第1章
「………であるため、この場合はこのようになります。」
ポインターで黒板を指しながら授業をする先生を横目に、速乃共也は外をぼんやりと見ていた。ただ何となく外を見ているとあるものが目に留まった。その視線の先には自転車を漕ぐ男性がいる。もっともその男性は道路を走っているわけではなく、ごく自然に空を走っていた。
|(あのおっさん、空飛んでやがる。今日いい天気だし気持ち良さそうだなぁ。)
特別驚くような様子はなく、授業中にも関わらず共也はそんなことを考えていた。
「こら速乃君、いつまで外を見てるんですか。この問題解いてみてください。」
「せんせぇ、わかんないんです。そんでもって高鳥君がその問題解きたいそうですよ。」
「おいおい!?なんで俺がやるんだよ!お前が当てられたんだからお前が解けよ!」
見かねた先生が共也を当てると、飄々とした様子で言う。共也の突然な無茶ぶりともいえる発言に、高鳥と呼ばれた男子生徒が立ち上がって反論した。
「ッチ、うるせぇな、黙ってさっさと解けよ、背骨折るぞ。」
「コエぇよ!?何言いだすんだ剛!さすがに背骨はまずい!背骨は復活まで時間がかかるんだよ!お前も知ってんだろうが!」
「普通は背骨折られたら即死ですよ、高鳥君。それに速乃君、勝手にほかの人に指名するんじゃありません。多々良君もそんなこと言ってはいけません。」
高鳥の隣で寝ていた男子生徒が睨みながら低い声でそう言うと、高鳥は焦ったように言い返す。そんな様子を見ていた先生苦笑いしながらもさすがに授業が脱線しているため宥めた。
高鳥はおとなしく座り、剛も眠気が覚めたのかポケットに手を突っ込んで黒板を見ていた。共也はそんな2人を楽しそうに見ながら、再び外に視線を向ける。先生も空気が落ち着いたのを感じ、授業を再開した。
「………であるため、このような場合には水系統の魔法が有効となります。」
これは魔法の世界の物語。




