絆創膏の条件
ある夜の小さな交渉の話。
「いーやーのー!」
保育園で顎の下を怪我してきた絆創膏嫌いな息子。
子供というものは絆創膏が好きだと思っていたが、そういう訳でもないらしい。
園で何とか貼らせてくれたという絆創膏は、お風呂で濡れてしまい、ぷらん、と頼りなく垂れ下がっている。
もう守る気はなさそうだ。
いわゆる「顔が濡れて力が出ない」状態だなぁとふわりと思った。
「ほら、救急車だよ」
「…」
大好きな車柄で押してみたがダメか、誰に似たんだこの強情っ張りめ。
「パパとママも貼るけど、どう?」
「……いゆ」
お?
「パパとーママとーいっしょよー!」
ニコニコと手を差し出される小さな手。
まずはペタリ。
「パパ、いっしょ、いっしょよー!」
「え?」
夫は目を丸くする。
もちろん、ペタリ。
「ママも、いっしょ、いっしょよー!」
「一緒ねー」
ニコニコする息子に、私の手にもペタリ。
明日、職場できっとつっこまれるだろう。致し方ない。
そして本題の怪我の部分にペタリ。
救急車柄が顎下に目立つが、それもまぁ致し方ない。
「ママ、いっしょ、いっしょよー!」
「そうだね、一緒ね」
ご満悦である。
ベッドに入り、読み聞かせしてくれる夫には目もくれず、私の手を取り「いっしょよー」と言いながら、確かめるように私の顔を覗き込む。
救急車のいる手で、お風呂上がりのふわふわな髪の毛を撫でる。
翌日、救急車柄の絆創膏を貼ったまま出勤した。
同僚に笑われながらも、なんだか少し誇らしかった。
一緒は正義なのでした。




