ。」と太陽は力強くいう。
「けど無理するなよ。太陽が壊れたら元も子もない。いつでも相談に乗るから気軽に声をかけて。」
ツッキーはニコッと笑う。
その時扉が開く音がした。渡辺先生が入ってきた。
「私は救急医ですが専門は整形外科なんでこれから経過観察とかで通院をするときは私が見ますよ。そして今回の怪我の件なんですが被害届とかを出す際は私の知り合いに弁護士もいるんでご協力しますよ。」と渡辺先生もいう。ありがたかった。協力してくれる人がいるのは嬉しい。
「ありがとうございます。被害届に関してですが今回は二度と会わないという約束の代わりに被害届とかは出さないと言ったので今回は出さない方向で行きます。相手も大企業の社長などで色々使ってもみ消してきそうですし。もし次こういうことがあったらそのときはお願いします。」と太陽は説明した。渡辺先生はそれを聞いて頷いた。
「一応私の連絡先も教えときますね。何かあったらここに連絡してください。」と渡辺先生と連絡先を交換した。
「ありがとうございます。」と太陽は深々と頭を下げた。
「太陽。大事をとって葵さんを一日入院させようと思うけど大丈夫か?太陽明日仕事だよね。だからどうしようかと思ったけどこのまま帰るのも葵さんにとって良くないと思うからもし太陽が大丈夫なら葵さんを一日入院させようと思ってる。」とツッキーがいう。
太陽は明日仕事だったが事情を話せば上司たちは理解してくれて有給
をくれる会社だった。なのでそこは心配してなかった。
「その方がいいですね。一日様子見てゆっくりする時間も必要ですし。入院の手配はすぐにします。」と渡辺先生も続けていう。
言葉に甘えてそうしてもらうことにした。
そうして寝ている葵をストレッチャーで運び四人は病室へと向かった。
太陽は一回帰って準備をして朝またくることにした。その間葵は二人が様子を見てくれると言ったので甘えた。幸い二人は明日休みだそうなのでそれが安心材料になった。
太陽は病院にタクシーを呼んで自分の家に戻っていった。
タクシーの中で様々な思いが出てくる。車の音がその思いをかき消すように車内に響く。
今後も色々と大変なことや困難がくると思う。しかしそれを全部受け止める。葵のために。そして自分のためにも。そう心に誓った。