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4.父と母

お久しぶりです。


僕の両親は、王だ。

滅亡したと思われていた日の王家の日輪王である父。この大陸をずっと統治してきた月王家の月の女王である母。

20年ちょっと前に、闇に堕ちた伯父に命を狙われた母と二人、大陸中を旅しながら機会をうかがい、封印された神剣を得て、この世界を救ったいわば救世主だ。


なんだが…。


この話を初めて聞いたとき、僕は本当にびっくりした。人違いなんじゃないかとか、話作ったんじゃないかとか思ったくらいだ。

それくらい、普段の父と母は、救世主らしくない。


母は、天真爛漫てんしんらんまんといえば聞こえがいいが、要するにゴーイングマイウェイだ。心の赴くまま、興味を惹かれるままに行動し、その度に周りが迷惑を被る。一番の被害者は父だが、本人は気にしてないので、いいとしよう。


次いで被害にあうのが、僕達子どもだが、兄は、あまり被害を受けない。さりげな~く、騒ぎから遠ざかるのだ。母も、あまりちょっかいを出さない。なぜかと聞いたら、反応が今一なのだという。兄上は、いつも冷静で、笑顔の裏は腹黒だからなぁ。


姉は、小さい頃は僕と一緒に母に振り回されてたけど、12歳の時に恋愛結婚すると決心して以来、自分磨きにいっぱいで母の相手をしてる暇が無い。


で、結局僕が貧乏くじを引く破目になるんだよな~。うう。



母が作った菓子を食べて、お腹を壊したことは数知れず…。一度なんか、オーブン壊れたもんなぁ。ケーキ焼いてどうして爆発するんだ? 料理長も泣いてたっけ。


暑いからって池に船を浮かべたら、大はしゃぎして、池に落ちた。僕が。

助けようとしてかえって水に沈められたときは、一瞬天国が見えた。


猫を助けようと木に登って自分が降りれなくなったり、図書室で行方不明になったり。母が騒ぎをおこして僕が後始末をするのは、もはや城の名物だ。母上も結構いい年なんだから、早く落ち着いてほしい。(普通親の心境じゃないか、これ?)


まあ、なんだかんだ言っても母親だ。僕らのことを愛してくれてるのは、わかるし、ぼくらも愛してる。


月の女王としての威厳ある姿は、尊敬できるしね。



父は、この国の王として、日輪王として、尊敬できる人だ。混乱していた即位前後、父がいなければこの国はどうなっていたかわからないと、宰相たちによく聞かされた。

王者の風格と、まれに見る強大な王家の力をもって、混乱したこの国を一つにまとめあげたのだという。今も善政を敷いているといっていいだろう。


細身だが、剣の腕は近衛団長といい勝負だとか。40を過ぎても、無駄な肉はついていない。息子から見ても、凛々しい美形だと思う。


まさに、「完璧な王様」だ。――母のことを除いては。


父は、母命だ。母が笑えば、なんでも許す。失敗しても許す。黒こげの謎の物体を食べさせられても許す。あれを食べたのを見たときは、我が父ながら唖然とした。

政務の隙をついては、母とお茶し、母が騒ぎを起こせば、迎えに来る。いや、母を一人にするのが心配なのは、わかるけどさ~。


もう、子どもの前で、いちゃつくの、やめてくんないかな~。僕だって、お年頃なんだし。そういうのは、自分達の部屋へいってからにしてくれよ!

僕は、兄上みたいに冷たい目でも、姉上みたいに憧れの目でも見れないんだからさぁ!!







父と母に振り回される不憫なユーリ君でした。

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