プロローグ 鳴らないスマホ
新作の恋愛小説です。
こちらの作品は初日は導入のために一挙3話更新。
明日以降は一日1話更新の全22話を予定しております。
既にエピローグまで書いて予約投稿しておりますので、更新が止まると言った心配はありません。
短い期間ですが、最後までお楽しみ頂けると幸いです。
「まぁ、ユウトが電撃結婚ですって!」
とある田舎町……ニュースを見ていた母親が突然声を上げる。
その声に誘導されるようにテレビに視線を向けると、そこには活動を休止していたアイドルが、復帰と共に一般人の女性と結婚したと言う報道が流れていた。
「ユウトって確かあんたとそんなに変わらない年齢だったでしょ。
あんたも早く結婚して孫の顔を見せないよ。
あ、ほら!
進学の為に上京した朱莉ちゃん。
今度のお正月には帰ってくるでしょ?
お祭りにでも誘いなさいな」
「うるせ〜」
急に矛先をこちらに向けた母親から逃れるように、二階への自室へと向かう。
「そんな事、言われなくったってそのつもりさ。
アイツが帰ってきたら……ちゃんと好きって言って、それで……」
部屋の中に入って呟く。
握ったスマホの画面には、アイツが上京する前に撮ったツーショットの待ち受けを見ながら操作して朱莉の連絡先を開く。
三ヶ月前に送るのをやめたメール。
それよりも以前から既読の付かない、俺しか送っていないメールが溜まっていた。
「何やってんだよ……朱莉」
語りかけたところで何も応えないスマホをベッドに投げ捨て、俺は夜空を見上げるのであった。




