1年目
一章 始まり
「おい…。お前は本当に行ってしまうのか…?この子らを置いて?」
男は聞いた。
「あぁ…。行かなくちゃならないんだ。どうしてもな。俺がこの世界を………………。
……だから、この子を育ててくれ。こいつには才能があるはずだ。立派な魔導士になれる才能がな……」
1 12年後
「カイトー!起きてー!朝ごはん出来たよー!早く!」
カイト、と呼ばれた少年は分かったよ、リナ。とーーー自分を呼んだ少女に返事をする。それから、急いで服を着替える。カイトの部屋はいたってシンプルなデザインで日用品などが綺麗に整頓されていた。
カイトは自分の部屋を出て一階のリビングに向かう。リビングに降りると既に食事が並べられていた。先に食事を済ました叔父は新聞を読み、叔母は既に皿洗いを始めていた。リナも既に食べ終わっており、カイトが食べ終わるのを待っていた。カイトも今日の朝食ーーーベーコンエッグとパンをすぐに平らげる。
食べ終わった途端、リナが朝にしてはハイテンションすぎる声で、
「あのね、カイト!私たちに手紙が届いてるの!しかもすごい内容だよ!ほら、読んでみて!」
と言ってきた。
そう言われて、カイトはリナから便箋を受け取る。中を開けてみると、中には一枚の羊皮紙と四角い物体が入っていた。
開けた途端に、リナが
「まずは四角いやつから触ってみて!
ここに少し窪んでる所あるでしょ?ここを触ってみて」
言われた通りに触ってみる。すると、中で機械が動く時のようなウィーンという音を立てながら四角い物体が光り出す。
さらに、若い女性のような声でこう告げてきた。
「カイト様ですね?この度は我が魔法魔術学校への入学を許可された事をお伝えいたします。詳しいことは同封されている手紙をご覧ください。我々教師一同あなたの入学を心よりお待ちしています。
入学許可通達官 A.ロビンソン
マジェント魔法魔術学校 校長 」
要件ーーーーーだけ伝えると、この奇妙な四角い物体はすーっと分解されていき、花びらのように部屋へ散った。遂には綺麗に粉々になり、床に灰となって散った。また、その灰も数秒のうちに、地面から消えていた。
その光景をずっと見ていたリナが喋り出す。
「ねぇ!?カイト、私たちすごいでしょー?私たち魔法使いになれるんだよ!」
リナは嬉しそうに話す。隣で聞いていたカイトもテンションが上がっているのか、少し上ずった声で、
「ぼ、僕達すごいね…、魔導士になるなんて全く考えた事無かったよ」
僕はこれ以上無い幸福感でいっぱいだった。何も変わらない退屈な日々。そこから抜け出して新しい世界を学べる。体感できる。それだけではカイトは世界が180度変わったように思えた。
「魔導士になるために学校に行く事は構わない。元々私もお母さんも魔導士だからね。ただリナ、カイト。一つだけ伝えたい事がある」
叔父さんは急にいつもより鋭い口調でそう告げてきた。さらに叔父は話を続ける。
「学校に行けば習うかもしれないが、“魔法”というのは決して万能なものではない。正しく使えば、人を助ける事も、救う事もできる。だけれど、使い方を間違えれば簡単に人を殺す事だってできる。ある意味“諸刃の剣”なんだよ。そこを理解していないと、本当の意味で魔導士にはなれない。そこは分かっていてくれ。いいね?」
叔父の口調はいつもよりきつく、悲しいものだった………………。