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戦争を語る仔  作者:
17/80

17 子どもの眼 獣の愛

 和知は頭を下げたまま、無表情に言葉を待った。

「ゲーリング公がいらっしゃっているわ。彼のお相手を」

「承知致しました」

 和知の主人はその素早い答えににっこりと微笑むと、

「和知は本当に頭がいいわ。私あなたが大好きよ」

「ありがとうございます」

 しかし、それは獣を愛するのと同じ感情。

 そして和知の言葉も、呻き声と同じ言葉。

 彼女は近付いてきて手をのべると、和知の頬にそれを滑らせて撫でた。『黒い髪』の人間にしては白い色の和知の肌の上を、それはなめるように滑る。

 和知の体の中心が不快感に身震いする。しかし、表層部分は飽くまで冷静だ。毛の筋ほどの不快感さえ顔に表れてはいない。それはここに来てから覚えた処世術。

 彼女はうっとりと和知の顔を眺めると、

「行きなさい、かわいい子」

 和知は一度ひざを折ると、彼女の脇を過ぎ、月の見えない見せかけの空のある部屋に入っていった。

 空は青く、風は白く、見せかけの自己完結した世界へ。

 宇宙の黒さなど知らないふりのできる世界へ。

 そこは、楽園と呼ばれる地、ユーリ・エバ。                                                                                                           


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