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絆創膏の条件

作者: 汐海つむぎ
掲載日:2026/03/01

ある夜の小さな交渉の話。


「いーやーのー!」


保育園で顎の下を怪我してきた絆創膏嫌いな息子。

子供というものは絆創膏が好きだと思っていたが、そういう訳でもないらしい。


園で何とか貼らせてくれたという絆創膏は、お風呂で濡れてしまい、ぷらん、と頼りなく垂れ下がっている。

もう守る気はなさそうだ。

いわゆる「顔が濡れて力が出ない」状態だなぁとふわりと思った。


「ほら、救急車だよ」

「…」


大好きな車柄で押してみたがダメか、誰に似たんだこの強情っ張りめ。


「パパとママも貼るけど、どう?」

「……いゆ」


お?


「パパとーママとーいっしょよー!」


ニコニコと手を差し出される小さな手。

まずはペタリ。


「パパ、いっしょ、いっしょよー!」

「え?」


夫は目を丸くする。

もちろん、ペタリ。


「ママも、いっしょ、いっしょよー!」

「一緒ねー」


ニコニコする息子に、私の手にもペタリ。

明日、職場できっとつっこまれるだろう。致し方ない。


そして本題の怪我の部分にペタリ。

救急車柄が顎下に目立つが、それもまぁ致し方ない。


「ママ、いっしょ、いっしょよー!」

「そうだね、一緒ね」


ご満悦である。


ベッドに入り、読み聞かせしてくれる夫には目もくれず、私の手を取り「いっしょよー」と言いながら、確かめるように私の顔を覗き込む。


救急車のいる手で、お風呂上がりのふわふわな髪の毛を撫でる。


翌日、救急車柄の絆創膏を貼ったまま出勤した。

同僚に笑われながらも、なんだか少し誇らしかった。


一緒は正義なのでした。

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