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10杯目☕️日常に紛れた、王子様…?

最後の方書き足しました!

「やばっ、今日“王子”いるの……」


「来て良かった」


(王子……?)


店内のあちこちから微かに聞こえてくる会話に、真雄は思わず耳を傾けた。女性客たちがちらちらと視線を送る先を追うと、そこにはコーヒー豆を挽きながら、ふわりと欠伸をする葉山の姿があった。


青みのかかった髪を後ろで束ねているせいか、両耳に開いたいくつものピアスがはっきりと見える。


その姿に、真雄の意識はつい先ほどの出来事へと引き戻されていた。


「で、こちらが高瀬真雄くん」


清夏の声に、はっと我に返る。慌てて真雄は頭を下げた。


「高瀬です。よろしく、お願いします…」


「葉山です。こちらこそ」


少しタレ目の水色の瞳に、ヴィジュアル系バンドを思わせる少し長めの髪。背中には、楽器ケースのようなものを背負っている。


少し——いや、真雄が苦手とする、いわゆるイケイケグループの見た目だ。


これまで接してきた早番帯の人たちとは、明らかに違う雰囲気に、真雄は思わず狼狽えた。それはまるで、土岐と初めて会った時のことを思い出すほどだった。


「ところで葉山くん。こんなに早いけど、早番で入るの?」


清夏に先ほどの写真を見せてもらっていた葉山に、花帆が声をかけた。花帆の言葉どおり、葉山は遅番スタッフで、店はつい先ほど開店準備を終えたばかりだ。


「いや、家で寝たら終わりそうなんで。時間まで、ここで寝てようと思って」


そう答えると、葉山はふあっと欠伸をした。


(ここで寝る!?)


「そっか!さっきまで掛け持ちだったの?」


「そうですね。一旦、風呂入りに帰って、ベースやってて。で、寝ようとしたんですけど、起きられる自信なかったので来ました」


「ベース……」


「あー、俺、バンドやってるんですよ」


真雄の呟きが聞こえたのか、葉山は背負っていた楽器ケースを見せるように、くるりと後ろを向いた。ケースに付けられた猫のキーホルダーが揺れ、小さく音を立てる。


(……ん?あれ?)


「……どこかで、見たような」


「……高瀬さん」


真雄の言葉に、少し間を置いて葉山が言った。


「今のナンパですか?」


「!!!??」


そう真顔で問われ、真雄は思わず言葉を失った。そのまま返事をする間もなく、気づけば開店時間になっていた。葉山は宣言どおり、スタッフルームで仮眠を取っていたが、予定より早く持ち場に戻ってきていた。


そして、店内でふと耳に入ってきた話題だった。


「あの、王子って何ですか?」


「え?ああ、葉山くん?」


花帆の答えに、真雄は首がもげそうなほど大きく頷く。カウンター越しに、清夏から説明を受けている葉山へと視線を向けた。


「理由までは知らないんだけど、葉山くんが“王子”で、結城くんが“姫”って呼ばれてて」


「待ってください。姫もいるんですか」


「うん。二人は同じバンドのメンバーなの。ライブの時にこのお店を宣伝したことがあったらしくて、それで二人のファンがたまに来るんだよ」


真雄の驚きを他所に、花帆は続ける。


「でも、二人ともあんまりシフトに入らないから、会えたらラッキー、みたいな存在なんだって」


再び視線を葉山へ戻すと、ちらちらと様子を窺う客の姿が目に入った。会計の際に声をかけ、ほんの一言二言、言葉を交わしていく者も少なくない。


整った顔立ちに、高い身長。加えて、バンドマンという肩書き。普段はステージに立つ人間が、こんなにも近い距離にいれば、ファンが浮き立つのも無理はない。


真雄はぼんやりと思った。


(…自分だったら間違いなく、倒れる自信しかない)


そう思った直後だった。


「高瀬さん」


低めの声に呼ばれ、真雄はびくりと肩を跳ねさせた。振り返ると、いつの間にか葉山が、すぐ背後に立っている。


「え!?あ、はい!」


「今、ナンパしていいですか?」


「――――は?」


あまりにも平然と言われて、真雄の思考は一拍遅れて停止した。そんな真雄をよそに、葉山は言葉を続ける。


「今から、デート行きましょう」


ざわめく店内の音が、やけに大きく耳に響いた。


連れてこられた先は、駅前のごく普通のスーパーだった。鼻をくすぐる惣菜の匂いと、軽快な店内BGM。見慣れた光景に、真雄の肩から力が抜ける。そのままカゴを手に取りながら、真雄は言った。


