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恋を諦めて選んだもの

作者: やつれた人形

大きな王国の端にある小さな村。

人口はおよそ200人。

森で覆われ、一番近い村まで馬車で3日。

商人などは来ることもなく、自給自足で成り立っている。

戦争などが起こってもこの村に被害は出ることはなく、一番安全で平和な村だと言われている。

しかし、この村に住む人々は首都の次に戦力がある村だとも言われている。

この村にいる人々は女子供も数々の魔法を使い、戦士にも劣らぬ体術、武術をもつ。

村人が強い秘密は森にある。

そこには、数々の魔物がおり、日々自分が生きるための糧を得るため奮闘している。その戦いの中に村人も含まれている。ただ、それだけのこと。

生き残るために戦い、勝利し、生活している。

さて、こんな村が、平和なのだろうか。

今のこの国の状況に置いては、きっと平和な方なのだろう。


この国は今、魔王を討伐するための勇者が現れたことで、強者を募り、魔族を殲滅しようとしている。

これは勿論大きな戦争になるだろう。

様々な戦略が飛び交い、何の力もない国の民ですら巻き込まれて死ぬことになるだろう。

勇者は、自分が認める強者を探すべく、時には、魔族と戦い各地をまわっている。


最初に紹介した小さな村に15年前、二人の命が誕生した。

ベルと名付けられた男の子とエルと名付けられた女の子は生まれた家は違ったが、兄妹のように仲良く一緒に育っていった。


10歳になったベルとエルはこの村の人々でも驚くほど強くなっていた。最年少で『一人前の証拠』と言われるレッドベアを二人とも狩ってきたのだ。戦士として認められたベルとエルは鍛練を忘れずに更に別のことに挑戦し始めていた。ベルは鍛治と召喚魔法をエルは家事と治癒魔法を勉強し、習得するために努力していた。15歳になる頃には完璧ではないが形にはなっていた。


15歳になったベルとエルはそろそろ結婚してはどうだ、とまわりから言われるようになった。近い年代の者はいないし、この村に来る物好きはいないし、仲が良い2人だ。村の人々は二人の結婚祝いを楽しみにしていたのだ。ベルとエルはいつからかお互いを意識してる。兄妹のように育ってきたのだ、今さらプロポーズするのが恥ずかしくて言い出せないのだ。


ある日、この村に3人の旅人がやって来た。

それは、強者を集めて旅をしている勇者だった。

この村に来た理由は、強者が多いと名高いこの村に戦力を求めて来たのだ。そしてスカウトされたのは村の大人たちではなくベルとエルだった。 村の人々は正直ベルとエルをつれて行って欲しくは無かった。今年は10年に一度のスタンピードが起こる年、最大戦力を失いたくはなかったのだ。だが、ベルもエルも勇者に興味を持ちはじめていた。なにせ、自分たちとほとんど変わらないであろう歳の少年が自分たちがこの村の中でも強者に入ると見破ったのだ。きっと彼も強者だ。その強者が仲間を集めて挑む敵に興味を持ちはじめていた。


勇者の誘いを受けたベルとエルはとりあえず村長に顔を向けた。

ベルもエルもあくまで村人、村の長である村長に意見を求めたのだ。

村長の出した言葉は単純だった。

『好きにしろ。』

その言葉を聞いて先に口を開けたのはエルだった。

「私は行ってみたいです。」

村長が『そうか。』とうなずく。

村長や村人がベルを見る。

「僕はここに残ります。」

エルが驚いた顔をし、村長が『いいのか?』とたずねる。

「僕はこの村が好きです。勇者のパーティーに入るとなれば魔族はその故郷のこの村を襲いに来るでしょう。みんなが簡単にやられるとは思えないけど時期が悪い。スタンピードど重なれば流石にここも落ちることになる。だから僕は残ります。」

エルがすかさずこの意見を否定しにかかる。

「スタンピードなら今からここにいるパーティーで魔物の数を減らせば防げるでしょ!一緒に行きましょ!」

だが、勇者が申し訳無さそうに口を挟む。

「すまない。あと7日後には魔族領に入らなくては行けない。この森の規模だとスタンピードの出所を調べるだけでも2日はかかる。ここから魔族領まで6日かかる。すまないができれば今日のうちに出発したいと思っている。」

「だったら私もこの村に…」

そこまで言ってエルはその先を言うのをやめる。

ベルがその先の言葉を聞いたら幻滅してしまうと思ったのだ。

2人で一人前になった日にした約束。

『お互いに、嘘は無しだ。一度やると決めたことは最後までやりとおす。約束だぞ、エル。』

お互いに一人前になり。まるで英雄のような気分になっていた時に勢いでした約束。だが、その約束はベルとエルの中でとても大切なものになっていた。

だからエルはその先を言うことはできなかった。

言う言葉は別だと思ったからだ。

「待っててねベル。すぐに終わらせて帰ってるから。」


こうしてベルは村にとどまり、エルは勇者のパーティーとして魔王討伐に向かった。


ベルはその後、村人と協力し、スタンピードを乗り越え、案の定やって来た魔族と戦い、成長していった。

エルがいなくなり2年、暇がなくなったと手紙が届いた、これからは手紙を出せなくなるらしい。

配達に来る商人からいろいろな噂をきく。勇者たちが四天王の1人を倒した。勇者と聖女は一番人気だ。聖女は勇者に恋をしたらしい。商人とは仲良くなり、エルから手紙が届かなくなっても彼女はこの村に来るようになった。

エルが行ってから5年、噂では、一年前に四天王を全員倒し、今年は魔王の城に乗り込むらしい。

ここまで来るともう魔族はこの村にはこない。

ベルには弟子もでき、この村の戦力は更に上がった。

もう、この村はベルが守らなくても大丈夫だろう。

ベルは考えた。勇者のパーティーを追って魔族領に行くべきか。

エルが待っててっと言ったので待ってるべきか。

ベルは役目を失って気づいてしまった。

エルの顔を思い出せないことに。

エルももしかしたらベルの顔を忘れたのかもしれないと思ってしまった。

「エル。待ちくたびれちゃったよ。僕は君の顔を思い出せないや。君の顔を忘れるような僕に、君に告白する権利はあるのだろうか。」

思わず呟いてしまった。

よくよく考えたら、こんな長旅をしてるのだ。誰かに恋をしてもおかしくはない。ベルはエルと相思相愛だったことを知らない。

お互いに相手は自分のことを兄妹ぐらいにしか思っていないと思っている。

「流石にもう無理だよな。」

これがベルの答えであった。


そしてベルは村長に『旅に出たい』と言い。村長は許可を出した。


そしてベルは旅に出た。目的はなく。ただ、ふらりと行きたいとこに行く。放浪の旅だ。


許可を出した村長は出発するベルを見て呟いた。

「もしエルが帰ってきて、ベルが勝手にどっかに行ってしまっとったら怒るじぁろうな。 まぁエルがまだベルのことを思っておったらじゃが。まぁ、待たせ過ぎなエルも悪いからのぉ。」

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