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18杯目☕️布教は突然に。

莉杏を出すの早いかなと思ったのですが、まだ出したいキャラに書きたい話はいっぱいあるので、出してしまいました。

「……誰?」


自分を真っ直ぐに射抜くような視線に、真雄は一瞬、時が止まった。


距離はさほど近くないはずなのに、やけに近く感じる。揺れるピアスが照明を反射し、きらりと光る。その動きに目を奪われる。


普段の生活ではまず出会わないタイプの女性だった。強めのアイライン、はっきりとした目元。堂々とした立ち姿。場の空気を一瞬で塗り替える存在感。


(ギャ、ギャルじゃん!!?)


頭の中で叫びながらも、声は出ない。さっきまで胸をざわつかせていた“噂の前世沖田総司である結城くん”のイメージが、音を立てて崩れていく。


「ああ! 2人、初めてだったね!高瀬くんだよ!」


花帆の明るい声で、ようやく我に返る。


「あ、えっと……高瀬、真雄です」


思ったよりも声がかすれていた。自分でも情けなくなる。


「高瀬?……ああ!」


莉杏は一度、真雄の顔をじっと見つめた。値踏みするようでもなく、ただ観察するような視線。


数秒の沈黙のあと、ぱっと表情が弾ける。


「まおまおだ!」


「ま、まおまお……?」


予想外の呼び名に、真雄の頭は追いついていなかった。


「あたし、永瀬 莉杏(ながせ りな)!よろしくー!」


差し出された手。距離が一気に縮まる。その勢いに押されるように、真雄はぎこちなく頭を下げた。


「よろしくお願いします……」


止まっていた思考が徐々に現実に戻されていく。


――永瀬。その名前が、頭の中で小さく引っかかった。


(……結城、じゃない?ということは、誰?!!)


つい先程まで、胸を騒がせていた期待だけが、行き場をなくして取り残されていた。


「莉杏ちゃんも1年生だから、同い年だね!」


「まおまおも1年なの!?タメで話してよ!よろー!」


「あ、う、うん…」


莉杏の空気に圧倒される真雄を他所に、花帆と莉杏の会話は続いていた。


「今日、出勤だったっけ?」


「ううん、咲くんの代理!まぁ、でも」


「今月推しイベで課金しまくる予定だったし。むしろ助かる〜!!」


(かきん……?)