「デートって言うから、何かと思えば。普通に買い出しでいいですよ」


「友人間でやりません?ノリってやつ」


「…やらないです」


きっぱり返すと、葉山は不思議そうに首を傾げた。


「っていうか、どうして俺と買い出しなんですか?」


「最初は佐々原さんが行くって言ってたんですけど、厨房でも足りないものがあるって言われて。それに――」


一拍置いて、葉山はさらっと言う。


「女性に、重たい物持たせられないんで」


その一言があまりにも自然すぎて、真雄は内心で固まった。


(え、今どきそんな発言、さらっと出てくる人いる?…え、絶滅危惧種? この人)


「っていうか。普通に、高瀬さんと…」


数秒遅れても動かない真雄に、葉山はちらりと視線を落とす。カゴの持ち手にかかったままの手に気づいて、ほんの一瞬だけ首を傾げた。


「あー、すみません。重いですよね。俺持ちますよ」


そう言うが早いか、軽々と真雄の手からカゴを掻っ攫っていく。突然のことで固まる真雄とは対照的に、葉山はメモを見ながら辺りを見渡していた。


自分より身長はあるのに、やけに細い。そんな葉山にカゴを取られ、呆気にとられていた真雄は、歩き出そうとする葉山の手元に伸ばした。


「大丈夫!!俺!自分で持つから!」


「……」


「…ほら、買い出し。まだあるじゃん……?」


呆れたようにそう言うと、葉山は一瞬だけ足を止めた。


そもそも発端は、ドリンク側で使う備品のストックが切れていたことだった。そのことを遠久村に伝えたところ、「ついでにこれも」「あ、それも」と次々に頼まれ、気づけば二人でも持てるか怪しい量になっていたのだ。


「あー、確かにそうですね。じゃあ、こっちお願いします」


そう言って葉山が差し出したのは、元々彼が持っていた、まだ空のカゴだった。


「これから、まだ増えるんで」


その言い方があまりにも自然で、真雄は思わず心の中で呟く。


(お、王子じゃん…!!)


(重っ……)


手提げのビニール袋が今にも引きちぎれそうな重さに、真雄は思わず腕に力を込めた。袋詰めを終えた葉山は、その様子を横目で確認すると、すっと片手を差し出す。


「高瀬さん。俺、重い方持ちま――」


「大丈夫!このくらい持てるから」


葉山の言葉を遮るように、真雄は慌てて首を振った。


(……こんなの、持てない方が恥ずかしい)


「すみません。行きましょうか」


そう言って葉山は、何も言わず歩き出した。


「戻りましたー」


裏口から店内に入ると、厨房の方からやけに盛り上がった声が聞こえてきた。何事かと顔を覗かせると、どうやら会話に花が咲いているらしい。


「二人とも、おかえり。買い物ありがとう」


上城がそう言って迎えると、二人が抱えていた袋を軽々と受け取っていく。呆気にとられる真雄の横で、葉山は「何かあったんですか?」と状況を尋ねていた。


どうやら話題は、前世――新撰組だった頃の話らしい。この光景は決して珍しくない。真雄も何度か目にしたことがあり、そのたびに「へえ」と相槌を打つ側に回っていた。


「そうなんですね」


葉山はそれだけ言うと、それ以上話題に踏み込むことなく、先ほどの荷物の片付けを始めた。その様子を見て、真雄の中にひとつの考えが浮かぶ。


(あれ?葉山さん、参加しないんだ)


普段はあまり喋らない安西でさえ、会話に加わっているのを見たことがある。それを思い出して、真雄は小さく首を傾げた。そして、ひとつの結論に辿り着く。


葉山一希は――

記憶を持たない(同じ人間)ではないかと。

実は同級生コンビの2人です


土岐とき 翔人はやと

誕生日6/20 age32

173cm65kg.

イメージカラー青め瞳は青。グレーの髪色にセンター分け

遅番メインの副店長。北海道(函館)出身。北里と同じ大学の同級生。大学卒業後は商社で働いていたが、北里と同じく遠久村に誘われて脱サラして働き出した。自身が大家族の末っ子だったこともあり、個性豊かな年下スタッフに囲まれているせいで扱いが分からず、よく眉間にシワがよっている。ヘビースモーカー。

地元では有名な不良だったらしい。盛った顔をしているのに一度も浮いた話を聞いたことがないと暴露されて以降、結城にいじられている。忙しく食事をとる暇がない時は、前世からの好物であるたくあんのみしか食べないため北里に心配されている

前世▶︎土方歳三




北里きたさと 孝助こうすけ

誕生日3/20

age.31身長175cm66kgo

イメージカラー緑。瞳の色は緑。

普段はメガネをかけている。遅番キッチンスタッフ。京都出身。遠久村とは大学時代の先輩後輩関係。良心の塊みたいな人。

普段は温厚で優しいが怒ると怖い。昼間は薬剤師として働いている。遠久村に頼まれて平日2日と休日出勤していることが多い

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