3日目のデートそして葵の誓い。
旅行最終日。2人はチェックアウトギリギリまで寝ていた。昨日海に行った後宿に戻りよ点風呂に入ったり会話を楽しんで夜更かしをしていた。
そのせいか眠気が買ってギリギリまで寝てしまった。
荷物を急いでまとめて2人は宿を出る準備をする。まだ昨日の余韻が頭に残る中余韻に浸っている時間はなかった。
準備を済まし2人は旅館を出た。2人はこの旅館を気に入ったのでまたきたいと思っていた。温泉も料理も風景も部屋も全て文句なしの素晴らしい旅館だった。
そんな旅館に感謝の思いを持ち2人は車に乗り込んだ。今日はゆっくりとお土産を見て回ることになっている。いろんなお店に行き様々なお土産を買っていった。シラスや干物といった海産物や地域限定のお菓子などいろいろなものを2人は購入した。
途中にあった小物が売っているお店に二人の気が取られた。そこには綺麗なガラス細工のお皿やコップが並んでいた。
「このコップ綺麗。」と葵は薄い青が透き通ったコップを指差した。そのコップは青色のガラスでできてあり光が当たってとても透き通っていた。
「確かにすごく綺麗だね。まるでこれまで見てきた海みたいな感じがする。」
太陽がそういうと葵も頷いた。コップの色が太陽に照らされている海の色とそっくりだった。
「本当に海みたい。ねえ陽くん。このコップお揃いで買おうよ。この旅行の証としてさ。」と葵は提案する。この旅行の記念として二人だけのお揃いのものを葵は欲しかった。
「いいね。記念になるし。この思い出も形に残しておきたいしね。」と太陽も言って青いコップを手に取る。
それを見て葵も手に取り二人は笑った。二人だけの記念のコップ。一生の大事なものになると思った。
コップを買おうと二人がレジに進む途中に向日葵のガラス細工があった。それはひまわり畑に咲いている向日葵にそっくりでした。二人は即決でそれも購入した。向日葵。二人を繋ぐ花であることは二人も当然のようにわかっていた。
コップと向日葵のガラス細工を買った店から出て二人はお土産を買うのを再開しようと思ったがお腹が空いたので近くの蕎麦屋さんに入った。昨日食べた豪華な食事もいいけれど蕎麦とか庶民的なものもまたいつもの味がして安心感があった。そんなことを二人で思いながら蕎麦屋を選んだ。二人でざるそばを頼んで一緒にすすっていた。空腹の井の中にそばの香りが広がっていく。
蕎麦をを堪能した二人は再びお土産を買いに戻った。いろんなものが売っておりついつい買ってしまいどんどんものが増えていく。両手がふさがるほど復路で溢れかえっていた・
ある程度買い終えたところで葵は太陽にあることを聞いた。
「陽くんこんなに買ってどこに渡すの?」と葵おは不思議そうだった。葵は特に渡すところはなかったので自分のしか買わなかったが太陽はその3倍近くの量を買っていた。
「会社とツッキーと実家に渡す分だよ。いろんな人にお世話になっているからその人たちにほんの気持ちでも届けたいからさ。」
葵は太陽の言葉を静かに聞いていた。少しだけ悲しそうな顔をしていた。
まずいこと言ったと太陽が思った。葵に他の人とかの関わりをすると自分のことを気にしてしまう。そう気をつけていたのに話をしてしまったことを公開した。
けれど葵は顔を上げて笑顔で言葉を発した。
「陽くんは本当に色々な人に支えられているんだね。私も最近までは本当に1人だと思っていたの。けどね、陽くんと出会ってから私のことを支えてくれる人がいるって思えたの。だから今は全然さみしくはないの。だから平気。」と葵はニコッと笑った。
どうやら葵は太陽がそのことをかなり気にかけててくれたのを感じ取っていた。太陽も出さないようにしていたがそれもバレバレだった。けど葵の言葉を聞いて少しだけ安心した。葵が前向きに捉えてくれていることに少しだけホッとした。少しだけでも葵にいい影響を与えることができてるのかなと思った。このままもっと葵が明るくなってほしい。そんな思いが湧いてくる。
そんな葵を見ながら太陽は荷物をまとめて車に乗せた。多くの荷物が車のトランクを埋める。2人の思い出が溢れかえっているようだ。
予定より早くお土産購入が済んでしまった。太陽はどうしようかと考えていた。そんな時葵はそっと言葉を発した。
「あのひまわり畑に行きたい。」
太陽は驚いた。多分今ヒマワリ畑に行っても枯れているだろうし綺麗な風景が広がっているわけでもないのにどうしてひまわり畑に行きたいのか疑問に思った。
「今ひまわり畑に行っても向日葵咲いてないよ。」と太陽がいま思った疑問を葵に聞く。
「うん。それでも行きたい。あの場所は私のとって大事な場所だから。」と葵は見つめて行ってくる。
確かにあそこは2人にとって大事な場所だ。それは向日葵があってこその場所だと思っている。太陽が考えていると葵は続けて答えた。
