不思議な物語大作戦!隣のクラスの男の子からもらった絵
隣のクラスの男子生徒から急に渡された絵から始まる短い物語
SNSと小説家になろう、pixiv、ブログに同時掲載
なぜ彼があの絵を送ってきたのか今でもわからない。
彼とはクラスが一緒になったこともなく、会話も多少交わした程度しかなかった。
にもかかわらず、彼は突然家にやってきた。
家族はいなかったため、チャイムの音に仕方がなくわたしが外に出た。
一瞬彼が誰だったかわからなかった。
わたしの顔からそれを察したのか隣のクラスの…と名前を出した。
そして笑顔をみせると言った。
「急にきて不審に思うけれど、ちょっと君に預かってほしいものがあるんだ」
そういうと一枚の小さな絵を差し出してきた。
それにはただ一脚の椅子が描かれた絵だった。
わたしはただただ戸惑うしかなかったけれど、つい受け取ってしまった。
「きみには多分これが似合うと思うから」
そしてそのまま帰っていった。
わたしはただただその絵を眺めるしかなかった。
次の日彼は死んだ。
自ら命を絶って。
理由は知らないし、興味もない。
彼が亡くなってまだ数日しか経たないけれど、名前すらもう忘れた。
◯
なぜだかわからないけれど、その絵は玄関に飾った。
べつに何もなかった。
それはただの絵だった。
椅子に女性が座っているただの絵。
◯
絵はなにも変わらない。
椅子に女性が座り、それを囲むように数人の男女が描かれた何の変哲もない絵。
何となくそこに描かれている人物は家族に似ているような気がした。
ただそれだけの絵。
◯
地方紙の記事より
☓月☓☓日
△△市の女子高生が自殺。警察は事件性はないと判断したが、その女子高生の自宅を訪れると家族全員が殺害されているのを発見。死亡から数日経つと見られており調査を開始。
その数日前には同級生の男子生徒の自殺事件が起きており関係性を調査中。
◯
女子高生の遺体を運ぶとき、救急隊員は玄関に飾られた絵に気がついて思わず「悪趣味だ」と呟いた。
そこに描かれていたのは倒れた椅子と縄に吊り下がった女性という先ほど見た光景と同じものだった。
2025年5月29日初稿
今回は古典的な短い怪奇小説を意識しました。
理想としては怪奇小説とライトノベルの融合でしたが、今回はできませんでした。
本来は長く書きたかったのですが、今回は短いがゆえのインパクトを狙ってこの物語になりました。