fate
突然、始まった戦いの戦場は何と、キリエスの玉座の間でした。
ここは敵地の中心です。
何とか素早く戦いを終わらせなければなりません。
「あいつはフォックスに任せて、私たちはこいつらを、さっさと始末するわよ。」
僕たちの相手はフィロと呼ばれる骸骨の兵士です。
「燃え盛れ、フレイムソード!」
サーシャ様の攻撃を皮切りに一斉にフィロへと襲いかかりました。
「サーシャ様、こいつら大したことありません。一気に倒しちゃいましょう。」
フィロは次から次へと倒れていきます。
――ところが、倒したはずの骸骨は再び立ち上がってきます。
「嘘、なに不死身なの。」
「ワハハハ、不死身ではないが、粉々にしない限りそいつらは何度でも起き上がる。それに、まだまだストックは沢山いるぜ。出てこい。」
ラクーンの呼び掛けに応じるように、奥の方から続々とフィロが大量に現れてきました。
「おそらくは、ラクーンを倒せばフィロは消えるはずです。少しの間、我慢してください。」
フィロ自体は強くはありませんが、こう数が多くては、たまりませんね。
一刻も早くフォックスにはラクーンを倒してもらわないと。
「ゆくぞ、ラクーン!」
フォックスは両の手から長い鉤爪を出して、ラクーンへ突進していきます。
一方のラクーンは片腕を太いハンマーに変化させました。
ガキン!と、金属の鈍い音が鳴ります。
フォックスの電光石火の攻撃にラクーンは防戦一方です。
スピードではフォックスに利ありですね。
しかし、ラクーンは防御に撤しながらもカウンター攻撃を狙っていました。
「ここだ!」
ドゴン!と激しくフォックスは吹き飛びました。
パワーでは完全にラクーンの方が上のようですね。
「ちっ!自力で後方に跳びやがったか。」
「相変わらず雑な攻撃だ、ラクーンよ。」
「悪かったな。だけど、フォックス――後ろに気をつけろよ。」
フォックスが振り返ると、すぐ後ろにはフィロが迫っていました。
フォックスは鮮やかにフィロの攻撃を避けました。
「いつの間に、こんなに増えていたんだ。」
そう、フィロは増殖中です。
あれだけ広く感じた、この広間も今では狭く感じます。
出来るだけ早くラクーンを倒してもらわないと困りますよ。
そして、フィロに気をとられたフォックスの一瞬の隙に、ラクーンは視界から消えていました。
「ど、どこだ!?」
「――ここだよ。」
フォックスを囲むフィロの一人が突如、ラクーンの姿に変化し、フォックスの背後を突きました。
油断していた、フォックスの脇腹をラクーンのハンマーが襲いました。
「ぐっ!」
「くそっ、また跳びやがった。」
いい反射神経でフォックスは、またしてもラクーンの攻撃に対処しました。
だが、今回は相当なダメージをもらったのは確かです。
「俺の得意技、忘れた訳ではないだろ。注意不足だぜ、フォックス。」
「確かに私の不注意だ。――ブレスマーキング。」
フォックスは、フーッと息を吐きました。
「なんだそれは?」
「お前に匂いをつけた。もう振り回されたりはしない。」
「ふん、そんなものでどうにかなるとでも思ってんじゃねえ!」
ラクーンは、フィロの群れの中へ姿をくらませました。
すると、フィロは大勢でフォックスに襲いかかりました。
「もらった!」
「――そこだ!」
二人の攻撃が激しく交わりました。
「く、くそ!何故だ。」
今度はフォックスの鋭い爪がラクーンの腕を切りつけました。
「お前の居場所は把握できる。さあ、けりを着けよう。」
「おのれ、フォックス。俺は負けん!」
ラクーンは再びフィロを隠れ蓑にして、フォックスを狙いました。
「いけ!」
「甘い!」
結果は同じでした。
フォックスの爪が今度こそラクーンの心臓へと突き刺さりました。
「終わりだ。」
「――お前がな。」
「なに!?」
完全に捉えたはずでした。
しかし、ラクーンは笑みをこぼしました。
次の瞬間心臓をえぐられたラクーンの姿がフィロへと変化しました。
そして、フォックスの背後にいたフィロがラクーンへと姿を変えました。
「ジ・エンドだ。」
ドン!と、ラクーンのハンマーがフォックスの頭部へ渾身の一撃が炸裂しました。
「フォックス様!!」
ジャクリンさんの悲痛な叫びが響き渡ります。
「だから言っただろう、注意不足だってな。」
「ま、まさかフィロを自分の姿に変えていたのか。」
「やっぱりお前は、俺の得意技を忘れちまっていたんだ。これで本当に終わりだな。」
まさに絶体絶命かと思われた、その時でした。
「――お前こそ、私の特技を忘れているのでは、ないのか。」
ラクーンの体を背後から貫通していたのは、紛れもなくフォックスの鉤爪でした。
「な、なに!?馬鹿なトラップだったのか。」
「トラップ?それは違う。私は言った筈だ、お前に匂いをつけたと。私はお前の行動を全部見ていた。それに対応したまでだ。お前こそ注意不足だったな、ラクーン。」
「時間稼ぎくらいには、なっただろう。アイス様の役にはたったはずだ。」
「そうか……さらばだ、ラクーン。狐火。」
ラクーンは青白い炎に焼かれ、消滅しました。
それと同時に大量のフィロも崩れ去り、粉末状となり消え去りました。
「フォックス。あいつとは友達だったんじゃないの?」
「そんな、時もあったかもしれません。さあ、それより先を急ぎましょう、サーシャ様。」
あれだけの騒ぎを起こしたのに、結局キリエスの兵たちは来ませんでした。
本当に蛻の殻だったのですね。
静まり返ったグラス城は、非常に不気味に感じました。




