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お上りさん

「あ、お父さん!お母さん!!」


東京駅……両親が来るのを待っていた朱莉。


その隣には当然のように宗介も立っていた。


スマホで連絡をとりながら待ち合わせ場所で待機していた二人だが、朱莉が向こうのほうから歩いてくる二人を見かけて大きく手を振った。


「朱莉、久しぶりだね」


「本当に……あら、こんなに垢抜けちゃって」


「えへへ、そんなに変わったかな?」


久しぶりの両親との再会に顔を綻ばせる朱莉。


宗介は家族水入らずの状況を静かに見守っていた。


両親達も久しぶりの一人娘との再会を喜んでいたのだが、落ち着いてくると興味は宗介の方へと移っていく。


「朱莉、もうそろそろ父さん達に彼を紹介してもらってもいいかな?」


父の言葉にハッと気がついた朱莉は慌てて宗介に頭を下げた。


「あ、ご、ごめんなさい、宗介さん。

放ったらかしにするつもりじゃなかったんですけど」


「気にしなくていいよ。

僕は朱莉とご両親が幸せそうにしているのを見られただけで満足だからね」


「この人が電話でも話してた宗介さん。

私がこっちに来てからとても良くしてもらってお世話になっている人なんだ」


「紹介に預かりました津田宗介です。

先ずは家族水入らずの場面に紛れ込んでしまったことを謝罪させてください」


そう言って頭を下げる宗介に、朱莉の両親は慌て始める。


「そんなそんな、顔をあげてください」


「そうですよ。

朱莉から宗介さんにはとてもお世話になっていると話を聞いていたもんですから、私たちも興味があって会ってみたいとお願いしていたくらいですし」


「そうですとも。

いや〜朱莉の話す通りに誠実そうな青年で安心しましたよ。

なぁ、母さん」


「ええ、ええ、本当に」


そう言って心からの笑顔を見せる両親に対して、宗介も笑顔を見せる。


「朱莉さんのご両親にそう言って貰えると本当に嬉しく思えます。

朱莉さんは僕に世話になっていると言いましたが、僕も朱莉さんには大変お世話にっていますので、今日は実の両親に会うような心持ちで楽しみにしていたんですよ」


普段からキラキラとしたオーラを出している宗介であったが、この時の彼は更に輝いていたことだろう。


朱莉は既に慣れてきていたのだが、田舎からやってきて都会のオーラに慣れていない両親が浮かれだすには十分な輝きである。


「いや〜宗介くんにそんな風に言われたら参っちゃうなぁ、母さん」


「そうですよね。

私たちも宗介さんのような息子がいれば何て思っちゃって……あ、何なら私たちの事をお父さん、お母さんって呼んでくれてもいいのよ……なんて……」


「おお、そうだとも。

朱莉とも家族のようなお付き合いだと聞いているし、それなら宗介くんも息子のようなものだよな」


「ちょっと、お父さん、お母さん!!」


完全に浮かれてそんなことを口に出してしまう両親を嗜めようとする朱莉。


だが、宗介はそんな隙を見逃すような男ではなかった。


「お二人のことを父、母と呼ぶように許可していただきありがとうございます。

東京にいられる間は精一杯ご奉仕させてもらいますね、お父さん、お母さん」


「ははは、こりゃ参ったな、ははは」


「おほほ、朱莉ってば、本当に良い人を見つけてきて」


宗介の言葉に両親は更に舞い上がっていくのであった。

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