襲来
再び目指す地はフルガイアです。
まさか、こんなに早く戻ることになるとは、思ってもみませんでしたね。
それから、僕たちの行く手を阻んだアランですが、サーシャ様に敗れた後、僕たちの前から姿を消しました。
そして、最後にこう言い残していきました。
「気をつけろよ、敵はアイスだけじゃない。」
これが何を意味するのかは謎です。
しかし、相手が何であろうと倒すしかありません。
「フォックス。フルガイアまで頼める。」
「はい。構いませんが、今すぐにでも宜しいのですか?」
フォックスは、ちらっと眩い鎧を纏うダマンに視線を送りました。
「むっ、問題ない。むろん私も行くぞ。魔界と呼ばれる、その地をこの目に焼き付けよう。そして、ピーター様への土産話しを積もる程に持ち帰ろう。」
本当に大丈夫でしょうか、遊びに行くのではありませんよ。
まあでも、ダマンは戦力になります。
今は少しでも戦える者が欲しいところですから、彼には居てもらったほうが良いかもしれません。
「それでは、行きましょう。」
フォックスは、その場でフルガイアの魔力へコンタクトを始めました。
どうやら、デーモンズホールまで戻らなくても平気のようです。
「繋りました。」
僕らの目の前には、闇のトンネルが姿を現しました。
そこへ、足を踏み入れると、まるで天と地が逆さまになったような、何とも気持ちの悪い空間でした。
空気が唸り、魂を吸いとられるのではないかと、肝を潰しましたよ。
だが、それはほんの一瞬のことでした。
すぐに希望の光りが口を開けて待っていました。
あまりの、明かりのギャップに目を開けるのがやっとです……と、思ってたら、どうやら日の光りがダマンの黄金の鎧に反射して強烈な光線を出していただけのようです。
「こ、これが魔界!?」
やはりダマンも驚いているようです。
まあ、驚くのも無理ないです。
人間が抱く魔界のイメージとは、あまりにかけ離れていますからね。
戻ってきたのは、フルガイアのキリエスです。
見渡す限りでは、この広い砂地に見えるのは、この街だけです。
僕たちもまた、このフルガイアのことを何も知らないといっても、過言ではありませんね。
「おっ!サーシャ、キリエスの長のお出ましだ。」
レジェスの視線の先には、ディミトリさんの姿がありました。
「やあ、また随分と早い再会になったたね。」
「――!も、もしや、ディミトリ殿なのか!?」
ああ、そういえばダマンは、まだディミトリさんが生きていることを知らなかったですね。
自分が殺した男が目の前にいる。
これは、面白そうですね。
ダマンのリアクションに期待です。
「おう、ダマンか。久しぶりだな、元気してた?」
何とも軽いノリですね、ディミトリさんは。
「ディミトリ様。どうやらアイスが、フルガイアへと帰って来ているらしいのです。」
今はダマンとディミトリさんの再会よりも大事なことがあります。
さすがはフォックスです。
そのことを、きちんと理解しているようですね。
「そうか、戻ってきたのか――アイス。」
ディミトリさんの表情が一変し、その顔から笑顔が消えました。
「ディミトリ様!大変です!」
そこへ、一人の男が慌てた様子で走り込んできました。
「どうした?」
「そ、それが――!」
「落ち着け、ベル。慌てなくていいから何があったか話すのだ。まずは深呼吸でもするのだ。」
「は、はい。」
ベルと呼ばれる男を落ち着かせるため、息を大きく吸わせて、一呼吸おいてから、ディミトリさんは改めて訊きました。
「よし、落ち着いたか。それで、何があったか話してごらん。」
「――実は、テルミナの者たちが、こちらへ向かって来ているのです。」
「何、テルミナだと!?なぜだ、あいつらはテルミナの森を越えることが出来ないはずだ。なぜ、そんな大事なことを早く言わないんだ。」
貴方が落ち着けって言ってたんでしょうが。
しかし、テルミナといえば嫌な思い出が甦りますね。
「それで、どれくらいの数なのだ?」
「……それが……全てです。」
「全てだと!そんなことが――。とにかく、戦闘準備だ。キリエスの街には私が結界を張る。皆、街の中へ。」
テルミナの魔物がどれだけいるのかなんて考えたくもありません。
しかし、戦いは避けれないでしょう。
まったく、アイスを倒しに来たはずなのに、とんだ面倒事に巻き込まれてしまったものであります。




