15 捜す者
「文官上がりの私には、荷が重過ぎます。軍の知識に長けた人物を用いたほうが」
「いや、君は私と同程度、情報に有利な立場にある。なにより、他の人間を新規採用することで、中央によけいな詮索をされたくないのだ」
「しかし、本当にまだクレッフェの生き残りがいるかどうかも分かりません」
「いなければどうしようもない、他の手を考える。だが、私より軍が先に動けば、カッセル次官に拘束されているクレッフェに第二の『ザゼルの悲劇』が襲うだけだ」
タナカの真剣な口調に、サベンコはため息をついた。
何が悪いと言えば、自分が今朝このメールを受け取ったことが悪いのだ。このなんというタイミングの悪さ。彼は自分の運命に向かって、心の中で罵声を浴びせた。
しかし、タナカに恩義がないわけではない。
しばらく堂々めぐりのような考えに身を任せ、それから観念してサベンコは顔を上げた。
「分かりました。すぐにでも、私が」
タナカは大柄な体で小さくうなづくと、またはたと自分の顔の険しさに気付いて少しだけ微笑んだ。
「すまないが、ことは急ぐ。サベンコ、頼むよ」
ひどく複雑な気持ちでうなづいたサベンコの気持ちは、言葉で表現することもままならなかった。そして、これは言葉で表現してはならない依頼だった。
どこからつつけばいいのか、目の前に広がる大きな森を一度大きく見回して、サベンコはため息をつきながら思案した。