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5、兄と姉

ご無沙汰しております。

 僕には5つ上の兄と3つ上の姉がいる。


 兄は、王太子で、次期日輪王だ。幼い頃から優秀で、周囲の期待も高かったらしい。どちらかというと、寡黙なほうで、表情もあまり変わらない。我が兄ながら、いま一つわからない。

 兄が楽しそうに笑ったときは、何かが起きる。必ずだ。

 僕が6歳のときに、笑ったのを見た後は、娘を兄の婚約者にしようと画策していた貴族がいなくなった。(爵位的にも物理的にも)あれ以来、僕たち兄妹に婚約者をという話は出なくなったな。…どういう手を使ったのか、知りたいような、知りたくないような…。

 この国で一番逆らってはいけないのは、兄だと思う。うん。


 ここ最近では、義姉上、つまり王太子妃の話を、ランドルの皇太子から聞いたときだったかな。

 皇太子よりも、兄の次期公爵よりも誰より皇帝にふさわしいと言われた公爵令嬢。あれを聞いたときの兄は、実に楽しそうだった。

 公爵令嬢の情報を集めるだけ集め、眺めてる兄の姿は無駄に色っぽかった。貴族の令嬢たちが見たら、身を投げ出すであろうその姿は、残念なことに、僕とシュウ(と護衛)しか見ていなかった。


 姉のランドルへの輿入れが決まったら、付き添いますとさっさと決めて、一緒にくっついていってしまった。

 父と母に、いいんですかと聞いたら、兄の勝負のときだからと答えられたけど、いや、勝負って言うか、狩だと思うんだよね。しかも、父には、婚姻の申込書書かせたらしい。僕はまだ見ぬ公爵令嬢に、心の中で、申し訳ないと手を合わせた。


 兄は、公爵令嬢を連れて帰国した。婚約者として。


 ちょっとうつろな眼だった公爵令嬢は、この国に着いて、諦めたらしい。王族の勤めですからと、皇太子妃になることに覚悟を決めた。お城では、王太子の結婚に大喜びさ。

 王族の務めだといわれて、ちょっと兄はすねちゃったけどね。

 まあ、なんだかんだ言っても、無事に結婚して、この前、子どもも生まれた。幸せにやってるよ。


 

 姉は、2年前にランドルの王太子に嫁いだ。

 姉は、12歳の時に、カサネとスオウの結婚式を見て以来、恋愛結婚にはまってしまった。そして、自分も恋愛結婚をするのだと、頭の中がお花畑になってしまったのだ。


 まあ、そこは優秀な女官が手綱をとって、愛されるためにと言って苦手だった勉強やなんかをさせていたので、どこに出してもおかしく無いお姫様が出来上がった。

 姉は、弟の僕から見ても、美人だ。40すぎても美丈夫な父と、黙って立ってれば美淑女の母の娘だから、当然と言えば当然だ。

 女官の仕込みとその美しさから、世界でも有名な才色兼備の姫となった姉には、降るように縁談が持ち込まれたが、姉は首を縦に振らない。

 「ときめきがない」って、どんだけ、恋愛脳なんだよ…。聞いたときは、がっくり肩が落ちた。


 でまあ、ちょうど、両親の即位20周年の式典があるから、候補者に直にあわせることになって、わが国には、わんさか結婚適齢期の貴公子がやってきた。

 でも、姉のおめがねに合う人は見つからず――。どうなることかと思ってたら、姉は思っても見ない人と親しくなっていた。夜中に密会してたんだ。


 ランドルの皇太子。彼には婚約者がいた。


 のんきに二人がお茶してるところに、僕、兄、両親と次々に加わった。みんな、姉がだまされてるんじゃないかと心配なんだよ。

 ところが、話をしてみると、なんかおかしい。なんなんだ、このほのぼのした空気は。

 じれた兄が、婚約者のことを聞いたら、お互い周りがうるさいから、取引で婚約してるんだって。なんだ、障害ないじゃん。


 結局、二人を見守ることにして、僕たちは手を引くつもりだった。が、あまりにも二人がのほほんとしているので、兄と皇太子の側近が話をつけることに。

 皇太子が帰国するときに、兄が姉に「幸せになれ、いやしてやれ」と言うのを聞いて、爆笑したのは、いい思い出だ。


 皇太子は、せっせと手紙をよこしていた。姉は、嬉しそうに読んでいたなぁ。後で、義姉上に聞いたら、義姉上のアドバイスだったんだって。

 皇太子は、みんなに支えてもらってるんだって、恥ずかしそうに言ってたけど、ある意味すごいことだと思う。

 姉は、いい人を選んだんだな。幸せそうでなにより。



 さて、兄と姉が結婚して、子どもも生まれたので、母のターゲットは僕にロックオンされた。

 母の仕掛けてくるだろうあれやこれやを考えると憂鬱だ。


 

 父上、母上をもうちょっとおさえて下さい。息子は、ノックアウト寸前です。



 

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