2.出会い
僕、第二王子ユーリが、シュウと出会ったのは、9歳の時だった。
大好きなカサネとスオウがやって来たと聞いて、両親の居間に駆けつけたら、知らない男の子が一緒だった。スオウそっくりの顔で、カサネと同じ髪色と瞳。
当然のように二人の間に座っているシュウの第一印象は最悪。
自分の場所を奪われる、そう思った。
「おまえ、誰だ?」
「ぼく、シュウリード。シュウだよ」
カサネとスオウにはさまれて、明るく答えたシュウをにらみつけたのを覚えている。
多分飛び掛りそうだったんだろう。父と母に腕をつかまれて、二人の間に座らせられた。
母が、僕を紹介し、強引に頭を下げさせ、挨拶は終わった。
大人達は、また話し始めたのだが、僕とシュウは、にらみ合いを始めた。シュウは見せ付けるように、カサネとスオウと話をし、世話を焼いてもらっている。
ついに、僕は我慢できなくなった。
「お前、何なんだよ!そこは、ボクの席だ!!」
そう言って、シュウにつかみかかった。シュウも負けていない。取っ組み合いになりそうだったその時、父上のいつもより低い声が響いた。
「二人とも、そこまでだ」
身体が動かなかった。父上の、日輪王の力だ。僕とシュウはそれぞれ父上とスオウに抱きかかえられ、引き離された。
「ユーリ、わかってるわね?」
母上の、目の据わった笑顔に、かなうはずも無く。
「ごめんなさい」
しぶしぶとした謝罪を、カサネとスオウに諭されたシュウも受け入れ、その日はお開きとなった。
もちろん、その日の夕食のデザートは、抜きだった。
それからも、僕とシュウは、会うたびにひと悶着起こしていた。一時は、城の名物だったらしい。まあ、今から考えれば親のひざを奪い合う子供の小競り合いだ。
それがなくなったのは、3ヶ月ほどたったころだった。
僕とシュウがもめると、カサネとスオウが困ったような悲しい顔になることに気がついたからだ。
一晩自分で考えた後、家庭教師のカルラ先生に相談した。
「先生、ボクはシュウは気に食わないけど、カサネとスオウに悲しい顔をさせたくない。シュウと仲良くしたほうがいいのかな?」
「良く自分で気付きましたね。では、ライトを通じてシュウと話し合えるようにしましょう」
先生は、旦那さんのライト神官に頼んでくれることになった。
3日後、ライト神官に連れられて、シュウが、城にやってきた。ちょっと、警戒してるみたいだ。
カルラ先生とライト神官に見守られて、ボクは、シュウに自分の考えを話した。
「…君が、カサネとスオウの側にいるのは気に食わないけど、僕たちがケンカするとカサネもスオウも悲しい顔になるから。僕たちは、ケンカをやめるべきだと思う」
シュウは僕の話を聞いて、一生懸命考えている。僕の話に賛成してくれるかな?
ドキドキして待っていると、シュウは心を決めたようだった。
「わかった。もうケンカはしない」
「よかった、ボクのことユーリって呼んで!」
「うん、ぼくはシュウ!」
二人でにこって笑いあった。
「まあ、そうしていると兄弟のようですね」
「そうだな、スオウは王の従兄弟だから、ユーリ王子と顔立ちが似ている。シュウはそのスオウとそっくりだから、ユーリ王子とも似ていておかしくない」
カルラ先生とライト神官の話を聞いて、僕たちは顔を見合わせた。
「兄弟みたいだって」
「似てるんだって」
自分達で全く気付いていなかったことに、改めて相手の顔を見て、納得した。
「じゃあ、これからよろしく。シュウ」
「こちらこそ、ユーリ」
僕たちは、こうしてケンカを終わらせた。
そして、これが、僕たちの長い長い付き合いの始まりになったんだ。