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朝雨

アレルギー性鼻炎の私は、今日もバナナと、それから2錠の薬で動きだす。

血が腕の中でざわめくと、心臓の音も近くなって、「効いてるな」と鼻がきゅうっとひくつく。

もう6ヶ月も履いていた、底の減ったヒールが、砂利を踏んで、石が転がる。

小雨と、頬に塗ったファンデーションを気にしながら、駆け足で、中古で買った小さな車に乗り込むと、白くて灰色の細かな影の、静かな世界が、ガラスの向こうの四方を取り巻いた。


鍵を回す。去年の夏におそろいで買ったキーホルダーが揺れる。シートに振動。硬くて薄い金属の奥、緩やかに熱をもってあたたかくなる。左足で解除、右足を離す。


さぁ

アクセル。


横断歩道を過ぎると、全速力で走る二つの黄色い帽子。

赤い長靴が光り、青い傘が翻り、父親が大きな足取りで追っている。

右へ曲がります。後ろを擦り抜けるトラックのアナウンス。狭い路地に飛沫を上げて落ち葉を踏みしめる。

渋滞赤信号、女がアイラインを引く、大きな目。捲った袖が白い。赤ちゃん乗っています。

自転車の女子高生がタオルを被る。焼けた腕、つるりとした足が若く、迂回の上でウインカー。ツィッ、トン、ツィッ、トン、


重い音。ワイパーを一つ下げてやる。黒い跡が流れては白に戻す。

今日の作業を五つほど頭に、坂道を下る。揺れる。道端の雑誌。青信号。


そこを曲がると到着で、手前の水溜まりを撥ねて、徐々にブレーキ。

黒い駐車場に二回ほど切返す。


今日は雑巾が干せないだろう。でんでん太鼓の傘の下、水の空気を吸う。

ストッキングが濡れて、屋根の下に入ると、マスカラの重さ、会社の私がドアを開けた。


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