友達になろう
その後も、やや遠慮していた朱莉から上手く行きたい場所を聞き出しつつ、宗介はエスコートを続けていった。
綺麗な夜景の見えるレストランでのディナーも終え、あたりもすっかり暗くなってしまった所で、家まで送っていくという宗介の提案に甘える形で帰路へと着く。
「宗介さん、今日は本当に楽しかったです」
「こちらこそ。
朱莉と一緒にいて、久しぶりに心から笑えたよ」
そうして話しているうちにあっという間に朱莉の住むマンションの前へと辿り着いてしまった。
「それじゃ、今日はこれで」
「あ、待って!!」
お礼を言って中に入りそうになる朱莉の腕を取り、慌てて引き止める。
「え、あ、な、何でしょう?」
「連絡先、教えてくれないかな。
……まだ、案内し足りないから」
「もう十分過ぎるほどに案内してもらいましたよ。
東京を嫌いだって言った言葉は取り消します」
「いや、そうじゃなくて……僕が朱莉と色んな場所に行ってみたいんだ。
だから、僕のことが嫌じゃなければ付き合ってほしい」
付き合ってほしい……その言葉を聞いて朱莉の頰は紅潮し、鼓動が急に早くなっていくのを感じた。
「付き合ってほしいって……わ、私には故郷に……」
「あ、いや、そうじゃなくて……一緒に遊びに行ってほしいって事なんだよ。
朱莉は友達がいないって言ってたけど、僕も友達がいないから。
だから、一緒に東京を観光する友達になってほしいんだよ」
「あ、そ、そうですよね。
……私なんかで良ければ是非」
朱莉は紅くなった顔を誤魔化すように慌ててスマホを取り出す。
こうしてお互いの連絡先を交換した後、改めてマンションの中に入った朱莉。
エレベーターで上に上がってから下を確認すると、そこにはまだ宗介が立っており、朱莉に気付いて手を振ってくれていた。
その姿に手を振りかえしつつ、早速スマホを取り出して今日のお礼のメッセージを打つのであった。
その後はお互いにメッセージや今日のデートの写真のやり取り行われ、朱莉が眠りにつくまで続けられた。
この1日のメッセージのやり取りだけで、一ヶ月間の圭太とのやり取りを超えていたのであった。




