この男、依頼をやり遂げる
分割後半です
1、 正体を現したハールマンと対峙しているとハールマンは笑いながら問いかけてきた。
「勘のいい君だ、いつごろ気づいたのかな?」
「ギルドの時から気づいていた、鑑定したのでな。街道でばったり会った時に必ず襲ってくると確信したぞ」
「何故逃げようとしなかったんだい?まさかこの僕に勝てる気でいるとか?」
「ん?勝てる気じゃなくて普通に勝てると思うが?」
「ハッハッハ!減らず口をっ!」
ハールマンは左にぶら下げていた剣を抜き、アレンに襲いかかる。アレンはその上段からの攻撃を受け止める。
「ほほう!僕の攻撃を受け止めるとは腕力はそこそこあるようだねっ!」
ハールマンは素早い身のこなしでアレンの後ろに回ると右から横一閃に剣を振ろうとするがアレンの強力な後ろ回し蹴りで壁まで吹き飛ばされる。
「それ早く動いてるつもりか?遅くてあくびがでるぞ」
「ハーハッハッハ!素晴らしい、素晴らしいよ!君の血を吸ったらさぞかしパワーアップできることだろう」
アレンは思わず苦笑いを浮かべる。
「すまないが何故このやり取りで貴様が勝つと思えるんだ?」
「君は知らないのかい?ヴァンパイアは不死身なんだよっ!」
壁際から常人では捕らえられないスピードでアレンに斬りかかるがアレンはそれを最小限の動きで避ける。
「フフフ、身のこなしもいいねぇ。俄然やる気が出るよ」
ニヤニヤと笑いながらアレンに問いかけるが、アレンの手には何かが握られていた。
「貴様は不死身と言ったが、この手にある物を潰しても平気なのかな?」
ハールマンが攻撃を行った際にアレンは最小限の動きで避けた瞬間に抜き手で痛みさえ感じさせる事もなく“心臓”を抜き取っていたのだった。
「な、なにっ!?いつの間にそんな攻撃をしていたんだ……。でも大丈夫、心臓を潰されても力は少し落ちるが死にはしない」
いつまでも余裕でいるハールマンにアレンは少し苛立ちを覚え始めてきた。
「誰がそのまま潰すと言ったんだ?貴様は少し自分の立場をわきまえたほうがいいぞ」
アレンはそう言い放つと心臓を持っていない左手に光魔法『ホーリー』を出現させる。
「な、な、何故君が光魔法を使える!?しかもその魔法は数百年前に失われたはずだ!ま、待ってくれ!望みはなんだ、金か?女か?僕と君が手を組めば何だって手に入れられるぞ!」
「下等吸血鬼の癖に偉く上から目線だな?正直やり取りに飽きたから死んでもらうぞ」
「ま、待って―――」
その言葉を最後にハールマンの心臓は浄化され、身体の方も糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。
「雑魚の癖に粋がるから身を滅ぼすのだ、下等吸血鬼などゴブリンやオークとなんら変わらん雑魚ではないか」
ハールマンであった死体に近づき、首を刎ねる。これを証拠として持ち帰ればそれなりの報酬がもらえるだとうとふんでいるからだ。
最後に城を隈なく探索し、壷や絵画など売れそうな物を空間魔法ので作った空間に収納してく。
2、 古城で一夜を過ごし、今度は町に向かう。
昼過ぎに町に着くなり、ギルドへ向かう。
「すまないが上の者を呼んでくれるか?」
アレンは受付の女性に麻袋に入っているハールマンの首を少しだけ見せる。そうするとただ事ではないと思った受付の女性は少々お待ちをと言う言葉の後にギルド2階へと駆け上がって行った。
数分するとエルフの男と共に女性が帰ってくる。
「私はここのギルドマスターでローミオンという者だ。話を聞きたいから私の部屋まできてもらってもいいかな?」
どうもローミオンと名乗った男はここのギルドマスターであった。ギルド全体がざわめく中、アレンは彼と共にギルド2階へと歩いて行く。
3、ギルドマスターは部屋に入るなり、質問を投げかけてくる。
「君はいったい何を倒してきたのかな?」
「ただのレッサーヴァンパイアだ、だが人に紛れギルドのシルバークラスの冒険者だったそうだぞ」
ギルドマスターは右眉毛をピクリと動かすとアレンをじっと見つめる。
「君は昨日この町に来て冒険者として登録をした、そして次の日になるとレッサーヴァンパイアを倒してきたと言う。私には理解が追いつかないよ」
「証拠ならここにあるから鑑定でも何でもしてもらって構わないぞ、だが報酬はいただくがな」
「わかった、然るべき調査をした後に報酬は払おう。だが君の実力を私は知りたい、是非手合わせをお願いしたいのだがいいかね?」
アレンは待っていたとばかりに口角が上がる。
「いいですが、俺が勝ったらシルバーのクラスまで上げてもらいますよ。もし負けたらアイアンのままでいい」
ギルドマスターはため息をつき自分の担当するギルドで問題が起きていることに頭を悩ませているのであった。