その頃の圭太 1
予約投稿をミスっておりました。
東京で朱莉と宗介が一夜を過ごしてから出会うと言う衝撃的な邂逅をした日、圭太は田舎のコンビニでアルバイトをしていた。
最初の年の受験費や移動から滞在のお金まで両親に出してもらった圭太であったが、それは一年目だけの約束であり、再び受験をするには自分でお金を貯める必要があったからであった。
勉強に加えてアルバイトをするという環境の変化により、朱莉から送られてくるメッセージはいつもおざなりになっていた。
簡単に言うのであれば、メッセージを送るのが朱莉側からならば、途切れるのも朱莉のメッセージが最後という有様である。
圭太のそんな状況を知っている朱莉は、自分から電話をかけるのも遠慮していたのだが、圭太としては全く気にしていなかったのであった。
「おはようございます!!」
「おはよう。
圭太君は今日も元気ね」
「へへっ、先輩と一緒に働ける日は特に元気っすよ!」
朝から一緒に働いているのは、圭太よりも少し歳上の色気がある女性であった。
この田舎にしては少し派手目の髪型と化粧をしており、同級生……特に朱莉が持っていない色気を放っており、彼女と働いている時の圭太はデレデレと鼻の下を伸ばしていた。
「そう言えば常連のお客さんから聞いたんだけど、圭太君の彼女は進学のために上京したんですって?」
「え、あ、そ、そうですけど、そうじゃなくって。
あいつは別に彼女でも何でも無いですよ」
先輩に言われた事に思わずそう返してしまう圭太。
「そうなの?
何だかいつも一緒にいるおしどり夫婦みたいな関係だって聞いたけど」
「それはあいつがいつも後ろをついてきてただけですって!
付き合ってたりとか、そういう話は本当にないですから」
必要以上に関係を否定するのは先輩に良く思われたいためであり、何かをワンチャン狙っているわけでは無い。
それでも圭太の口からは朱莉との関係を否定するような話がペラペラとついて出てくるのであった。
「ふーん、そうなんだ」
「そうです。
だから、ぜんっぜん彼女とかじゃ無いんですって」
「圭太君のところがおしどり夫婦みたいに仲が良いって聞いてたから、私と旦那みたいって親近感湧いてたのに残念だなぁ」
「それは本当にざんね……えっ?旦那さんですか?」
「あれ、言ってなかったっけ?
私のところ新婚一年目で旦那と毎日ラブラブ生活なんだよ。
いつも帰りは迎えにきてくれるしね」
圭太は勉強もあるために短時間しかバイトしておらず、先輩よりも先に上がりの時間を迎えていた。
そのために旦那が迎えにきているなど、露とも知らなかったのである。
「あ、はは、そ、そうだったんですね」
「圭太君も、そんなに自分のことを好きで追いかけてくれる子なんて貴重なんだから。
早く告白してあげて、私の家みたいなラブラブ夫婦を目指さなくちゃダメだよ」
「は、はは、そっすね。
……善処します」
その日、珍しく自分からメッセージを送った圭太。
いつも通りにすぐに帰ってくるだろうとタカを括っていたのだが、珍しく返事は返ってこなかった。
朱莉から返事が返ってきたのは翌日の朝であったのだが、興を削がれた圭太はこのメッセージに返信することは無かったのであった。
圭太の近況は合間合間に挟まる形でお届けしようと考えています。
一見するとクズに見えるかもしれませんが、10代の普通の男の子ならこんなもんです。




