14 接触の検討
「クレッフェの試験部隊の人間と接触できないものかな」
サベンコは息を飲んだ。それがどれほど危険なことか、分かっていたからだ。彼らは兵士だ。それも今の今まで存在を消すという形で迫害され、身を隠してきた。そういう人間が、左遷されて前線を退いているとはいえ軍関係者のタナカに、何のこだわりを見せずに会うということはまずありえないだろう。
だが、同じ『黒い髪』の人間ならばあるいは、と思わないでもなかった。
「カッセル次官に拘束されている者には、まず無理です。しかし、」
サベンコは言葉を詰まらせた。
タナカが促すように彼を見た。
「まだ捕まっていない者を捜すというのでしたらあるいは、……誰かに取り計らいます」
「いや、秘密裏にしたい。つまり……君に」
檻から放たれて森に逃げ込んだトラを捜せと命じられているように感じた。
自分たち軍の人間は、一度彼らに銃口を向けているのだ。それを今さら、安心して近付いて来いなどと言って、果たして通じるのだろうか。
唯一の希望事項は、彼らに言葉が通じるということだ。それがトラを捕まえる場合とは違う。コミュニケーションはすなわち理解に通じる。
サベンコは元々書記官で、文官上がり。軍人に懇意にしたこともなければ、比較的平和な土地生まれだったので、彼らの現実を目の当たりにしたこともない。想像すれど近からず、だろう。軍人といった人種がどういうものか、戦場の悲惨さを見て知るしかなかったのである。
極秘部隊ということで、クレッフェの名にはかなりの偏見を持っていた。
第一線にいた、『黒い髪』の野蛮人。実際には『黒い髪』の人間以外もいたと言われているが、そういった印象を消しきれないでいた。