「確かに向日葵は今咲いていないかもしれない。でもあの場所というのが大事だの。私と陽ちゃんの大事な場所。初めてのデート、告白。そしてこれからも大事なことはあそこですると思うの。だから行きたい。付き合ってからの初めてのデートって重要なことじゃん。だから行きたいの。」
葵は必死にひまわり畑に行きたいことを太陽に伝えた。太陽はそれを受け止めた。
「行こう。ひまわり畑に。」
そう葵に伝えたら葵の表情が明るくなった。
「ありがとう。わがまま言ってごめんね。」
「全然大丈夫。全然わがままじゃないよ。いこ。」
太陽がそう言って車を走らせた。
2人はひまわり畑に行くために山梨へと向かった。
行きに似た光景と同じだが帰りの風景は少しだけさみしさを感じた。楽しかった旅行の終わりが近づく。葵はこのr旅行が終わるのが嫌だった。
この旅行は葵にとって本当に非現実的だった。太陽といろんな神社に回り一緒にお風呂にも入り誕生日も祝ってもらえた。今までで味わったことのない気持ちになった。
太陽も同じ気持ちだった。葵が元気になって行くのを感じ取れた。葵の心の闇はまだまだ深くなかなか消えないものだと思っているが少しずつでいいからその闇が薄くなっていけるように葵ともっと楽しいを作って行こうと改めて思った。
2人だけの思い出をこれからも作って行こう。2人は帰りの車で同じことを思った。
2時間半くらい車を走らせひまわり畑についた。いつもの駐車場に車を置いてひまわり畑に向かった。ひまわり畑に進むとそこには枯れた向日葵が多数あった。その中にもまだ咲いているひまわりも数本あった。その光景はさみしい感じもあるが希望も感じられた。
「だいぶ枯れてるね。けどこれもひまわり畑でしか見れない光景だよね。」と葵がひまわり畑の光景を見ながらいう。
「うん。さみしさもあるけどさみしさだけではない。なんていうんだろう。光も感じられるんだよね。どんな闇でも光はある。希望がある。そう思えてくる。」と葵は言葉を続けた。葵がいうとすごく重みを感じる。
「僕もそう思う。どんな状況でも希望はある。その希望をつかんで幸せになるのは周りのフォローも必要だけど最終的には自分でつかむものだと思う。あおちゃんも今必死にその希望をつかもうと努力しているのが伝わってくるよ。僕はそれを応援するしフォローしていくよ。今も。そしてこれからも。あおちゃんがどんなに周りから嫌われようと僕はあおちゃんのそばにずっといます。」
太陽がそう言って葵の頭を撫でる。自分で言ってなんかカッコつけてるなとは思ったけど思ったことなので素直に口に出した。葵の目から涙が見えた。
「ありがとう陽くん。」私頑張る。と葵ははっきりと答えた。
それを聞いた太陽はにっこり笑った。
「一緒に頑張ろうね。でも無理はダメだよ。ゆっくりでいいからお互いに幸せを作って行こうね。」
太陽の声が葵に響く。とても心地が良い声だ安心感がある。
葵はそのまま太陽の胸に飛び込んだ。太陽はそれを受け止める。そっして思いっきり抱きしめた。胸の中で葵がすすり泣く声が聞こえる。その声が消えるまで太陽はずっと抱きしめていた。
枯れた中に咲いているひまわり達はそれをずっと優しく見守っていた。二人の新たな決意を見守っているかのように。
しばらくして二人は身を離した。葵の目からは涙が消えていた。夕日がひまわり畑を照らす。楽しい時間が終わるのを夕日が知らせようとしている。まだ終わりたくない。二人の気持ちは一緒だった。
「あおちゃん。本当にありがとうね。この旅行はもう終わりだけどまた二人で出かけようね。一緒にご飯とかも食べようね。終わりだけど新たな始まりでもあるよ。だから僕は全然さみしくないよ。今後もよろしくね。」と太陽が一言一言思いを込めていう。葵もそれに納得した。
終わりが始まり。それの繰り返し。そうやって今後も過ごして行こう。葵そう心に誓った。
二人は車に乗り帰路へついた。楽しかった余韻が二人を包み込む。
そんな中葵の携帯に通知が入った。それを見た葵は明らかに表情が暗くなるのがわかった。横でそれを見ていた太陽はすかさず葵に声をかける。
「大丈夫だよ。ちょっと目が眩んだだけ。」と葵は笑顔で答える。その笑顔は引きつっていた。
「大丈夫ならいいけど・・・」と不安そうに太陽が答える。
不安が残るが本人が大丈夫と言っているのでそれ以上深追いはやめといた。
そうしているうちに公園に着いた。
「陽くん3日間運転とか色々ありがとうね。とっても楽しかった。また行こうね。帰ったらラインするね。」と笑顔で言った。その笑顔は先ほどとは違い満遍の笑みだった。
それを見て太陽は安心して「こちらこそありがとう。ありがとね。LINEするね。」と言った。
そして二人はハグを交わし帰路についた。
太陽はこの三日間のことを思い出しながら家に帰った。そして葵のLINEを待っていたが一向に来なかった。
嫌な予感がする。本能的にそう感じた。