愛された男と愛した女
ベッドに横たわっている男の名前は山本晃英。
周りを四人の制服に身を包んだ女子生徒が佇んでいる。その表情は全員がとても歪んでいる。
病室の空気はとても重く、誰一人も声を発することもなく、ベッドで横たわり、眠っている彼に視線を合わせている。
そんな重苦しい空気の中、四人の少女のうちの一人が声を発する。
「私は…許せない。晃英くんがこんな目に合うなんて」
黒髪の少女が声を発したことで、次から次へと言葉が発せられる。
「…あ、あたしも同じ気持ちです。とっても優しい晃英さんにこんなことをするなんて」
「ぼくも…あきくんに刃物を突き立てた人をやっちゃいたい」
そして最後に青髪の制服に身を包んだ女子生徒が話し始める。
「…わたしも皆さんと気持ちが同じであることは揺るぎありません」
そこまでは他の三人と同じだった。
「ですが、犯人は既に捕まっています。私たちにできることは何もありません。警察に乗り込んでその犯人を刺し殺しても現実は変わらない」
その言葉に一番最初に声を発した黒髪ロングの女子生徒が声を発する。
「…確かに奈菜さんの言う通りだけど、奈菜さんは悔しくないの?」
「悔しいわ。わたしもあなたたち…いえ、あなたたち以上に彼のことを愛していた。だから彼がこんな目に合ったと知って、相手のことを呪い続けてる。彼が受けた痛み以上のものを受けて、後悔しながら死ねと…」
話している時の彼女は淡々と話しているが、内容はそんな淡々と話す内容ではない。だが言葉の節々から本当に彼女がベッドに横たわり、静かに寝ている彼のことを愛していることは伝わる。
それからも四人は病室の中でずっと彼のことを見続けていた。
結局、看護婦が面会時間が終了だと伝えられるまでずっとだ。
中には終わりだと言われても、そこから動こうとしないものもいたが。
そんなこんなで四人は帰路に付くことになった。
一緒に帰っているが、会話が行われることなく、ただ無言だ。年頃の女子生徒が四人が一緒に帰っているが、彼女たちに明るく話せるだけの元気は残っていない。
その日は全員が肩を落としながらも帰った。
―――――
それから数日後、山本晃英。は亡くなった。
病院に運ばれた段階でかなりまずい状態だったが、少しずつ回復傾向に向かっていたのも事実。
だが、急に容態が悪化してその日のうちに息を引き取った。
そこからまた数日してある森の中で女子高生の死体が見つかる。
それも一人ではなく、四人が同じ場所で亡くなっており、何かしらの事件に巻き込まれたのかと最初は思われたが、現場を捜査した警察の結論は『自殺』だった。
その理由としてはこの四人がここ数日憔悴していた様子を、周りが見ていたことや数日前に亡くなった山本晃英のことを毎日お見舞いに行っていたところなどを含めて、現実に絶望した末に自殺したという結論に至った。