聞き慣れない単語に、真雄は理解が追いついてなかった。


「課金って、なんですか?」


その一言で、盛り上がっていた二人の会話がすとん、と落ちる。次の瞬間、勢いよく二人分の視線が突き刺さった。


「まおまお!課金知らないの!!!??」


「いや、あの……推しイベってことは、生誕祭とかその時の、グッズ代みたいな……?」


「違う違う違う!!課金はゲーム!!」


莉杏が身を乗り出す。


「いい?課金をするだけで——“あら不思議〜!苦労して貯める石が一瞬で増えました〜!”ってやつ!で、ガチャとか推しが出たら実質タダなの!」


「あはは!莉杏ちゃんは重課金者だからねー」


課金について熱弁をふるう莉杏を横目に、花帆は呑気に笑っている。


「俺、ゲームしたことないので、初めて知りました。そんな機能あるんですね……」


その一言で、空気がわずかに変わった。


「ゲームやったことないの!?」


「え、ないです」


真雄が即答で答えると2人は一度、顔を見合わせる。


莉杏は自分のスマートフォンを取り出した。

慣れた手つきで画面を操作する。確認画面が一瞬だけ表示され、ためらいなく親指が動いた。


ピコン、と軽い電子音。


あまりにも自然な流れに、真雄はそれが何を意味するのか理解できなかった。


「はい!まおまお!」


「え?」


差し出された画面には、色鮮やかなキャラクターが並び、“期間限定”の文字がきらめいている。


「ここタップしてくれたらいいから!」


状況が飲み込めないまま、真雄は画面を受け取る。そこには大きく“10回引く”の文字。


恐る恐る、言われたまま、真雄は表示された“10回引く”を押す。画面が暗転し、派手な演出が始まった。


「え?」


光が弾け、カードが一枚ずつ現れては消えていく。莉杏は身を乗り出し、ほとんど呼吸を止めていた。


画面には次々とキャラクターが表示されていく。そして最後の一枚。きらり、と光が弾けた。


一瞬だけ、空気が止まった。


次の瞬間、画面に現れたのは金色に縁取られたカードだった。


「は?」


低い声。


「は?????」


莉杏の声が一段階上がる。目が見開かれ、指先がわずかに震えている。


「推しなんだけど!!!!」


響く叫び声に、真雄は思わず肩をすくめた。


「え、すごいんですか?」


自分が何を引いたのかも分からないままの、純粋な疑問だった。


「すごいとかのレベルじゃないんだけど!?待って待って待って!!あたし昨日まで三万溶かして——」


言葉が途中で詰まる。悔しさと歓喜が入り混じった、複雑な顔。


「まおまお!!!ありがとう!!!」


次の瞬間には、感情が完全に振り切れていた。その熱がまだ残る中で、莉杏はふっと笑みを浮かべた。


「ねぇ、まおまお」


「はい?」


「ゲームやったことないならさ…」


それは歓喜とは少し違う、どこか企みを含んだ笑み。真雄は、なぜだか背筋が冷えるのを感じた。


片耳のイヤフォンから、低く甘い声が流れ込んでくる。


《姫は今日も可愛いね》


耳の奥をくすぐるような甘さだった。画面に表示された文字と同時に再生される音声。それだけのことが、なぜだか新鮮だった。


「おおっ……」


無意識に漏れた感嘆。真雄は、ほんの少しだけ身を乗り出していた。


「真雄!久しぶり!ってか、何やってるの?ゲーム?」


背後から飛んできた声に、真雄は慌ててゲーム機を伏せた。振り返ると、いつもの調子で笑う依月が立っている。


「あ、うん。バイト先の人に勧められて」


正確には“勧められた”というより“半ば強制的に布教された”に近い。花帆と莉杏の勢いに押され、しまいには2個持ってるからとゲーム機を強引に渡されたのだった。攻略するまで返さなくていいと条件付きで。


「薄騎士っていう乙女ゲームなんだけど」


「薄騎士?あー、知ってる」


あまりに自然な返答に、真雄の動きが止まる。


「知ってるの!!?」


思わず声が裏返った。


「知ってるっていうか、俺の同居人いるじゃん?舞台俳優やってて、そのアンサンブルやってるんだよね」


依月は軽く肩をすくめる。特別なことでもない、という顔だ。


「ほへー」


現実とゲームが思わぬところで繋がっている。真雄は妙な気まずさを覚えながら画面に視線を落とした。


「俺、ゲームやったことないから新鮮で」


「まじ?学生の頃も?」


依月が少しだけ驚いたように眉を上げる。


「あ…うん。中学まで合気道やってたからさ」


「真雄が合気道!?意外だわ」


「まあ、父親が教えてたから必然的に?」


肩をすくめる真雄を見て、依月は楽しそうに笑う。


「へー!俺も剣道やってたから、武道仲間だったんだな!」


「依月、剣道やってたんだ」


「まぁ、高校の途中で辞めたんだけどね」


軽く言ったその一言に、わずかな間が落ちた。

けれど、依月はすぐにいつもの調子で笑い直す。


「俺もやってみようかな!薄騎士!」


「ええ!?」


思わず裏返った声とは裏腹に、真雄の胸の奥がじわりと熱くなる。依月は肩をすくめた。


「同居人が出てる舞台、ちょっと気になってたんだよね。真雄がやってるなら、せっかくだし!」


さらりとした一言。けれどその軽さが、妙に心強く響いた。


「依月……!」


驚きと、ほんの少しの嬉しさが混ざった声だった。ひとりで足を踏み入れたはずの世界に、急に仲間ができたような気がして。依月はそんな真雄の様子に気づくでもなく、首を傾げる。


「てかさ。なんで布教されてまでゲームやろうと思ったの?」


「あー……いや、それがさ。うちの店、新撰組がモチーフだから。薄騎士の舞台の影響で、最近女の人がいっぱい来てるんだよ……ね」


言い終わった瞬間、真雄ははっとする。


(……あっ)


依月には、バイト先のことを詳しく話していなかったはずだ。真雄は遅れて、自分が口を滑らせてしまったことに気づいた時には、既に手遅れだった。


「へー!真雄の店、新撰組モチーフなんだ?」


「今度遊び行っていい?」


そう、無邪気に笑う依月に、真雄が断る余地なんてなかった。

薄騎士の設定、キャラクター設定一通り考えたので出せたらいいなと思います

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