11 政府の人間 黒い髪の男にもたらされた沈うつな報告
サベンコは大きなドアをノックした。重々しい造りだが、戦後すぐに作られた急ごしらえの安っぽさは隠せない。しかし、軍の権威を固持するのに必要なものなのだろう。
中からくぐもった返事が返ってきた。
これほど大仰に作る必要があるのかと常々思っていたドアノブをまわす。彼にとって、それはとてつもなく重いものとなっていた。
正面に大きなデスク。座っているのはタナカと呼ばれる、大柄な武官だった。
来客中だったようで、彼の前にほっそりと痩せた小さな男が立ちつくして、こちらをふり返っていた。
「なんだね、サベンコ」
低く静かな声色でタナカは尋ねた。
顔色が良くない。ここ数週間ずっとタナカは疲れたような顔をしていた。大儀そうに椅子に座り込んでいる。足が悪いというのも周知の疾患で、彼はいつもこの席に座り込んでいる。
サベンコは、客の奇妙な目つきに威圧される形で、駆け込みかけた足を引いた。
「いえ、……来客があるようですので、出直して参ります」
「構わない」
ふり返っていた小さな男が、かん高い声でそう言った。
「私はもう失礼するところだ」
彼は神経質そうに席を辞することをタナカに伝えると、小さな体を大きく使って大股で部屋を出ていった。タナカは見送るばかりで、彼をとどめようとはしなかった。
戸口前で男を避けたサベンコは、その行方を目で追ってから、タナカをふり返った。
彼は空調のきいた部屋で大きく息を吐いた。それから、自分の表情の険しさに気付いたように少し笑って見せた。
「どうした?」
「あ、はい、」
サベンコはそこでやっと自分が固まっていることに気付いた。足を進めてタナカの前に進み出る。
「クレア・エバから、報告が入りました。今朝のことだったのですが、特別暗号文でメールしてあったため、翻訳に時間がかかりまして……」
彼は手に持っていた封筒を開け、中に入っていた紙を広げると、タナカの前に差し出した。それは小さな用紙だったが、ぎっしりと暗号文と訳文が打ち込まれている。
タナカはそれを手に取ると、まずは斜め読み、その後丹念に二度も読み直した。
彼の眉が次第に寄せられてゆく様を、サベンコも眉を寄せて見つめていた。
しばしの沈黙が、そして心理的な静寂が訪れて、それからタナカはむっつりと顔を上げた。
「……どうして、こんな急に……」




