夢日記
「4月から新学期だから、日記をつけてみなさい」
そう父から言われた。私はためしにつけてみることにした。
4月1日(水)
真っ暗な世界。私。銃片手に持ってた。誰もいない。なのに声だけ聞こえる。自分を呼ぶ声。背を向けたまま一つ返事。「よろしく」
4月2日(木)
少し明るくなった?でもまだうっすら。暗くてどこにいるかわかんない。また声がする。何の話をしているのかはよくわからない。ノイズ。でも私も笑う。ただ、笑ってみた。
4月3日(金)
何も見えなかった。
4月4日(土)
何も見えなかった。
4月5日(日)
お花畑が広がっていた。なんか走ってみた。気持ちよかった。
4月6日(月)
真っ暗。でも嫌なくらい浮遊感。銃が増えてる。両手に持たされた銃。誰に向けるわけでもない。誰もいない。でも声が今までで一番大きい。拍手、喝采。うるさい。
4月7日(火)
声がさらに反響して自分に降り注ぐ。周りは暗くて見えないはずなのに、丸い空間におさめられてるのが、わかる。うるさい。うるさい。銃を発砲してみた。誰かの悲鳴も、何も聞こえない。
4月8日(水)
うるさい、うるさい。どうして、誰もいないのに声だけ。自分の体に突き刺さる痛み。誰もいない、誰も来ないで。あぁ。銃を乱射。何も変わらない。…怖い。
4月9日(木)
怖い怖い怖い怖いこないでこないで誰もいないのにあああああああああああああ
目の前に広がる光景はやっぱり真っ黒だった。
でも突き刺すようなその声、視線はなくなっていた。
代わりに目の前には鉄格子。
…私は、夢を見なくなった。
いつからだろう。
夢に逃げたくなったのは。夢でしか何もできなくなったのは。






