13 消した男 消された男
「クレッフェを造ったのは我々、殺したのも我々だからな。そうそう都合のいい時に集まるわけはない」
タナカは皮肉っぽくなりながらそう言った。
サベンコもまた、タナカのその感傷に口を閉じた。
メールの用紙はそのまま封筒に戻され、タナカはそれをサベンコに預けた。
「カッセルはユーリ・エバに、軍とは別の、独自の情報網を持っていると考えていいだろうな」
「でなければ、この時期に軍がクレッフェの召集に関わろうなどとはしないはずです。クレッフェに関しては、彼が個人で動いていると考えられます」
「中央の汚点が一人前に部隊長気取りか」
苦々しくそう吐いて、タナカはサベンコに預けたメールを見た。
「その情報が私に上がってきたことをカッセルに悟らせるな。もし知られたら、彼は必ず私に圧力をかけてくる。このメールを訳したのは?」
「私です。他のものには触らせていません」
「では、決して他の人間に口外するな。メールのファイルに閉じてもだめだ。もし誰かに洩れた場合、私は君を疑わなくてはならなくなる」
「……分かりました」
ひどく神妙な面持ちでサベンコは答えた。
「それと、」
タナカは一瞬だけ迷ったような顔つきをした。
向かい合っている男に、確かにこれを打ち明けていいものかと迷っているようだ。