二人は同室
「あの、本当にここにホテルが?」
一先ず荷物を先に置こうという話になり、宗介が予め用意していたホテルへと向かう4人。
だが、辿り着いた場所で朱莉の両親は凍りついていた。
やってきたのは舞浜にある、あのテーマパークだったからである。
「ええ、お二人が新婚旅行の際に訪れたこちらの場所が大切な思い出になっているとお聞きしまして。
当時のことを思い出しつつ遊べるようにと、園内のホテルを用意させていただきました」
「私はそこまでしなくても良いって止めたんだけどね。
お父さんとお母さんに最高の思い出を作って欲しいからって」
宗介の影に隠れながらしどろもどろに説明する朱莉。
その様子を見ていた両親は思わず吹き出し、そして宗介に右手を差し出して握手を求めた。
「私達のことでここまで心を砕いてくれたことに感謝します。
その上でお願いしたいのですが、どうぞこれからも娘のことをよろしくお願いします」
「本当に宗介さんのような方が一緒にいてくれれば安心ですから」
「ちょっ、お父さん!お母さん!!」
突然そんなお願いをし始めた両親に抗議の声をあげる朱莉。
だが、そんな事は気にせずに宗介はその手を掴んだ。
「自分で良ければお任せください」
こうしてすっかり打ち解けあった宗介と本間一家。
一旦荷物を置いてから、宗介のエスコートで園内を回っていき、お盆でやや多い園内を快適に回っていった。
そうしてホテルへと向かった四人。
宗介の想定では朱莉と両親には一緒に泊まってもらい、自分は何かあった時のためにその隣の部屋を用意していた。
だが、その話を聞いた朱莉の父と母はお互いの考えを読み取ったように頷きあう。
「あ〜折角の思い出のテーマパークのホテルだ。
父さんは母さんと燃え上がるような一夜を過ごしたいわけだな」
「そういう事だから朱莉。
貴方はこの部屋に泊まるのを遠慮しなさい」
「え、急にそんなこと言われても……しかも両親のそんな話は聞きたくないんだけど」
「あ、それじゃ朱莉は僕の部屋に泊まるかい?
隣に両親がいるなら安心できるだろうし」
「おお、是非ともそうしなさい!」
「宗介さん、娘のことお願いしますね」
「父さんたちは早く孫の顔が見たいからな。
学生結婚も良いぞ」
宗介の期待通りの言葉に即座に飛びついた両親は、やや気の早いことまで言い出す始末であった。
「ああ、もう、分かったわよ。
お父さんたちはサッサと自分の部屋に行った行った!!」
朱莉はそう言うと両親を部屋へと押し込めていき、廊下へと出てくる。
そこで待っていた宗介とパチリと目が合うと、恥ずかしさから顔を赤らめて目を逸らしてしまった。
「あ、あの、そう言うことで……よろしくお願いしますね」
「ああ、よろしくね」
こうして朱莉はやや緊張して、宗介はいつも通りの雰囲気で、両親たちの隣の部屋へと入っていったのである。




